アーロン・ネスミス

「長いシーズンを戦うのはこの瞬間のためなんだ」

ニックスとのカンファレンスファイナル第4戦、ペイサーズのタイリース・ハリバートンは32得点12リバウンド15アシスト4スティール、しかもターンオーバー0という素晴らしいパフォーマンスで、130-121の快勝を演出した。

今のNBAでトリプル・ダブルと言えばニコラ・ヨキッチだが、ハリバートンの活躍も目覚ましいものだ。前半だけで20得点8リバウンド10アシストと『ほぼトリプル・ダブル』の活躍で、まだ試合の趨勢(すうせい)は決まっていなかったが、前半で69-64とハイスコアゲームに持ち込んでいた時点で、ペイサーズの優位は間違いなかった。

ハリバートンのプレーは美しくきらびやかで、人々の注目を集める。それでも彼の才能が輝くのは、チーム全体がハイテンポのバスケを高いレベルで遂行しているからであり、それと同時に相手の良さを削ぐ泥臭いプレーにも手を抜かないからだ。

その象徴はアーロン・ネスミスだ。ニックスのプレーメークを一手に担うジェイレン・ブランソンに張り付いて自由を与えないのが彼の仕事。どれだけ激しくマークしても、コンタクトを受けながらシュートを決める力ではリーグ最強のブランソンを完全に抑えることはできないが、それでもネスミスは試合を通じたハードワークでブランソンに消耗を強いている。

このカンファレンスファイナル初戦で9本中8本の3ポイントシュートを決めて歴史的な逆転勝利に貢献したネスミスだが、第3戦で足首を捻挫。ロッカールームで応急処置をして最後までプレーを続けたものの、試合後は足を引きずって歩いていた。

ペイサーズを率いるリック・カーライルは「彼の状態はすごく心配だった。移動がなく、すぐに治療に入ることができたのは不幸中の幸いだった」と言う。2日後の第4戦に向けた治療は、文字通りペイサーズのメディカルスタッフの総力を挙げるものとなった。

「前の試合が終わった直後から治療はスタートした」とネスミスは明かす。「一昨日の試合終了のブザーから今日のティップオフまでに、一日24時間体制でやれる限りのことをやった。長くてキツい時間だから、試合がとにかく待ち遠しかったよ。もちろん、第5戦に向けても同じことをやるつもりだ」

そのネスミスは第4戦でもいつも通りブランソンのマークを担当し、16得点3リバウンド1アシスト2スティールを記録。スタッツは目立たないが、彼が出場していた時間帯の得失点は+20。ブランソンの活躍の多くは、ネスミスがベンチに下がっている時間のことだった。

どんなケガであろうが、コートに立てる限りはプレーし続けることにネスミスは何の迷いも持っていない。「ケガをした時、『まずどんな感じか聞かせてくれ』と言われたけど、『どう感じるかなんて関係ない』と僕は答えた。僕らはこの時のために生きている。長いシーズンを戦うのはこの瞬間のためなんだ。逃すわけにはいかないよ」

パスカル・シアカムは「シーズンのこの段階まで来れば、全員が何らかのトラブルを抱えているものだけど、もう関係ないってことさ」と語る。「みんなただ勝ちたいだけで、言い訳をせずに全力を尽くす。どれだけやれるのか分からなくても、コートに出てやれる限りのことをやる。ネスミスはオフェンスもディフェンスも全部やる。相手のベストプレーヤーを抑え、走ってリバウンドを取り、シュートを決める。ビッグマンに挑んでダンクを決めたりもする。彼は戦士であり、チームにはそんな男が必要なんだ」