
チームの悪い流れを断ち切った3ポイントシュート
今年の『全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)』の男子決勝戦で白鷗大は早稲田大を101-83で撃破し、2年ぶり3度目の日本一に輝いた。
5アウトから3ポイントシュートをどんどん狙う早稲田大は、今年の大学バスケ界で頭一つ抜けたオフェンス力を誇った。だからこそ、白鷗大が勝つためにはテンポを落としてロースコアの展開に持ち込む戦術が用いられるかと思われたが、網野友雄コーチは「やっぱり点を取り合わないと、どうにもならないです」と、自分たちも積極的にトランジションを仕掛け、ポゼッションの数で負けない殴り合いを選択した。この判断が正しかったことは、結果が何よりの証明となった。
序盤から流れが行ったり来たりする展開となったが、第4クォーターを27-11と圧倒したことが、白鷗大の勝因となった。最後に大きな差が生まれた理由は、選手層の違いだ。早稲田大は4人が30分以上のプレータイムと、少ない人数でローテーションを回していたが、白鷗大で30分以上プレーをしたのは1人のみ。多くの選手が10分以上コートに立った。
アップテンポで体力の消耗が激しい試合において、この差はボディブローのように効いていき最後の勝負どころでガス欠に陥っていた早稲田大のメンバーに対し、白鷗大の中心メンバーはフレッシュな状態で臨めていた。この展開に持ち込む立役者となった白鷗大のベンチメンバーの奮闘は、明暗をわける大きなカギとなった。
セカンドユニットの中でも際立つ活躍を見せたのが2年生シューターの小川瑛次郎だ。前半を10点リードで折り返した白鷗大だが、第3クォーターに入ると早稲田大の3ポイントシュート攻勢をくらい逆転されてしまう。しかし、この悪い流れを食い止めたのは小川の3ポイントシュートだった。さらに小川は第4クォーターの出だしでも連続で3ポイントシュートを成功させ、チームに勢いを与えた。

「シュートに対する自信をなくしたら意味がない」
決勝戦で小川は17分21秒出場で3ポイントシュート4本成功の14得点をマーク。実力拮抗の短期決戦において大事な、いつも以上のハイパフォーマンスで勝利をもたらすXファクターとなった。
小川は「自分はこれまでずっと足を引っ張っていました。(大学連盟主催の大会として)4年生と戦える最後の試合くらいは、シュートを入れて勝利に貢献したいという気持ちがプレーに出ました」と優勝に貢献できた喜びを語る。そしてここ一番で発揮した持ち味の3ポイントシュートが爆発したことについて「1本目が入った時、これからも入るなと感じていました。コーチ陣が自分の打てるセットを作ってくれて、プレーがしやすかったです」と続けた。
小川は2022年に『U17ワールドカップ』、2023年に『U19ワールドカップ』に日本代表として出場するなどエリート街道を歩んできた。しかし、大きな期待を受けて入学した1年生の昨年は出場機会が少なく、インカレ連覇を逃す敗戦となったベスト4の東海大戦など、ここ一番の試合でコートに立つことができない悔しさを味わった。だが、2年生となった今シーズンはローテーション入りを果たすと出番を増やし、最後に大きな仕事を成し遂げた。
「去年からここまでなかなか試合にも出られなかったりと、辛い時間を過ごしてきました。網野さんと何回も話して、自分に足りないモノを教えてもらいました。それを少しずつ減らしていけるように、この1年間はすごく頑張りました」
このように今シーズンを振り返った小川は、自身の代名詞であるシュートへの譲れない思いを語る。「シュートに費やしている時間は誰よりも多いと自信を持っています。このシュートに対する自信をなくしたら意味がないと思っていたので、空いていたらすべてシュートを打つ気持ちで臨んでいました。決勝という素晴らしい舞台で活躍できたのはすごく良かったです」
高校時代から定評のあったシュートに加え、小川は大学入学から着実にディフェンス力を高めている。来シーズン、白鷗大が連覇を果たすには上級生となる小川が、中心選手としてチームを引っ張ることも大事になってくる。だが、その役割を担える能力を彼はすでに備えている。