
オフェンス偏重のチームで守備で頑張る若手が大活躍
現地10月31日のキャバリアーズ戦を迎える時点で、ラプターズは1勝4敗。スコッティ・バーンズとブランドン・イングラム、RJ・バレットの3本柱が平均20得点前後、イマニュエル・クイックリーも平均15得点とどこからでもシュートの打てるオフェンスは良くても、平均127.8失点とディフェンスが機能していなかった。
キャブズは開幕からダリアス・ガーランドとマックス・ストゥルースが欠場しており、この試合ではドノバン・ミッチェルとジャレット・アレンもケガでプレーできず。メンバーを大幅に入れ替えた相手にラプターズ自慢の多彩な攻めが炸裂し、第2クォーター開始早々に2桁のリードを奪う。ただ、そこからは気持ち良く攻めるばかりでディフェンスへの意識が薄れていく悪癖が出て、第3クォーターにはロンゾ・ボールの作り出す速い攻めに対応できずに34失点を喫した。
指揮官ダーコ・ラジャコビッチは第4クォーターにジャマール・シェッドとジェイミソン・バトルを長く起用した。実績はなくてもディフェンスを第一に考えてハードワークできる2年目の若手が、ここでは必要だった。
2人のエネルギッシュなプレーにより第3クォーターの悪い流れは止まったが、終盤にエバン・モーブリーがミッチェルがいない分まで奮起。連続得点で残り1分20秒で4点差に詰め寄る。この試合はNBAカップの初戦でもあり、キャブズはエース不在でも格下のラプターズには勝っておきたいという執念があった。
しかし、そうしてキャブズが作りつつあった流れを断ち切ったのがバトルだった。クラッチタイムにはシェッドが下げられてクイックリーがコートに戻ったが、それまでに3ポイントシュート4本すべてを成功させていたバトルはクラッチタイムも任されることに。その彼が2ポゼッション連続で3ポイントシュートを2本決めて、あっさり勝負を決めた。
「シュートでもディフェンスでもリバウンドでも、あらゆる面でチームの勝利に貢献したい。僕が考えているのはそれだけなんだ。名前が呼ばれた時にいつも準備ができているように。そして調子の良し悪しにかかわらずニュートラルな精神状態でプレーすること。僕が心掛けているのはそれだけなんだ」とバトルは言う。
ドラフト外でラプターズに加入したのが去年の夏。キャンプ契約から2ウェイ契約を結び、シーズン途中に3年520万ドル(約8億円)の正式契約へと切り替え、今年のオフには未保証だった契約3年目も保証され、あとはコートで結果を残すのみ。1年目はNBAのスケジュールをこなし、ラプターズの戦術にアジャストするだけで精一杯だったが、2年目に向けて肉体改造をして、昨シーズンに40.5%を記録した3ポイントシュート成功率を落とさないまま当たり負けしない身体を作った。
2年目の始動に際して彼は「1年目より2年目が大事だと思っている。自分の居場所がチームにあると自然に感じられる、そこに疑いの余地を残さないために、オフは死ぬほど練習してきた。だから自信を持ってシーズンを始められる」と語った通りの活躍を見せている。
15分の出場でフィールドゴール7本、うち3ポイントシュート6本をすべて沈めての20得点で、出場していた時間の得失点差は+28。クラッチタイムの3ポイントシュート連発も含め、まさに勝利の立役者となった。
まだ4試合にしか出場していないが、ここまでの3ポイントシュートは12本中10本成功の83.3%。さすがに続けられる数字ではないが、この好調ぶりをバトルは「チームのおかげだよ」と謙遜する。「BI(イングラム)やRJ、クイック(クイックリー)、スコッティはディフェンスを引き寄せる引力を持っている。僕は彼らがプレーしやすいようにコートを広げて、パスが出た時にただシュートを打つだけなんだ」
「1勝4敗は苦しいスタートだけど、僕らは悪い時期もチームで団結して乗り越えていく。そうやって一日一日を過ごしていくのが僕らのメンタリティだ。自分たちが何をすべきかは分かっているよ」