喜多川修平

「ディフェンス強度を上げないと流れを持ってこられない」

40歳のベテランは指揮官の期待に応えて、クラッチタイムもコートに立った。試合の勝ち筋を見極める目は、ベテランになりさらに磨きがかかっている。喜多川修平は2017-18シーズンから6シーズン宇都宮ブレックスでプレーし、2023-24シーズンに越谷アルファーズに移籍。宇都宮時代から共闘した安齋竜三ヘッドコーチから請われての移籍だった。

115日に行われた川崎ブレイブサンダース戦で、喜多川が流れを作ったのは第2クォーターのオフィシャルタイムアウト後。ドライブでペイントに侵入すると巧みなフェイクでファウルをもらい、バスケット・カウントを決めた。さらに続けて3ポイントシュートを沈めてチームに勢いをもたらした。

喜多川はこのプレーを振り返る。「前回の試合で、コーチから課題を言ってもらっていたので、そこを意識してやりました。空いたら積極的にシュートを狙うこと、ペイントにアタックすることは心掛けていました」

3ポイントシュートを決めた次のポゼッションでは、トップの位置で激しいディフェンスを仕掛けて川崎のターンオーバーを誘発し、セクー・ドゥムブヤのイージーバスケットに繋いだ。

「出だしから川崎さんが強度高くやってきてリズムを作られてしまったので、自分たちも強度を上げないと流れを持ってこられないと思いました。足を使ってプレッシャーかけることは意識してやってました」という通り、チームディフェンスのギアを上げる役割も果たした。

喜多川はこの試合で日本人トップの9得点を記録したが、越谷はこの試合で31得点を挙げたドゥムブヤを筆頭に、アンソニー・クレモンズなど外国籍選手に得点が偏る試合が続いている。喜多川もこれを課題と認識した上で、今後を見据えている。「日本人選手の得点は課題なので、今は『ボールをもらいに行くところから強い気持ちでやる』と話し、それに取り組んでいるところですね」

川崎に一時逆転を許すも、最終クォーターで突き離し76-65で今シーズン5勝目を挙げた。勝負のかかった場面でも喜多川はコートに立ち続けた。後半は得点こそないものの、外国籍選手相手にリバウンドでからんだり、川崎の起点となるオマール・ジャマレディンとマッチアップし、ハッスルプレーが光った。

喜多川は試合後には「平日の遅い時間にもかかわらず来てくれた方に、勝利を届けられてよかったです」と頬をゆるめた。

喜多川修平

安齋HCの復帰は「すごくやりやすい」

安齋ヘッドコーチは722日、所属選手へのハラスメント行為などによりバスケットボール関連活動の全部の停止と禁止3カ月間の制裁を受けた。制裁を受けた段階で復職は不透明であったが、旧知の仲である喜多川は安齋から「頼むぞ」と声をかけられたという。

この言葉を受け、喜多川は責任を背負いながらチームと向き合っていた。「竜三さんのバスケをやって長いので、それをチームに浸透させなければいけないという気持ちでやっていました」と話し、ロスターの半分以上が入れ替わった新チームのために意識することも多かったと続ける。「新しい選手がたくさん来たので、まずはチームをまとめなければいけない気持ちでした。そのためには細かいところまで、しっかりコミュニケーションをとるのが大事だと思っていました」

指揮官の離脱により、チームの結束力が高まる感触もあったと明かす。「僕だけでなく、バイスキャプテンの松山駿やサップ(クレモンズの愛称)もまとめることを手伝ってくれたので、良い雰囲気でやれていたかなと」

「竜三さんが戻る時には、良いチームを作っておきたい気持ちはすごく強かったので。竜三さんが求めるところまでいけていたかどうかはわからないですけど、その気持ちはずっとありました」

安齋ヘッドコーチが復職した1025日の佐賀バルーナーズ戦からの越谷の成績は33敗。指揮官の復帰はメンタル面でも戦術面でもポジティブな影響を与えていると喜多川は話す。「安心感がありますし、ポイントポイントで明確に指示をくださるので、すごくやりやすいです。まわりの選手もそこは感じているのではないかと思います」

喜多川は安齋ヘッドコーチとともに苦楽を乗り越え、宇都宮では年間チャンピオン、越谷ではB1昇格を果たした。ベテランになってきたが、まだまだプレーヤーとしてもチームリーダーとしても役割は大きい。今後も勝利に導くシーンを何度も見せてくれるだろう。