
10月26日、ウインターカップ大阪府予選を勝ち抜いたのは箕面学園だった。ここ数年で着実にチーム力を伸ばしながらも、あと一歩のところで全国大会出場を逃していただけに、本命と見られた阪南大学高校を撃破してのウインターカップ初出場は喜びもひとしお。おおきにアリーナ舞洲の歓喜に沸くベンチには、今野翔太の姿があった。箕面学園を率いるのは、大阪エヴェッサで長く活躍し、引退後の今はGMとしてチーム編成を担う今野だ。『ホームアリーナ』で大きな勝利を手にした今野に、高校のバスケ部を率いることになった経緯と、目指すべきバスケを話してもらった。
「バスケをどうプレーすべきかを教えてきたつもり」
──「大阪で一番」を目指すのは良いですが、ライバルチームが本気度で劣ったわけではないと思います。今野コーチならではのアプローチはありましたか?
いろんな視点から見る必要があるので、対戦相手の試合は50回以上は見返しました。私としても「今野が教えても何も変わらんやん」とは言われたくない気持ちもありましたし、それ以上に選手たちが本気で勝つために取り組んでいるのを見ていて、「これで優勝できたら、選手たちはどれだけ喜ぶだろう」と想像するだけで、もうたまらない(笑)。現役時代も負けず嫌いでしたけど、今回のウインターカップ予選も同じ覚悟で臨みました。
──箕面学園の特長は留学生の使い方だと思います。留学生の能力に頼るのではなく、軸としながらもチームで戦うバスケができていました。
そうですね。オフェンスにおいては留学生を起点に日本人選手も得点できるようなバスケを目指しました。私になって変わったのはアップテンポなバスケで、それまでは速攻が出なければペースを落としてバスケットをしていましたが、アーリーオフェンスを導入して、速攻が無理でも2つ目の速攻を狙うようにしてペースを上げながら、人とボールが動き、どこからでも点が狙えるようなバスケを目指しました。
また、留学生の能力を上手く使うのはもちろんですが、どのチームも留学生対策はしてくるので、どういう守り方をするのか映像で観察して準備してきました。
──そういったバスケの方向性は、今野コーチがもともと持っていたものですか?
アップテンポなバスケは個人的にも好きですね。留学生の力に依存せず上手く生かしながらもチームとしていかに戦うか、ビッグマンがいるので、そのバスケはBリーグと近しいと思っています。そこでBリーグでやってきた経験が生かせたことは私の強みになりました。日本人だけのチームであれば、正直もっと難しかったと思うのですが、今大会は上手くハマってくれました。
ただ、前提として僕たちはオフェンスマインドではなく「ディフェンス、リバウンド、ルーズボールからの速攻を出すチーム」ということを何度も伝えています。
──大阪府予選決勝で対戦した阪南大学は強力な留学生を擁するだけでなく、チームとしてもかなりサイズがあり、全国での経験も豊富です。箕面学園は言わばダークホースでした。選手たちの頑張りはもちろんとして、今野コーチが「ここで勝利に貢献できた」という部分はどこでしょうか。
インターハイ予選は相手にこちらのバスケを分析されて、その対応ができずに負けたと感じています。私はヘッドコーチではありませんでしたが、チームにかかわっていた以上「自分ならこうした」という思いは少なからずありました。だから今回は自分がスカウティングして、自分の教えたバスケで勝負しました。自主性を主体にしたのは先ほど話した通りですが、「バスケットをどうプレーすべきか」を教えてきたつもりです。
決勝に向けて「こういうやり方でオフェンスを展開したら、相手はこう対応してくるので、ここをアタックできる」みたいなプレーをたくさん用意しました。それが見事にハマり、選手たちが思いきりの良いグッドショットをたくさん決めてくれたので、「ちゃんとスカウティング通り。間違っていなかったぞ、俺!」という気持ちはありましたね(笑)。すべては選手の頑張りがあってこそです。

「こんな気分は長年味わっていないというほど最高」
──この10月26日、大阪府予選決勝の会場はおおきにアリーナ舞洲で、箕面学園が勝った数時間後には同じコートでエヴェッサが広島ドラゴンフライズに勝ちましたね。
箕面学園の試合が終わった後、「これでエヴェッサが勝ったら最高の一日になる」と思っていたら、ホンマにスカッと勝ってくれました。こんな気分は長年味わっていないというほど最高でした(笑)。
──本格的にコーチになって2カ月で「大阪で一番」になりました。次はウインターカップですが、まだ2カ月あります。ここまでチームが大きく成長した2カ月と同じ期間がまだ残っていると思えば、やれることは多いですよね。
そうですね。予選に臨む時点でも「2カ月じゃ教え足りないな」と思うところがたくさんありました。予選を勝てたことで、あと2カ月上手くなれます。私としても、選手たちの知らないバスケをたくさん教えてあげられるのが楽しみです。この2カ月と同じように選手が吸収してくれたら、チームは今よりずっと強くなれます。
──最後に、ウインターカップに向けた抱負を聞かせてください。
ウチは大阪のベスト8に残った中で平均身長が一番低いのですが、それでもしっかりファイトして勝つチームです。今まで大事にしてきた部分は大事にしながら、バスケを今まで以上に学んでもらって、ウインターカップの大舞台で思いきり表現してほしいです。