
「このリーグでやるべきことがたくさん残っている」
現地11月3日、レイカーズは午前3時にポートランドに到着し、その日の夜のトレイルブレイザーズ戦に臨んだ。レブロン・ジェームズは坐骨神経痛で開幕から戦線離脱、ルカ・ドンチッチは太ももに打撲、オースティン・リーブスは右の鼠径部を痛めて欠場。2連戦の2試合目とあって、彼らが無理をする必要はなかった。
しかし、チームで上から順に3人を欠いてもなお、レイカーズには力があった。前半はビハインドを背負ったものの、後半に入ると逆転し、そのままリードを保って123-115の完勝を収めた。指揮官JJ・レディックは「多くの選手を欠く中でのこの戦いぶりを誇らしく思う。コートに立つ時には勝利を信じなければならない。ウチの選手たちはその姿勢を持っていた」とチームを称えた。
ディアンドレ・エイトンは腰の張りを訴えて前日のヒート戦を欠場していた分まで闘志溢れるプレーを見せ、29得点10リバウンドを記録。八村塁は28得点4リバウンドと気を吐き、エーストリオ不在の状況でリーダーシップも発揮する頼もしい姿を見せた。
さらに決め手となったのは、ベンチから27分の出場で25得点を記録したニック・スミスJr.の活躍だった。スミスJr.は2023年のNBAドラフトでホーネッツが1巡目27位指名した選手。ホーネッツの絶対的エースであるラメロ・ボールがケガで戦線離脱を繰り返す中、その穴を埋める働きを見せた。2年目の昨シーズンは60試合に出場し、27試合では先発も務めて9.9得点、2.4アシストと結果を残している。しかし、ディフェンスよりもオフェンスを重視し、チームプレーより自分の得点を意識する傾向があり、好不調の波が大きすぎることで、ホーネッツはトレーニングキャンプ開始直前にスミスJr.を解雇した。
すぐさまレイカーズに2ウェイ契約で迎え入れられた彼は、チームへの合流が遅かったこともありここまで2試合にしか出場していなかった。だが、このブレイザーズ戦では誰かがオフェンスの起爆剤になる必要があった。エイトンも八村も結果を残したが、本来はディフェンスを主とする選手であり、レディックはベンチから出たスミスJr.の動きが良いと判断すれば、彼のプレー時間をどんどん伸ばしていった。
タフなシチュエーションでも自分のタイミングで打てると判断すれば躊躇なくシュートを打っていくスミスJr.は、シュートタッチが決まらなければオフェンスのリズムを悪くしてしまう。だが、この日はフィールドゴール15本中10本成功とシュートタッチが絶好調。ブレイザーズの守備陣は突然オフェンスのファーストオプションになるスミスJr.に対応できず、彼を完全に乗せてしまった。
「素晴らしい仲間の下で毎日学べる、この環境にいられてうれしい」とスミスJr.は語った。そして自身の活躍について「相手がどう守ってくるかは映像で確認していた。ブレイザーズはずっとドロップで守るから、ステップバックでの3ポイントシュートや、ペネトレイトから他の選手のチャンスを作るプレーが必要で、それをコートで実行するだけだった」と説明した。
「チームに合流したのがメディアデーで、記者が200人ぐらいいて圧倒された。僕はみんなのことを知っていたけど、みんなは僕が誰なのかよく分かっていなかったと思う。それでも僕を受け入れてくれた。今日もコーチ陣から『自分らしくプレーしろ』と励まされ、塁には『その調子で行け』と言われたよ。長い間、こういうサポートは得られなかった」
興奮しすぎたのか、緊張のあまりなのか、試合中に彼は気分が悪くなり、ハーフタイムにはコートから離れて吐いたという。「でも吐いたら大丈夫だった。僕にとっては願ってもないチャンスだったから、逃すわけにはいかなかった」と彼は笑った。
レブロン、ドンチッチ、リーブスが戻って来れば、スミスJr.の出番は限られる。出場機会があるとしても、ボールを預けられて自分がファーストオプションになることはないだろう。だが単発に終わるにしても、この日の活躍と勝利は、スミスJr.が失われた自信を取り戻し、リーグに向けて彼という選手の存在をアピールできた最高の機会になった。
「これから大事なシュートを外したり、つまらないターンオーバーをするだろう。でも、すべては学びだ。僕はまだ若い。このリーグでやるべきことがたくさん残っている」と言い、スミスJr.は自身のキャリアにとって記念すべき一日を終えた。