ニコラ・ヨキッチ

指揮官マローン「攻撃も守備もここから作り直す」

キャバリアーズは今のNBAで最も勝っているチームで、若いチームだけにすさまじい勢いがある。それでも2シーズン前の王者であるナゲッツは、開幕からニコラ・ヨキッチが絶好調を維持し、アーロン・ゴードンがケガから復帰して主要メンバーが揃い、キャブズ相手に良い勝負ができるかと思われた。結論として、ほとんどの時間帯でキャブズにリードを許す展開で敗れたが、第4クォーター残り3分半で9点差とある程度は戦えたようにも見える。

しかし、両チームに明らかな実力差があったことは、他ならぬナゲッツのコーチ陣や選手たちが感じ取っていた。ヘッドコーチのマイケル・マローンは「あらゆる意味で相手の力が上だった。我々は自分たちのバスケを模索しているチームでしかない。今日それがはっきりと分かった」と語る。

激情家のマローンだが、怒ってはいないし、悲しんでもいなかった。ただ冷静に今のリーグのトップチームと自分たちの実力差を見定め、受け入れていた。「負けたことよりも、負け方が気に入らない。映像を見直さなければいけないシーンがたくさんあった。我々がやるべきことは多い」とマローンは言う。

「全員がこの責任から逃げ出してはならない。一番最初に向き合うべきは私だ。鏡を見て『自分がどうすればこのチームの役に立てるのか』と本気で考えなければならない。オフェンスもディフェンスも、ここから作り直す」

ヨキッチは27得点20リバウンド11アシストを記録。今シーズン17試合目にして9回目のトリプル・ダブルであり、キャリア通算139回目でマジック・ジョンソンの記録を抜いた。この先にはラッセル・ウェストブルック(200回)とオスカー・ロバートソン(181回)しかいない。

「素晴らしいことだけど、今考えることじゃないね」とヨキッチは言う。今シーズン、彼がトリプル・ダブルを記録したのにチームが負けるのはこれで4回目だ。「今は別のことを考えなきゃいけない。記録はキャリアを終えてから振り返ればいいさ」

29歳のヨキッチは今、間違いなくキャリアの絶頂期にいる。それをナゲッツは無駄にしてしまうかもしれない。2年前に優勝したが、それで終わりでいいのだろうか? そもそも『バブル』のシーズンから、ナゲッツには優勝するポテンシャルがあった。この時はレイカーズに不覚を取り、ジャマール・マレーが膝の大ケガで約2年を棒に振り、一度は優勝したものの今はチーム力を急速に落としつつある。重要な戦力が抜けたとは言え、それはあくまでロールプレーヤーで、核となる選手たちはキープしているにもかかわらずだ。

今のナゲッツはヨキッチが万能の働きをしてもチームとして機能していない。特に3ポイントシュートは不振を極めており、相手からすればヨキッチに2点シュートを何本決められたところで、3ポイントシュートによるオフェンスの爆発は防げる。一方でナゲッツのディフェンスは脆弱で、ヨキッチの手に吸い付くようなリバウンドは強力ではあるものの、チームとしてエネルギー不足が目立つ。特に3ポイントシュートは自分たちが決められないのに相手を止められない。キャブズはフィールドゴール94本のうち半分以上となる48本を放ち、22本を決めた。ナゲッツは24本打って成功わずか6本のみ。この3ポイントシュートが一番の差だろう。

ファンのフラストレーションは溜まる一方で、それはジャマール・マレーに向けられつつある。本来であればヨキッチと並び立つべきマレーは、なかなか調子が上がらず、得点もフィールドゴール成功率も低調なまま。数字以上に、クラッチタイムでの勝負強さが消えているのが深刻だ。かくしてヨキッチ主導でのプレーは増え、ヨキッチのスタッツが伸びてもチームプレーはどんどん機能不全に陥る。

「僕らはいくつかのビッグショットを外したし、不要なターンオーバーも犯した」とマレーは言う。「でも、僕も含めてみんなが正しい方法でプレーを続けて、適切なタイミングで的確なパスを出してオフェンスを回していくしかない。そのやり方を続けていけば、きっと上手くいくはずだ。今日のキャブズは強かったし、それは評価すべきだ。でも僕らはもっと上手くやれる。そうしてみせるよ」