辻直人

「最初の2本が入って積極的に打とうと決めた」

まさに『お祭り男』だった。群馬クレインサンダーズの辻直人は、1112日に行われた茨城ロボッツ戦で3ポイントシュート6本を成功させて18得点と活躍し、94-70の大勝を牽引した。

序盤から圧巻の3ポイントシュートショー。最初のポゼッションでコーナーステイからパスを受けて先制点を沈めると、第1クォーター残り641秒にはベースラインを横断して巧みにワイドオープンを作り、2本目を成功させた。辻は「コンディションが上がってきたのが1番です」と自身の好調なパフォーマンスの理由を明かすが、コンディションだけではなくメンタルも上向いている。次のポゼッションでは、ピックを使ってのプルアップスリーが成功。1本目、2本目以上に迷いが一切ない、思い切りの良いシュートに会場は沸いた。

「最近はスタメンで使ってもらっているので、序盤から流れを持ってこようと思っていて。最初の2本が入ったのでこの試合は積極的に打とうと決めました」という言葉の通り、辻の連続3ポイントシュートで勢いに乗った群馬は点差を広げて勝利を収めた。

群馬は試合を通じて、辻の6本を筆頭にクラブ史上最多となる18本の3ポイントシュートを決めた。「プレータイムが分散しているので、出ている時間で自分は何ができるか。調子が良かったら打ち続けようと思っています。僕が調子が悪くても決められる選手が揃っているので」

チームは94得点したが、20得点以上を記録した選手はおらず、4人が2桁とバランス良いオフェンスが展開できていた。「得点が良い形で分散して、(3ポイントシュートを)2桁打っている選手もいないですし、ボールが動いてタフショットがなかったので、効率良くシュートも打てました。アシストも多く、理想的なオフェンスでした」

辻直人

「ディフェンスが最近楽しくなってきた」

辻は、オフにケガをして調整が全体的に遅れていた。シーズン序盤は試合によってシュートタッチが安定しなかったが、直近4試合は23本中14本の3ポイントシュートを成功させて好調だ。そして前述したコンディションの良さはディフェンスにも表れている。

辻は「ディフェンスの動きを見てもらったら、(コンディションの良さが)分かると思います」と言った。その真意を聞くと次のように答えた。「ディフェンスをしないとプレータイムをもらえないというのが1番ですが、ディフェンスが最近楽しくなってきました。ディフェンスを強化したいと思って、オフにトレーニングを始めましたが、シーズン序盤は身体が動かなくて不安なままやっていました」

36歳のベテランではあるが、まだまだディフェンスに伸び代を感じている。「コンディションが上がってきて、最近はハンドラーにもつきたいと思いますし、馬場(長崎ヴェルカの馬場雄大)選手につけるぐらいには持っていきたいな。ビックリさせたろうかなと。バチバチに止めるイメージはできています」

ハンドラーに対して足を使ったディフェンスで激しくプレッシャーを仕掛ける場面もあれば、ヘルプローテーションで相手のオフェンスの芽を積む場面も多く見られた。個人のディフェンス強度もチームディフェンスも高い水準でこなせている。その背景には勉強熱心な姿勢があってのことだった。「コー・フリッピンにピックの守り方を聞いたり、上手い選手の足の使い方を見るようになりました」

辻直人

記録達成セレモニーを実施「いくつになってもサプライズはうれしい」

辻は115日のアルティーリ千葉戦で、3ポイントシュートキャリア通算1500本を達成した。A千葉戦も含めアウェーゲームが続いていたため、記録達成後、初のホーム戦であるこの日にセレモニーが開催された。

セレモニーが行われることを辻は事前に知らされていなかったと言う。「知らなかったです。 粋なことをしてくれました。いくつになってもサプライズはうれしいです。涙は出なかったですけどね。 なんとか絞り出そうと思ったんですけど(笑)」

感動的なセレモニーではなく、辻らしいアットホームな砕けた雰囲気だった。キャリアをスタートさせた川崎ブレイブサンダースで長くチームメートだった藤井祐眞からは花束が、洛南高でウインターカップ制覇を成し遂げた後輩の谷口大智からは記録を達成した試合球が贈られた。

試合球が贈られたことに関して、辻は「初めてですね。まあまあ使い込んだボールでしたけど(笑)。本当に使っていたやつをもらってきたみたいなので、アルティーリ千葉さんにも感謝したいです」とうれしそうに話した。

今週末のファイティングイーグルス名古屋とのアウェー戦が終わると、リーグは中断期間に入る。群馬は現在6連勝と成績を上げているが、今週末の試合はシーズン全体を見据えた時に重要な試合だと辻は意気込む。

「この勢いで行きたいですし、昨シーズンは(FE名古屋に)アウェーで1回負けているので。また違ったチームになっていますが、なんとしても連勝して、良い形でバイウィークを迎えたいです」