辞任の決定打は、前指揮官ウォルトンの去就を巡る議論
約1カ月前のレギュラーシーズン最終戦が始まる直前、マジック・ジョンソンはレイカーズ球団社長を退いた。オーナーにも選手にも何も伝えず、メディアに対して電撃発表する形で、彼は愛する球団を去った。あまりにも不可解だったこの決断の『真相』をマジックが語った。
『ESPN』の番組に出演したマジックは、ロブ・ペリンカGMが陰で自分を批判していたと主張する。「ロブ以外のスタッフをわずらわしいと思ったことはなかった。私は周りから何かを言われて気にするような人間ではない。ただ、仕事に向かうことが楽しいと思えなくなった。これが、実際にあったことなんだ」と、マジックは辞任に至った理由を明かした。
「隣で一緒に働いている人間が、私のポジションを狙っていると知って仕事をする状態では、楽しいとは思えない。ただし、その点は問題なかった。私は球団社長になって2年目に、ロブにこう伝えていたんだ。『私が今のポジションをこなすのは3年だけ。私の役目は君にこのポジションに就く準備を整えてもらうことなんだ』とね。私は、彼が球団社長に昇進する力になろうとしていた。それでも周りからは『ロブに気をつけろ』とアドバイスされた。私が球団社長に就任した当時、いったいどれだけの代理人から『ロブには気をつけた方がいい』と言われたと思う? アドバイスをくれた連中にはこう言ったよ。『彼にはフェアなチャンスを与えたい。周りの意見に耳を貸す気はない』とね。ロブはハードワーカーで、頭も良い。今では彼が球団を取り仕切るポジションに就いた。そのことについては、何の問題もない」
問題は、球団社長である自分にヘッドコーチの去就を決める権限が認められなかったことだ。マジックはルーク・ウォルトンをシーズン途中に解任すべきと考えたが、その案は通らなかった。「どうしても我慢ならなかった。ウォルトンの件については、ミーティングを3度もした。私はオーナーのジーニー・バスに、ルークが優れている点とそうではない点を示した。そして『我々には、彼より優れた指導者が必要だ。彼のことは好きだ。素晴らしい青年だし、元レイカーズの選手。素晴らしいと思う』とね。それでも、1回目のミーティングでは『考えてみましょう』と言われ、2回目には『解任して構わない』、それから3回目になって『解任はせず、上手くいく方法を探るべき』と言われた。意見がコロコロと変わり始めたと思ったら、ティム・ハリス(球団最高執行責任者)が絡んできた。彼はルークの友人で、球団に残しておきたいと思っていた」
「自分が知らないところで批判され、決定を下す権限がないと分かって、もう潮時と思った」
マジックが辞任の真相を暴露した数時間後、レイカーズは新ヘッドコーチであるフランク・ボーゲルの就任会見を行なった。当然メディアは、同席したペリンカにマジックの発言の真偽を確認。ペリンカは「私も驚いている。退任した後も、彼とは楽しく話せていた。だからこそ、こういう話を耳にして驚いている」と答えた。
この見解の差は、意見が食い違っているというレベルをはるかに超えている。レイカーズが抱えている問題の根は、思った以上に深いのかもしれない。