
今シーズン、千葉ジェッツから京都ハンナリーズにレンタル移籍した小川麻斗。指揮官が変わり、新たなスタイルを模索するチームで、ポイントガードを任されながらスコアラーとしての能力も発揮し、中心選手として活躍している。チームの成績が伴わない状況が続いている中、もがきながらも成長を続ける小川に心境を語ってもらった。
「怖がっている場合じゃない」
──シーズンが始まりました。京都での自身の役割は明確に見出せていますか?
アンジェロ(・カロイアロ)がケガでいない中で、全員で攻めて、全員で守るというのが今のチームの方針です。その中で僕自身は、チームの得点が止まったり苦しい時間帯にポイントガードとして点を取る意識が大事だと考えています。チームを勝たせるゲームメークをすることが個人的な目標、そして京都に来た意味であることに変わりはありません。
──今日(10月29日の長崎ヴェルカ戦)の第2クォーター終盤では、アタッキングモードに入って8-2のランを成功させ、2点差まで追い上げる反撃の狼煙を上げましたね。
点が止まった時こそ自分が得点を取って相手の流れを断ち切る、流れがウチにきている場面では点差を離すためにオフェンスを構築するということを常々意識している結果でした。シュートは1本決まれば心が落ち着くので、今日もシュートが入ったタイミングでスイッチが入りましたね。
──昨シーズンは試合に出られない苦しさを経験しました。今シーズンはコンスタントに試合に出られていますが、メンタルは良好ですか?
開幕戦では違ったプレッシャーを感じていて、その結果「プレッシャーに勝てるのか?」という不安が入り混じったプレーをしてしまいました。でも、不甲斐ないプレーをしてしまったことをきっかけに、改めて「何のために京都に来たのか」ということを再確認しました。移籍を選んだ覚悟を取り戻し「怖がっている場合じゃない。思い切ってプレーをしよう」と決意して挑んだ第2節以降は、チームは敗れてしまいましたが個人的には自信を持ってプレーができたと思っています。
──試合に出る楽しさを取り戻せていますね。
楽しめてはいますが、チームを勝たせられないことで悩むこともあります。自分のプレーが良くても、チームが勝てなければ意味がないので、チームを勝たせられるようにフォーカスしていきたいです。

「チームを勝たせられる選手に成長していきたい」
──伊佐勉ヘッドコーチは小川選手のスコアリング能力の高さを評価している一方で「これからより良い選手に成長するためにピック&ロールなどを用いた時の状況判断を磨いてほしい」と話されていました。
アップテンポなバスケを目指している中でも、試合の流れを見てハーフコートバスケを組み立てる必要が出てくるのは必然です。今のチーム状況だとどうしても得点が止まってしまう時間帯があって、流れの良い時と同じ強度でプレーすることが難しい時もあります。そういった状況になった時に「何か使えるコールがないかな」とは考えてはいるんですが、それが上手くできていないというのは課題だと自分でも思っています。
やっぱりCJ(チャールズ・ジャクソン)頼りになりがちで、J(ジョーダン・ヒース)のアテンプトも少ない。シューター陣を生かすプレーができておらず、アシストが少ないのも課題の一つです。自分がシュートを狙っていくプレーはできていますが、マークが厳しくなってきている時こそまわりを生かすプレーを意識して伸ばしていきたいと思っています。
──得点とアシストのバランスが必要ということですね。
得点が入らないから自ら取りに行く、という考え方を持ちながら、アシストは増やしたいです。「CJとの2メンゲームからアシストを出してシュートが入れば良い」というところから、さらにもう一段階レベルを上げなければいけません。ただ単に「点を取る」「アシストをする」だけのガードではなく、状況を把握してどういうコールをするのか、誰が当たってるのか、誰がシュート打ってないのか、といったところも考えながらプレーをしていく必要があります。
ジェッツに在籍していた時は、西村文男さんや富樫勇樹さんが、シュートの当たっている選手を探して、その選手に合ったコールプレーをしたり、逆にその裏を突くようなコールを効率良くしていている姿を目の当たりにしてきました。自分はまだ考えすぎてしまってシュートセレクションにも影響が出てしまうので、試合を重ねるごとに成長をしていきたいです。
──ポイントガードとして伊佐ヘッドコーチのバスケを体現しなくてはいけないですね。
ムーさん(伊佐ヘッドコーチ)のやりたいバスケは理解しているのですが、40分間通してチームが機能できていないのが課題ではあります。ポイントガードとしてディフェンスのトーンセットを行い、自分が先頭に立ってプレッシャーをかけていく背中を見せなくてはいけないと思っています。コミュニケーションも積極的に取るようにしているのでリーダーシップを発揮できるようにしたいですね。
──ベテランの多いチームでリーダーシップを取る難しさは感じていますか?
試合後にフルさん(古川孝敏)から「年齢は関係ない、ポイントガードなんだから引っ張っていけ」と発破をかけられました。ベテランの方からそう言っていただけるのはとても心強いですし、リーダーシップを取れる環境を作ってくれていることに感謝しています。
──チームがこれから高みを目指す上で必要なことは何だと思いますか?
チームが勝てていない今だからこそ、自分にベクトルを向けて「何がダメだったのか?」「チームに足りないモノは何なのか?」ということを考え、発言をしてアジャストしていく必要があると思います。個人的には淡々とプレーをしてしまう時があって、そういう状態の時にターンオーバーをすることが多いです。点差が開いてしまった時こそ自らが率先してプレーし、ガベージタイム(点差が開いて試合が決してしまった残り数分間)でもチームとしてプレーを遂行することが必要です。そういった心がけが接戦になった試合で生きてくるはずなので、最後のブザーが鳴るまで全力を尽くしたいです。
昨シーズンは試合に出場できず悔しい思いをしましたが、今はプレータイムをもらえて成長できる機会をいただいています。ありがたいことに京都のファンの方々も温かく、ジェッツのブースターの方々もわざわざ試合を観に来てくれています。応援をされていること、この感謝の気持ちを忘れず、チームを勝たせられる選手に成長していきたいと思っています。
 
                                             
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                 
                 
                 
                