『完全アウェー』の状況、宇都宮が延長で競り負ける
10月8日、東アジアスーパーリーグ(EASL)が開幕した。 Bリーグから出場している3チームは、アルバルク東京は東京で、宇都宮ブレックスと琉球ゴールデンキングスはチャイニーズ・タイペイでシーズン初戦を戦った。
台北の台北和平籃球館には6045人のファンが集まった。 日本からの応援も多く見られたが、やはり大多数は現地のバスケファンで、特にここをホームアリーナとする台北富邦ブレーブスのファンは熱量が高かった。
昨シーズンのBリーグ王者、宇都宮ブレックスは、その前週に行われたBリーグ開幕戦でA東京に2連勝を収め、自信を持ってEASL開幕戦に臨んだ。
試合序盤は宇都宮が優位に立つも、富邦が粘り強い戦いで押し返す展開に観客の興奮は高まっていく。第4Q、宇都宮が一度は2桁のリードを築いてから富邦がエースのアーチ・グッドウィンを中心に巻き返すと、得点やリバウンドはもちろん、わずかなディフレクション一つにも大歓声が上がる『完全アウェーの雰囲気』が出来上がった。
宇都宮はリードを守ることができずに試合は延長に入り、そこでハイペースの打ち合いを制したのは富邦だった。D.J・ニュービルが32得点10アシスト、比江島も試合終盤にギアを上げて16得点6アシストと勝負強さを発揮しており、その宇都宮を富邦が上回ったのは驚きだ。そこに『完全アウェーの雰囲気』が影響を与えていたのは間違いない。
試合後の会見で比江島は「個人的には台湾には何回も来ています。ここでのバスケへの情熱は昔から本当に大きいですし、今回もそれをあらためて感じました」と語り、敵地のファンの力を称えた。
「ああいう素晴らしい声援は選手を後押しするので、それにつれて相手チームのギアが上がった印象もありました。個人的に別に何か影響したかと言えばそうじゃないんですけど、相手のホームということで、一つのミスだったりで流れがガラッと変わってしまうのはあらためて感じました」
『キングスらしさ』を失った琉球は桃園に完敗を喫す
その後には琉球ゴールデンキングスが登場し、桃園パウイアン・パイロッツと対戦した。桃園は同じ台北のチームでもホームアリーナが異なり、富邦ほど声援の圧力が強かったわけではないが、それでも『アウェーの雰囲気』は少なからず存在した。
富邦vs宇都宮が延長にもつれ、それも最後まで接戦が続いてダブルオーバータイムの可能性があって、琉球としては試合前のルーティーンがこなせない難しい状況となった。それでも琉球の小野寺祥太は「そこはコーチ陣が上手くコントロールしてくれたので、影響はありませんでした。ただの自分たちの問題です」と振り返る。
琉球は攻守にプレーの強度を出せず、試合が進むにつれて劣勢に。奮闘が目立った小野寺が接触プレーでベンチに退いた第3Q途中から、桃園に一気に突き放されて完敗を喫した。
「どこかでチームじゃなく個で打開しようとしています。戦術の部分もあるとは思いますが、まずはメンタルの部分。上手くいかない時はオフェンスじゃなくてディフェンスから立て直すべきです。最初は3Pシュートが入っていましたが、シュートが決まってもリズムに乗れるのは1人だけです。良いディフェンスをしてチームとして乗っていかなければいけないです」と小野寺は語った。
「東アジア各国のチームとの試合や交流が増える」
台北和平籃球館での2試合に先駆けて、EASLのヘンリー・ケリンズCEO、P.LEAGUE+のブラッキー・チェンCEO、B.LEAGUEの国際事業グループ/バスケットボールオペレーショングループで執行役員を務める岡本直也が、国内メディアに向けた会見を行っている。
EASLは立ち上げ当初に新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われたが、2023-24シーズンから各国のレギュラーシーズン中にホーム&アウェーを戦う大会形式が導入され、3シーズン目を迎えた今回は参加チームが12へと拡大した。EASLのケリンズCEOは「将来的にはいまだ参加していない中国CBAも含めた18チームへの拡大を望んでいる」と展望を語った。
P.LEAGUE+のチェンCEOは、バスケットボールを用いることでスポーツと観光を融合させること、日本の交流をさらに深めたいと力説。これにB.LEAGUEの岡本執行役員も同意し、「今シーズンはB.LEAGUEからEASLに3チームが出場します。滋賀レイクスにチャイニーズ・タイペイの選手(游艾喆)も所属しています。EASLを含めた様々な活動を通じて東アジア各国のチームとの試合や交流が増えることを楽しみにしています」と語った。
EASLはここから2月までグループリーグが行われ、各グループの上位2チームが決勝トーナメントに進出する。
ここからは新方式の「Round of 6」で東アジアの王者を決める。B.LEAGUEから出場している3チームはすべて開幕戦を落としたが、まだ先は長い。
琉球の小野寺は、「試合後に岸本隆一選手が『僕らはリーグでもEASLでも優勝したわけじゃない、チャレンジャーだ』とみんなに話しました」と言い、敗戦のショックを振り払った。「初戦は厳しい結果になってしまったんですけど、チームとしてコミュニケーションを取って、キングスらしさを取り戻します。そして最後はチャンピオンになりたいです」