AJ・ジョンソンがヤングコアに「もっと活躍できる」
ジョン・ウォールとブラッドリー・ビールの時代ははるか過去となったが、今シーズンもウィザーズは18勝64敗とさっぱり勝てなかった。開幕からの3カ月で2度の16連敗を含む6勝41敗、トレードデッドラインにはカイル・クーズマをバックスにトレードした。順位争いが過熱するシーズン終盤も注目されないまま負け続け、早々にシーズンを終えている。
それでもプレータイムの長い順に選手を並べると、3番手のジョーダン・プールを除けばビラル・クリバリー(59試合出場、33.0分)、バブ・キャリントン(82試合出場、30.0分)、アレックス・サー(67試合出場、27.1分)、キーショーン・ジョージ(68試合出場、26.5分)と、21歳以下の選手ばかりで、彼らの成長がそのままチームの成長となっている。
そしてもう一人、AJ・ジョンソンを挙げておくべきだろう。ウィザーズがクーズマの対価として欲しがったのはクリス・ミドルトンではなくこのルーキーだった。
ジョンソンは2023-24シーズンにオーストラリアのイワクラ・ホークスでプレーしている。これはラメロ・ボールが通った道で、外国でプロを経験してNBAに臨むプランだったが、ケガで出場機会が少なく評価をむしろ下げ、NBAドラフトでの上位指名は得られなかった。しかも1巡目23位で彼を指名したバックスはベテラン重視のチームで、若手を育てるつもりがなかった。ウィザーズでも最初はGリーグに送られたが、そこでコンディションを上げるとシーズン終盤には自分の力を試す機会を与えられた。
22試合で27.0分のプレータイムを得て、9.1得点、2.4リバウンド、3.1アシストというのがウィザーズで残した成績となる。印象に残るスタッツではないが、ウィザーズのシーズンを最後まで見届けた少数でも熱心なファンに彼のプレーは受け入れられた。高い運動能力、フットワークを生かした執拗なディフェンスと臆さず打ちきる3ポイントシュート。チームに完全にフィットする前にシーズンは終わってしまったが、来シーズンはより成熟したプレーが見られそうだ。
「ポテンシャルを最大限発揮できる環境が整っている」
バックスに残っていればプレーオフを経験できたが、ジョンソンはウィザーズへの移籍を心から喜んでいる。「良い仲間たちに囲まれてプレーしやすい。まさに『プレーヤーファースト』の組織で、僕らが自分のポテンシャルを最大限発揮できる環境が整っている。ここでのプレーを楽しんでいるし、もっともっと活躍できると感じているよ」
ルーキーながら移籍を経験し、自身の立場と評価がめまぐるしく変わる1年を彼はこう振り返る。「自分の適応力には自信が持てた。予期せぬ状況でも即座に適応しなきゃいけない。大学に進まずオーストラリアでプロデビューした時もそうだった。あそこで環境に適応する術を学べて良かったよ」
そして、ミドルトンと一緒に移籍できたことも幸運だったと言う。「開幕前からクリスにはいろんなことを教わってきた。必要な時に常に隣にいてくれるベテランが一緒だから、トレードされても落ち着いていられた。本当に頼りになる人だよ」
こうして若い選手が着実に経験を積むウィザーズが目指すのは、サンダーのようにドラフトと育成で強豪チームを作り上げることだ。しかし、勝利を必要とされない状況でただ若手をプレーさせるだけでは、再建はいつまでも終わらない。今のウィザーズの若手たちは優れたポテンシャルを持つが、オールNBAに成長するレベルというわけではなさそうだ。サンダーには若いタレントのベースはあったが、今の地位を築けたのはシェイ・ギルジャス・アレクサンダーという才能あってこそだ。
その才能をどう手に入れるかは大きな課題となるが、今回のロッタリーで1位指名権を引き当て、クーパー・フラッグを獲得できれば、ウィザーズはいきなり東カンファレンスを騒がせるチームへとステップアップするだろう。