田口成浩

先週末、『B.LEAGUE HOPE』とJBPA(日本バスケットボール選手会)は、岩手県の陸前高田市で復興支援活動を行った。被災地を見学した後、選手会のチャリティイベントで子供たちを集めてクリニックを実施。天性の『お祭り男』である田口成浩はここでも大人気で、彼の周囲には自然と子供たちの輪ができた。お隣の秋田県出身の田口にとって、東北の被害と復興は他人事ではない。精力的に動き回った一日を終えて、田口に話を聞いた。

「自分がチームを引っ張れるようにやるだけです」

──被災地を回って震災遺構を見学しました。どんな感想を持ちましたか?

事前にイメージしてから来たんですけど、校舎の「ここまで津波が来た」というラインのような想像を絶する状況を見て、「自分がここにいたら」とか「家族がここにいたら」と考えると言葉がなかったです。震災で家族を亡くした方もたくさんいます。いつ何があるか分からないので、今こうして生きていること、バスケットができているのは当たり前ではなくて、感謝の気持ちを持ってこれからやらなきゃいけないと感じました。

今日は子供たちを相手にクリニックをやらせてもらって、率直に元気をもらった、活力をもらったと感じています。子供たちはかわいいし面白いし、いろんなところでツッコミどころが満載でしたけど、それで僕たちが逆に元気をもらった感じです。

自分たちが被災地のために何ができるかと考えると、やっぱりバスケットの楽しさを教えるだけなので、それで子供たちが笑っている姿を見るとホッとします。悲惨な現場を見た後だけに感じるところも大きいです。まだまだ自分たちにできることを探していきたいと思います。

──千葉ジェッツの話も聞かせてください。今オフの大きな話題として石井講祐選手の移籍があります。同じポジションの田口選手の責任は増すと思います。ご自身ではどう感じていますか?

個人的には結構ビックリしましたけど、チームには他の選手もいるので、石井さんがいなくなったから自分にチャンスが回って来るという受け止め方はしていないです。なのでオフの気持ちとしてはいつもと変わらなくて、前のシーズンに経験したこと、学んだこと、足りなかったことを自分のモノにして、しっかり充電して。あとは大野(篤史ヘッドコーチ)さんの信頼を勝ち取って、スタートを張れるように、自分がチームを引っ張れるようにやるだけです。

このシーズンもそうでしたが、自分には自分の役割があります。石井さんみたいなプレーをしようとか、今までと違うことをやろうと思うのではなく、自分の役割が何なのかを大野さんとも話し合いながら、それを表現するための準備をしていきます。

──シーズンが進むにつれて田口選手は千葉にフィットしてパフォーマンスを上げていったので『ここは俺だろ!』という気持ちの高ぶりがあるのかと思っていました。

ないですね。もちろん、プレッシャーはあります。このシーズンは石井さんが最初に出て、ベンチから見ていて感じた「自分だったらこうする」というプレーをやっていました。「自分がダメでも相手がやってくれる」と考えて思いっきりプレーする、そういう信頼関係はこの1年間で互いにライバルとして高め合いながらやってきたつもりです。石井さんに頼れなくなれば我慢も必要になります。石井さんがいないのは寂しいですが、だからこそ自分により自信を持って、チームの誰かに頼るんじゃなく自分が頼られる存在にならなきゃいけないと思っています。

千葉に移籍して来たからには常にチャレンジです。この1年は同じポジションに石井さんがいて、石井さんを超えるには何をしなければいけないのかをずっと考えてきたし、その中でチームで高め合ってきました。そのスタンスは変わらないですけれども、どこにフォーカスするかは少しずつ変わってくると思います。もちろん、この1年の経験や気持ちありきで、新たに違うところにステップアップしていきたいです。とにかく試合に出るには大野さんの信頼を勝ち取るしかないです。そのために何が必要かを考えて、やっていくつもりです。

田口成浩