「僕自身のやるべきことは大きくは変わらないです」
9月13日、横浜ビー・コルセアーズはCBA(中国リーグ)の上海シャークスと対戦。ともに集中力高く、ハードなディフェンスを続けたことで最後までもつれる熱戦となったが、ここ一番での決定力で上回った上海が70-67で競り勝った。
現在の横浜BCは『FIBAユーロバスケット2025』でフィンランドをベスト4に導いたラッシ・トゥオビヘッドコーチが不在で、明日に出発するクラブ初の欧州遠征となるエストニアで合流する予定だ。この試合の指揮を執った山田謙治アシスタントコーチ兼アシスタントゼネラルマネージャーは試合の総括と、チームの現状についてこのように語った。
「勝たせられなかったのは僕の責任で、選手たちがやるべきことを遂行してくれたことは一つ良い材料でした。外国籍選手が揃っての練習が8月18日からスタートし、ピック&ロールやポストのディフェンスを重視してやってきました。昨シーズンからメンバーがほとんど変わっていないので、最初からチームを作り直すわけではないです。そしてIQの高い選手たちのおかげで、練習をスムーズに行えているのはコーチ陣として助けられました。今は去年のベースの積み上げをやっている感じです」
この試合、横浜BCは注目の新戦力、安藤誓哉が3ポイントシュート5本中4本成功の15得点と、観客を前にしての初の実戦で上々のプレーを披露。また、森井健太は持ち前の激しいプレッシャーディフェンスと巧みなパスでインパクトを与え、今シーズンの横浜BCはポイントガードが大きな強みになるとあらためて感じさせる内容だった。
同じポジションにリーグ随一の得点力を誇る安藤が加入したが、森井は「僕自身のやるべきことは大きくは変わらないです。去年みたいに30分以上出ることはあまりないと思います。出ている時間で今日みたいにアグレッシブにプレーして違いを出したいです」と、自分の役割について言及した。
また、森井は「今日はやっていないですけど、誓哉さんとツーガードのパターンもあると思います」と続ける。安藤と一緒にプレーすれば、彼への徹底マークで森井にシュートチャンスはより生まれやすくなる。実際に、今日も外に開いた森井がオープンとなったシーンが何度か見られ、3本中1本の3ポイントシュートを沈めた。シーズン中も同様の状況が訪れることは予想できるが、森井は長距離砲への意識をこう語る。「今までと3ポイントに対するマインドは変わっていて、もっと打てたと感じました。ただ、本数をたくさん打つというより、空いている時にしっかり決めきる。特に誓哉さんとツーガードで出た時は、そこが大事になってくると思います」
「フィンランドがセルビアを下した試合は見ました」
この試合、森井は外国籍ビッグマンのダイブに対する見事なタイミングでのパスで会場を沸かせた。「ドライブに関する動き方がチームの決まりとしてあるので、そこは簡単というか日頃やっていることの継続です」と語る森井だが、昨シーズンからの残留組であるダミアン・イングリス、ゲイリー・クラークだけでなく、マイク・コッツァーのインジュアリーリスト入りで緊急加入したケーレブ・ターズースキーとも息の合ったプレーを見せていた。その理由を森井はこう語る。「ケーレブ選手のロールのスピードが僕のパスに合うというのは、これまで試合で対戦した時に思っていました。実際、チームメートになって1回の練習で迎えた今日の試合で良い形を何回か作れました。今後、もっと増やしていけると思います」
ちなみに森井は、ユーロバスケット2025について、「ラッシが戦っていたこともありますし結構見ています。フィンランドがセルビアを下した試合は何回か見ました。フィンランドとレベルがどこまで同じかわからないですけど、ラッシがビーコルでもやりたいバスケットをやっていたので参考になったと思います」と明かす。
明日から横浜BCは遠征に出発しエストニア、ポーランドのクラブと対戦する。森井はこの遠征がチームにとって重要だと確信している。「ユーロリーグ、ユーロカップとかを見ているので、ヨーロッパのガードの選手をどう守れるのか、自分にとって楽しみです。チームとしてラッシがやりたいのはヨーロッパのバスケットなので、その文化に触れられることは今のビーコルの体制として大きな意味を持ちます。コーチ陣が今まで言ってきたことを、肌で感じられる機会になることをポシティブに考えています」
そして、チームメートと一緒に長い期間を過ごすことで生まれるケミストリーの高まりにも期待している。「明日から遠征ですけど、現在平塚で合宿をしていて、バスケット以外の時間でも一緒にいることを僕は大切だと思っています。コート上でコミュニケーションを取るのは当たり前ですけど、お互いの人間性を含めて知ることができる。お互いがリスペクトする関係になるために、長い期間みんなで活動して、いろいろと話す機会があるのは大きな意味があります。この遠征をきっかけに、開幕に向けてよりチーム一丸となってやっていけたらと思います」
コッツアーの離脱という痛恨のアクシデントはあったが、すぐにBリーグでの経験豊富なターズースキーを獲得と、的確な穴埋めに成功した。今日のプレシーズンでの充実の内容に加え、いよいよトゥオビヘッドコーチもチーム合流と、横浜BCは今シーズンの飛躍への期待がより高まる姿を見せてくれている。