井上宗一郎

エースのジャレット・カルバー負担軽減のキーマンに

1110日、仙台89ERSはアウェーでのシーホース三河戦ゲーム2を戦い、最後までもつれる激闘に74-80と競り負けた。ゲーム1に引き続きの敗戦となったが、72-101と大敗したゲーム1とはスコア面でも内容面でも見違える戦いぶりだったのは大きな収穫だった。ダン・タシュニーヘッドコーチも、「本当に良い戦いでした。今、私たちのチームは勝つための術を学んでいる最中で、そこの差が出たと思います」と試合を総括した後、このように続けた。

「ただ、選手たちがハードにプレーしてくれた姿に感銘を受けました。この試合でチームは間違いなく、1つ大きなステップを踏めたと確信しています。先週の水曜日からアルバルク東京さん、今節は三河さんとの連戦というアウェーでのタフなスケジュールでしたが、チームは戦いきってくれました」

この敗戦で仙台は78敗となったが、昨シーズンの1149敗から大きなステップアップを果たしている。この躍進の原動力は新戦力のジャレット・カルバーで、ここまで平均23.0得点、6.4リバウンド、3.2アシストを記録している。しかしこれから相手の対策が進んでいく中で、引き続きカルバーが質の高いプレーを継続していくカギとなるのが彼の負担をいかに減らせるか。その意味でも、198cmの彼をナチュラルポジションであるスモールフォワードで起用する時間を増やしていけるかは注目ポイントだ。

帰化/アジア枠をガードのセルジオ・エル ダーウィッチに使っている仙台にとって、カルバーをスモールフォワードで起用するためには日本人ビッグマンの台頭が欠かせない。そして今、その役割を担っているのが新加入の井上宗一郎となる。

井上宗一郎

「自分たちがどう変わっていくかで強豪にも勝てる」

開幕直後は出場機会も少なかった井上だが、近々の4試合では連続して10分以上の出場時間を獲得し、この試合では1242秒のプレーで6得点4リバウンド1アシストを記録。出場時間の得失点でチームトップの5だったことは、彼が繋ぎ役としての役割をしっかり遂行したことを示している。

「今日はやることをやれたという感じで、チームの底力を出せました。昨日はやるべきことをまったくできていなかったのでああいう負け方になった。昨日はあってはならない試合でした。今日はやるべきことをできましたが、詰めの甘さが出てしまいました」

このように試合を振り返る井上は、自身のプレーについても厳しい評価を下す。「最後にベンチに下がる前、自分がプレッシャーをかけすぎたことでディフェンスを崩され、結果として相手の3ポイントシュート成功に繋がってしまいました。自分が決められた3ポイントシュートを2本外したことと合わせて、マイナス9点分と考えたら敗因に直結したと責任を感じています。1つひとつのプレーが勝敗に繋がってくるので、そこは反省です」

そして徐々に存在感を高めている自身の現状について、「僕が出ることでJC(カルバー)が3番でプレーして、良い流れが作れる。そこで自分がどれだけ足を引っ張らずに何分プレーできるか、というのが今の段階だと思います。責任をより一層感じていますし、やりがいがあります」と語る。

まだシーズン序盤の段階とはいえ、井上はB1でローテーション入りし、個人としても大きな飛躍のチャンスを迎えている。これは自身をうまく生かしてくれる仙台にフィットしていることに加え、昨シーズンまで在籍した越谷アルファーズでの経験も大きいと井上は考えている。「去年は試合に出られない中でも、竜三さん(安齋竜三ヘッドコーチ)からチャンピンチームになるために必要なことをたくさん教えてもらいました。その経験に加え、今も(越谷で同僚だった)町田コーチ(町田洋介アシスタントコーチ)に教えてもらったりして、生かしているところです」

そして今は、「自分のやれることの精度を上げていく。出番が増えたらエラーの数が多くなるのではなく、どれだけ減らしていけるのか。それがプレータイムを伸ばしていくことに繋がると思います」とさらなる飛躍を誓っている。

井上宗一郎

日本代表候補にも再び選出「選ばれたからには結果を残す」

ここまでの奮闘ぶりもあり、井上は11月末に行われる『FIBAワールドカップ2027アジア地区予選 Window1』に向けた強化合宿の参加メンバーに選出された。今夏に行われたアジアカップの出場を逃した井上にとって、大事な巻き返しの機会となる。「『代表に戻ってやる』という思いは持っていました。システムなど変わったところもあると(アジアカップに出場した)マイキー(川真田紘也)から聞いていて、そこは楽しみでもあります。選ばれたからには結果を残そうと思います」

ただ、今の彼は代表活動前のリーグ戦3試合に集中している。そして、チームの進化に確かな手応えを語る。「昨日は論外でしたが、自分たちで詰められることをしっかり詰められれば上位相手にも勝てるところまで来ている。『実力的に仕方がない』と思う負けは今のところないです。自分たちが変われれば強豪にも勝てると思っています」

ここまで仙台は三河、千葉ジェッツ、レバンガ北海道、アルバルク東京といった上位陣には勝てていない。この1つの壁を越えることができれば、チャンピオンシップ争いに食い込めるようになる。そのためには、井上のさらなる成長が大事なポイントだ。