
「今シーズンはペイントアタックが少なくなった」
川崎ブレイブサンダースから群馬クレインサンダーズへ移籍し、新たな環境に身を置いたことで、藤井祐眞のバスケットボールの見え方にも変化があった。その変化については前編で語られたが、後編ではプレースタイルの変化について深掘りする。
「シーズンが始まってからの数試合は、自分らしさをあまり出せていなかったなと今では思います。でも数試合こなすうちに『これが自分のやってきたことだ』という感覚があって、『自分がやるぞ』というモードに入れました」と振り返るように、藤井祐眞は群馬でも変わらず藤井祐眞だった。
シーズン中に33歳を迎え、中堅選手からベテラン選手と呼ばれるキャリアになってきた。その中でも藤井は1月の大阪エヴェッサ戦で、キャリアハイとなる33得点を叩き出した。
「あの試合は完全に自分が出せていた」と前置きした上で、今シーズンのプレースタイルをこう振り返る。「今シーズンはペイントアタックが少なくなったと思っています。もともと、ディフェンスがいるところに無理やり突っ込むタイプじゃないですけど、今までみたいにビッグマンをおとりにアタックして、隙があればレイアップや止まってジャンプシュートとかは全然やらなくなりましたね」
その変化は数字にも表れている。2ポイントシュートの試投数はBリーグ開幕以降で最も少ない平均2.2本。一方で、3ポイントシュートの試投数は平均7.1本とキャリア最多を記録した。この要因はチームメートとの兼ね合いだと言う。
「トレイ(ジョーンズ)やコー(フリッピン)はロングの2ポイントシュートを得意とする選手です。自分が同じプレーをするのは良くないなと思っていたので、2人とプレーエリアが被らないように意識すると、3ポイントシュートの試投が自然と増えました。行ければレイアップを狙いますが、キックアウトや自分が走って外に広がって打つプレーが増えました」
オフェンスだけでなく、ディフェンスでも変化を感じた年となった。「ディフェンスは、すごく自信を持ってやってました」と語るように、藤井は3年連続で『ベストディフェンダー賞』を受賞するなど高い評価を受けている。
その一方で、群馬の複雑なディフェンスシステムには課題も感じていた。「チェンジングディフェンスは手応えがある試合も多かったです。 ただチェンジングを意識しすぎて、残っていればいいのに動いてしまって、フリーを作ってしまうこともあったので、もっとチーム全体でうまくできるようになります。基本的にハーフコートのディフェンスは良かったですが、オフェンスの終わり方が悪い時のトランジションディフェンスは、もっともっと良くできますね」

チャンピオンシップで敗退「あと一歩足りなかった」
群馬は39勝21敗でシーズンを終え東地区3位、ワイルドカード枠でのチャンピオンシップ進出を果たした。しかし、クォーターファイナルでは三遠ネオフェニックスに連敗し、惜しくも敗退となった。
「悔しい敗戦でしたが、20点差から追いつく底力は見せられたと思います。出せるものは出しましたけど、逆転するに至らなかったので、あと一歩足りなかったなという感じです」と悔しさを滲ませつつも、一定の感触があったと振り返る。
特に今シーズン強みにしてきたディフェンスを発揮しきれなかったことが、悔しさを増幅させる。「相手を60点台に抑えた時の勝率が高くて、失点が少なければ少ないほど勝ちに繋がっていました。三遠さんは平均90点以上とるチームなので、その数字よりは抑えられましたが80点以下に封じたかったです」
もっと上まで上り詰めたかった気持ちは当然大きいが、結果は結果として受け入れている。クラブとして初めてチャンピオンシップに進出できたことは、チームとしても大きな一歩を踏み出したことも確かだ。藤井はファンとともにその歩みを続けていきたいと意気込む。
「クォーターファイナルで負けてしまい優勝には届きませんでしたが、またファンの皆さんと一緒にチャレンジしていきたいです。その楽しみが1年先に伸びたと思って、長い目で見て応援してください。来シーズンは、初めてのチャンピオンシップホーム開催やセミファイナル、ファイナルの舞台に連れていけるように頑張ります」
最後に、ファンへの感謝で締めくくる。「毎試合たくさんのファンの方がオープンハウスアリーナに来てくださり、プレーしていて楽しかったです。『ここが僕らのホームだ!』と自慢できるアリーナにしてくれて本当にありがとうございます」
初の移籍で戸惑うことも多かった。しかし、変わることを恐れずに、変わらない自分を信じて挑戦し続けた。その一歩一歩が、自身とチームをさらなる頂へと導くだろう。藤井は今シーズン、チームとともに前に進む確かな手応えを得た。