音山繋太

「もっと、シュートを打つべき時に打たないといけなかったです」

愛知の強豪校、中部大学第一は3年ぶりとなるウインターカップ出場を果たすと、初戦でいきなり優勝候補の東山と激突。1回戦屈指の好カードは序盤から競り合いとなり、第3クォーター終了時点で3点差と互角の展開だった。しかし、中部第一は第4クォーターに入ると、東山の佐藤凪、中村颯斗と傑出した個の力を止めることができず、11-32と大きく失速し68-86で敗れた。

中部第一の常田健コーチは、敗因の1つとして「ウチはエースがいないですが、東山さんは絶対的なエースがいます」と振り返る。また、3年ぶりの出場となり、今の選手たちにとって初めての東京体育館での試合になったことの難しさもあったと続けた。「選手たちにとって初めての舞台で、彼らの持っている力を出せて負けているわけではないので、すごくもったいなかったです。この雰囲気に飲まれて、舞い上がって一生懸命になりすぎたら嫌だなという思いが、40分間ずっと消えなかったです」

主力の半数が2年生以下の今のチームにとって、今回の経験は糧にするしかない。その上で、2018年の準優勝、2022年のベスト4とかつてのように上位進出を果たすには、苦しい時に個で打開できるエースの台頭が待たれる。

2年生の音山繋太は18分31秒のプレータイムで8得点4リバウンドを記録。197cmのサイズと外角のシュート力を備えた音山は、『第33回日・韓・中ジュニア交流競技会』のメンバーに選出されたように、非凡な才能を評価されている大型ウイングだ。1年生の時からローテーション入りしているが、この試合では持ち味の得点力を発揮しきれずに終わった。

音山は「もっと、シュートを打つべき時に打たないといけなかったです。自分たちのミスで開いてしまった点差でした。もっと早く良い判断をして、良いシュートを打って気持ちよく自分たちの流れに乗ってプレーしたかったです」と試合を振り返る。

そして自身のプレーについても次のように反省する。「『高さのミスマッチを突いて』と言われていましたが、ガードとのコミュニケーションがうまく取れていませんでした。自分がノーマークになってカッティングする時、パスのタイミングがちょっとズレていたり、しっかりと噛み合わなかったです」

常田健

「周りの信頼を十分に勝ち取ることができていなかった」

中部第一に求められるエース像について、常田コーチはこう語る。「エースはバスケット以外の部分もちゃんとしていて、人間としても成熟している選手がなるものです。ウチの下級生はバスケットが好きですけど、いろいろなところでまだまだ未熟なところがあります。僕が『この選手になってほしい』というより、そういうバスケット以外の部分もきちんとしている選手、仲間がこの選手にボールを託そうとなって、エースが決まってくると思います」

この信頼こそ、今の自分に欠けている部分と音山は語った。「試合中にコーチから、『点数が足りなくなったらお前を出す』と言われていました。でも、普段の自分のプレーから、周りの信頼を十分に勝ち取ることができていなかったので、ボールがなかなか回ってこなかったところもあったと思います」

そして高校ラストイヤーに向け、「一番の持ち味は3ポイントシュートで、良い判断をするオフェンスです。そこを損なわずに、インターハイが終わってからの期間で練習したディフェンスと、来年はどちらもできるオールラウンダーになってチームを引っ張っていきたいです」と意気込む。

197cmの音山に加え、191cmでシューティングガードをこなす馬越光希など、新シーズンの中部第一は引き続きサイズとスピードを備えた有望株が揃っている。常田コーチは、彼らの才能を評価しているからこそ、次のように続ける。「彼らには本物になってもらいたいです。音山にしても馬越にしてもみんなシュート、ドリブル、パスが好きだし、アシストも覚えています。でも本物はディフェンスをしっかりやって、どちらに転ぶかわからないルーズボールを取りきれる。彼らはその部分でまだまだというか、甘いところがあります。彼らには、そこをしっかりやってくれたら試合でずっと使うと約束しています」

最後、指揮官は「また、強い中部第一を作って、ウインターカップに戻ってきたいです」と締めくくった。サイズとスキルに長けた下級生がハードワークを身につけることができれば、再び強豪の地位へと必ず戻ってくるだろう。敗れはしたが、伸び代の多さを感じさせる中部第一にとって3年ぶりの冬の祭典だった。