チームを勝利に導くカニングハムとは対照的な出来
ジャ・モラントは現地11月1日のレイカーズ戦で無気力なプレーに終始し、試合後のメディア対応でコーチ陣への不満を態度で示すとともに、「彼らに言わせれば、僕を試合に出さないことだろうね。コーチ陣がそう考えるなら、そうすべきなんだろう。それがメッセージであれば僕は構わないさ」と発言している。
『チームの利益に反する行為』として1試合の出場停止を受けたモラントは、現地3日のピストンズ戦で復帰した。エースがモチベーションを失っていることを別としても、チームはスコッティ・ピッペンJr.とザック・イディー、タイ・ジェロームとケガ人が多く苦戦が続いている。
そんなグリズリーズを特にオフェンス面で引っ張ることが期待されたモラントだが、18得点は挙げてもフィールドゴールは16本中5本成功、10アシストを記録してもターンオーバー5つと効率が良いとは言えなかった。チームは第3クォーター途中に最大21点のビハインドから巻き返し、残り3分で1ポゼッションゲームに持ち込むも、そこからケイド・カニングハムがフリースロー2本にフィールドゴール2本と連続得点を挙げた一方で、モラントは残り1分でハンドリングミスからボールを失い、ここからのカニングハムにとどめの3ポイントシュートを決められた。
無気力プレーこそなくても、かつての爆発的な運動能力、ゴール下での勝負強さは発揮できず。良くも悪くも彼は自分に正直で、気分が良くない時はそれが表情や態度に出る。この日も試合後のロッカールームで笑顔はなく、「問題は解決したのか」と問われると「彼らに聞いたんだろ?」と答えた。彼ら、とはもちろんコーチ陣のことだ。
「プレーを楽しむことはできているか」との質問には「ノー」とだけ答えたが、球団との関係を問われると「悪かったらここで話をしていないよ」と語っている。
モラントは2019-20シーズンのデビューからすぐにグリズリーズのスター選手となり、若いチームは彼とともに成長してきた。2022年に初めてオールスターに選出された時点で、彼には将来MVPになるポテンシャルが感じられたし、チームも優勝を狙えると見られていた。それが今ではグリズリーズはどちらに進むべきか分からない平凡なチームに成り下がり、モラントはそんなチームの頭痛の種となっている。
モラントはまだ26歳と若いが、コート内外のトラブルを繰り返してきたことに加え、ここ数年はケガも多くなっている。強引なペイントアタックから無理やりにでも得点を決める運動能力と勝負強さが売りだけに、身体的な衰えはパフォーマンスの低下に直結する。さらにトラブルメーカーの面まで色濃く出てくるようだと、本当に扱いづらい選手になってしまう。
昨シーズン指揮官を担ったテイラー・ジェンキンスは、モラントの負担を下げてチームプレーを強化するバスケを打ち出してきた。それが機能せず、あるいはモラントの意に沿わずにジェンキンスは解任の憂き目を見た。その後任であるトゥオマス・イーサロとは、相性の良し悪し以前にいまだ信頼関係を結ぶことができていないように見える。
モラントがトラブルを起こしたレイカーズ戦、出場停止となったラプターズ戦、そして今回のピストンズ戦でチームは3連敗。またシーズン序盤で、多少負けが先行してもあわてる必要はないが、エースと指揮官の関係性改善なしにグリズリーズは前に進めない。
                                            