インサイドを効果的に攻めることで外の攻めも機能
NBAファイナル第1戦は常にサンダーがリードする展開でしたが、残り0.3秒でタイリース・ハリバートンがこの試合で初めてのリードをもたらす逆転のミドルシュートを決めて勝利しました。
プレーオフに入ってから何度も見てきたペイサーズの驚異的な勝負強さが、ファイナルの舞台でも発揮された勝利となりました。この逆転劇はメンタリティの強さはもちろんですが、ペイサーズらしい試合中のアジャストが関係しています。
プレーオフ平均で12.7しかなかったターンオーバーが前半だけで18と、ペイサーズはサンダーのディフェンスに大苦戦しましたが、後半は6つのみと大幅に改善しています。またハリバートンとアンドリュー・ネムハードのガードコンビは、2点シュートのアテンプトが1本だけだった前半から、後半は最後のミドルシュートも含めて10本のアテンプトから12得点を奪いました。このターンオーバーとガード陣の2ポイントシュートはペイサーズがハーフタイムに行った修正でした。
前半のペイサーズはサンダーのディフェンスにスイッチを促し、パスカル・シアカムが高さのミスマッチで攻めていきました。また、サンダーがアイザイア・ハーテンシュタインを起用すると、シアカムとオビ・トッピンを同時起用してスピードのミスマッチを活用する狙いでオフェンスを展開しました。
この形そのものは悪くなかったものの、サンダーの素早いヘルプディフェンスの前にパスワークを止められてしまうとプレーに迷いが生じ、トラベリングやパスミスを連発してしまいました。ミスマッチの活用を狙ったビッグマン側のミスの多さが響き、オフェンスのリズムが生まれなかった前半でした。
それを後半は、スクリーンを使ってハリバートンやネムハードがドライブしていく形に切り替え、ビッグマン側がボールを持つ機会が減ったことでミスを抑制してきました。試合終盤の3ポイントシュート攻勢が目立ちましたが、前半に12点だったペイント内得点も22点に増えており、むしろインサイドを効果的に攻めたことが3ポイントシュートでの得点にも繋がったと言えます。
そもそも第1戦ということで『試す』要素も多く、サンダーは前半だけで11人を起用してファイナルの舞台とペイサーズのスピードに慣れさせるようなローテーションを組んだのに対し、ペイサーズは細かく選手交代をして有効なラインナップを探していました。
両チームが第2戦以降に繋げるための情報を集めている形でしたが、ペイサーズに関してはサンダーのラインナップに対して自分たちがどのようなラインナップを組むべきか、前半に集めた情報を後半に使って見事なアジャストを見せました。
ハーフタイムで修正し、前半と後半で別のチームのようなプレーをしたペイサーズは見事ですが、7試合のシリーズでは次の試合までに修正することも重要です。今シーズンでサンダーが連敗したのは2回のみで、ホームゲームでの連敗はありません。第2戦でサンダーがしっかりとアジャストできるかに注目です。