3チーム間トレードによりパウエルはヒートへ移籍
ノーマン・パウエルは昨シーズンのクリッパーズが質の高いオフェンスを遂行する上で重要な働きを見せていた。2022年2月にトレイルブレイザーズから加入して2シーズン半はシックスマンだったが、カワイ・レナードが出遅れた昨シーズンは先発に定着。コートを幅広く動き周り、スクリーンやドリブルハンドオフを活用してズレを作っては精度の高いシュートを放った。流れるようなオフェンスを作り出し、チームメートのためにスペースを広げて、NBA10年目でキャリアハイの21.8得点を記録。タロン・ルーのスタイルにフィットしていたからこそ、彼の移籍は予想できなかった。
しかし現地7月7日、クリッパーズは彼をヒートに放出した。この3チーム間トレードでヒートはパウエルを、クリッパーズはジョン・コリンズを、ジャズはカイル・アンダーソンとケビン・ラブ、クリッパーズの2027年の2巡目指名権を得ている。
クリッパーズにとってパウエルには2つの問題があった。32歳のパウエルは5年9000万ドル(約140億円)の契約最終年を迎え、彼を納得させる新契約を提示するにはサラリーキャップに余裕がない。もう一つは昨シーズン終盤、特にプレーオフでケガもあってパフォーマンスを落としたことだ。カワイが健康であれば、パウエルではなく他のポジションを補強すべきという考えが、今回のトレードの発端だろう。
ヒートはジミー・バトラーがチームに混乱をもたらした末にウォリアーズへと移籍した後、得点力不足が顕著だった。退団したダンカン・ロビンソンのシュート力を補う必要もあった。タイラー・ヒーローがチャンスメークし、バム・アデバヨがシューターにスペースを作り出すヒートのスタイルで、パウエルはクリッパーズ時代よりも多くのキャッチ&シュートの機会を得られるだろう。過去7シーズンでキャッチ&シュートの3ポイントシュート成功率が44.9%という精度の高さが、ヒートでは最大限に活用されるはずだ。
多彩なプレースタイルを持つコリンズはクリッパーズへ
クリッパーズが獲得するコリンズは、パウエルよりもパフォーマンスは見劣りするが、まだ27歳で5年1億2500万ドル(約190億円)の最終年を迎える。この契約は大きいが、来シーズン以降の新たな契約を結ぶならずっと安く済むと予想される。多彩なスキルを持つコリンズは、イビチャ・ズバッツと組むスモールフォワードとしてペリメーターでプレーすることも、ストレッチセンターのブルック・ロペスと組んで連携することも、スモールラインナップのセンターなど、様々な起用法に応えられる。再建中のジャズで2年間を無為に過ごしたコリンズは、自分の力を試す機会に燃えているはずだ。
しかし、クリッパーズはパウエルのシュート力を補う必要がある。そこで噂されるのが、間もなくサンズとの契約バイアウトが成立すると見られるブラッドリー・ビールの獲得だ。ジェームズ・ハーデンとクリス・ダンとはスタイルが異なる得点力のあるガードとして、ビールのスタイルはクリッパーズにフィットすると期待される。
ジャズはアンダーソンとラブを獲得したが、開幕時点で37歳になるラブはバイアウトとなる見込み。アンダーソンもトレード候補となる。今オフに球団社長に就任したオースティン・エインジは「タンクはしない」と宣言したが、すぐに勝ちに行く姿勢は見せていない。ジャズは積極的にトレードを行いながらドラフト指名権を集め、将来への備えを進めている。