開幕戦の先発の内4人は、前チームから一緒に加入

かつてNCAAでは転校する場合、基本的に1年間プレーできないルールとなっていた。しかし、今の選手たちは『トランスファーポータル』というシステムに登録することで、毎年チームを変えることができる。これによりコーチが他のチームに移籍した場合、選手たちも後を追うことが可能だ。このスタイルで、結果を残しステップアップを続けたのが、今シーズンからアイオワ大男子チームの新指揮官に就任したベン・マッカラムだ。

44歳のマッカラムは、2023-24シーズンまで15年間に渡って母校であるNCAA2部のノースウエスト・ミズーリ州立大のヘッドコーチを務めた。ここで4度の全米2部トーナメントに優勝。通算395勝91敗と圧倒的な成績を残した実績を買われ、昨シーズンはNCAA1部のドレイク大の指揮官に抜てきされた。

そしてドレイク大では1年目でいきなり大学記録となるシーズン31勝(4敗)を挙げ、カンファレンス優勝に導く。NCAAトーナメントでも初戦に強豪ミズーリ大を破るアップセットで2回戦進出と、旋風を巻き起こした。この功績により、アイオワ州出身のマッカラムにとって夢だった地元の名門校の指揮官の座を勝ち取った。

ドレイク大の所属するミズーリバレーカンファレンスから、NCAAトーナメントに出場するのは毎年1校のみでNCAA1部でもマイナーカンファレンスに属する。一方、アイオワ大の所属するBIG TENカンファレンスは全米屈指のパワーカンファレンスで、アイオワ大も全米有数の強豪校としての評価を確立している。

2部からの1部挑戦でいきなりマッカラムが結果を残せた最大の理由は、文字通り2部時代と同じ戦いができたから。昨シーズンのドレイク大は、平均19.2得点を挙げたベネット・スターツを筆頭にの先発メンバーの内4人がマッカラムと一緒にノースウエスト・ミズーリ州立大から来た選手たちだった。

さらにアイオワ大のシーズン開幕戦の起用を見ると先発5人の内4人は、ドレイク大からの転校組だった。そして101-69で快勝した開幕戦でチーム最多の19得点を挙げたのはスターツ。彼はマッカラムと一緒に2年続けてチームを変え、NCAA2部、1部のマイナーカンファレンス校、1部の名門校と大きくステージの違う3つのチームでエースを務める異例のキャリアを歩もうとしている。

トランスファーポータルによってNCAAではプロ以上に移籍が活発となり、毎シーズン中心メンバーが変わる大学は珍しくない。そんな中、個々のタレント力ではなく、何よりもチームとしての連携と戦術の浸透度を重視するマッカラムの挑戦が、全米屈指の強豪カンファレンスであるBIG TENでも通用するのか。過去2シーズン連続でNCAAトーナメントを逃しているアイオワ大を、トーナメント進出に導けるかは今年のNCAAにおける大きな注目点だ。