対策が進んだ6戦目、ペイサーズの戦術と遂行力の勝利
NBAファイナル第6戦はペイサーズが108-91で制し、決着は『GAME7』へと持ち越されました。この第6戦、ペイサーズが110得点以下で勝つ試合はプレーオフでは初めて、レギュラーシーズンでもわずか5試合しかなく、ロースコアで勝ち切る珍しい展開でした。
ペイサーズの3ポイントシュート成功率は35.7%で、フィールドゴール成功率に至っては41.3%と大苦戦。しかし、スティール数で16-4、オフェンスリバウンドで11-6と上回り、これでオフェンスが17回も多く、シュートが決まらなかった分をカバーした形です。ディフェンスとハードワークに定評のあるサンダーのお株を奪った勝利と言えます。
ペイサーズが狙ったのは、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーのピック&ロールに今まで以上に積極的なダブルチームを仕掛け、シュートモーションにすら入らせず、パスアウト先を読んでボールを奪うことでした。試合途中からシェイはスクリーナーを呼ばず、アイソレーションを増やして対抗しようとしましたが、アンドリュー・ネムハードの巧みなハンドチェックに手こずり、ペイントに侵入してもすぐに囲まれてしまい、パスを出してはミスになる繰り返しで、ターンオーバー8を記録しています。
第4戦ではエンドラインのスローインを3回も奪われましたが、サンダーは緩いパスを出すことが多く、しかもパスの受け手が足を止めてボールを待つ弱点があります。これに対してペイサーズはダブルチームでパスの方向を絞ることでカットが狙いやすくなっており、しかもNBAファイナルでチェット・ホルムグレンとケイソン・ウォレスの3ポイントシュートが不調なことで止めるべき選手が明確で、さらにはサンダーが自らツインタワーにしてインサイドのスペースを消していることで、守りやすい状況を作っていました。
シェイにダブルチームを仕掛けるディフェンス自体は珍しいものではありませんが、ファイナルも第6戦になったことでペイサーズがプレーを読み切り、高いレベルで遂行することでパスカットを連発しました。その結果、シェイのターンオーバー連発だけでなく、アレックス・カルーソがスクリーンをかわそうとするディフェンスを突き飛ばしてオフェンスファウルを取られるなど、サンダーの選手たちは攻めあぐねることでストレスを溜めることになりました。
マッコネルのドライブを恐れて引き気味の対応に
本来、スティールといえばサンダーの持ち味ですが、第6戦のスティールは4つのみ。その理由に挙げられるのは、タイリース・ハリバートンが足を痛めたことでドライブを仕掛ける回数が減り、ネムハードやTJ・マッコネルがその負担を引き受けて、チーム全体でプレーシェアをしてきたことでサンダーが守りどころを絞れなくなったことです。その状態でマッコネルにドライブで抜かれるのを恐れて引き気味の対応となり、ペイサーズのボールムーブをさらに止められなくなりました。
特にマッコネルの視線のフェイクに惑わされ続け、次々とペイント内に侵入され、ジャンプシュートもキックアウトも止められませんでした。積極的に仕掛けて『ボールを奪うディフェンス』こそがサンダーの真骨頂のはずが、堅実にシュートを止めに行く対応を優先したことで持ち味が発揮されず、カウンターアタックが発動できないことでシェイ頼みのハーフコートオフェンスになっては止められる悪循環に陥りました。
泣いても笑っても今シーズンのラストゲーム。その『GAME7』でも同じ光景が繰り返されるのか、それともサンダーがこれに対策することで積極的なディフェンスを取り戻すのか。NBAファイナルの『GAME7』は絶対に見逃せない試合となります。