デビューから4年、才能はあっても主力になりきれず
オフが終盤に入った今も、ウォリアーズとジョナサン・クミンガの契約交渉は停滞したままだ。2021年のNBAドラフト1巡目7位でウォリアーズに指名され、1年目からローテーション入りしているクミンガだが、4シーズンで258試合に出場しているものの先発は84試合のみで、平均プレータイムも昨シーズンが24.3分と、主力の座をつかみ取れずにいる。
そして今オフ、彼は岐路に立たされている。ルーキー契約が満了する今、ウォリアーズの提示する契約を受け入れて残留するか、クオリファイング・オファーを選択するか。後者の場合、彼は年俸790万ドル(約12億円)でウォリアーズに留まり、来年オフに無制限フリーエージェントとなって自ら新天地を選ぶことができる。ただし、新シーズンの年俸は格安になり、ケガを負う可能性を考えるとリスクが高い。
しかし、契約延長のオファーは彼にとって納得のいくものではない。『ESPN』によれば、ウォリアーズはこれまで2年4500万ドル(約68億円)だったオファーを3年7500万ドル(約110億円)に引き上げたが、最終年がチームオプションであることにクミンガは納得できないという。
クミンガの身体能力は誰もが認めるところ。それでも彼がウォリアーズで主力になりきれないのは、ステフィン・カリーやドレイモンド・グリーンにより完成された攻守のメカニズムにフィットできないからだ。指揮官スティーブ・カーはその才能を高く評価し、グリーンもクミンガを『弟子』として育てようとしているが、バスケIQの点でクミンガの成長は周囲の期待に応えられていない。
しかし、基礎ができてから10年間ブラッシュアップし続けられてきたウォリアーズの緻密なバスケは、若手が理解して遂行するのは至難の業だ。昨シーズンのクミンガはその点で向上を感じさせたが、その良いリズムはケガで途切れてしまった。年明けから2カ月半の戦線離脱を強いた足首のケガがなければ、クミンガの評価はもっと上がっていたかもしれない。だが現実には、復帰したクミンガはレギュラーシーズン終盤に主力のケガを埋める活躍を見せたものの、プレーオフでは出番を失った。
昨シーズンが終わった時点での会見で、クミンガは「エージェントには『すべて任せる』と伝えてある」とコメントしている。「本当に決断を下す状況になった時だけ、エージェントは僕に意見を求めてくる。シーズン中も契約問題はまったく気にしなかった。今もまだ方針についてエージェントと話し合ったりもしていない。きっと時間がかかるだろう。僕もじっくりと自分がどうしたいのか考えてみるつもりだ」
活躍の場を求めるクミンガ、トレードを考慮するクラブ
ウォリアーズのオファーにチームオプションが含まれているのは、クミンガを長期的な戦力ではなく、トレードの駒として見ているからだ。3年7500万ドルは悪い金額ではないが、ウォリアーズは条件がまとまり次第、彼をトレードに出すだろう。そして移籍先でも契約最終年のチームオプションは生きる。良い金額は得られてもチーム事情に振り回される状況に変わりはなく、クミンガはそれを受け入れられない。
現時点でもサンズとキングスがクミンガに注目し、彼が納得できる報酬と先発スモールフォワードのポジションを用意しているというが、トレードの条件でウォリアーズと折り合わない。
状況はクミンガにとって不利に見えるが、NBAキャリア5年目を迎えてまだ22歳の彼には伸びしろがある。主力を任されれば結果を残し、オールスター級の選手へと成長できると自信を持っているのであれば、クオリファイング・オファーというリスクを取って勝負に出られる。ウォリアーズに手綱を握られたままでは、トレードされた先でもどんな扱いを受けるか分からない。それよりも自分を必要とするチームで、自分の力で地位を築く方が良いだろう。この1年を犠牲にすることで、自分のキャリアを大きく高められる可能性がある。
ウォリアーズも何の見返りもなしにクミンガを手離すことは嫌だろうが、大盤振る舞いは許されない。カリーが引退する時点でクミンガがエースになっていると期待できるならそれも可能だが、最良のシナリオでもそこには至らないと彼らは判断している。ウォリアーズはこの10年間、巧みな編成で常に優勝争いのできるチームを維持してきたが、若手を中長期プランに組み込むことだけは苦手なままだ。