身長206cmでウイングスパン213cm、天性の守備意識
クーパー・フラッグは1年前の時点で2025年のNBAドラフト1位指名候補として名前が挙がっていた。デューク大での彼はNCAAトーナメント優勝こそ逃したものの、その評価に違わぬポテンシャルの高さを披露。今シーズンのNBAでいくつかのチームが例年以上に露骨なタンク戦略を採用したのは、「フラッグにその価値がある」という計算が働いた結果だろう。
フラッグは2022年7月にスペインで行われたU17ワールドカップに出場し、U17アメリカ代表の優勝に貢献した。この時まだ15歳。年長の選手より2学年下だったためにベンチスタートとなったが、試合を重ねるごとに存在感を高めて決勝のスペイン戦では27分の出場で10得点17リバウンドと素晴らしい活躍を見せた。
スタッツは9.3得点、10.0リバウンド、2.4スティール、2.9ブロックを記録。20分に満たない平均プレータイムでリバウンド、スティール、ブロックのこの数字は突出している。この年代の2歳は身体の成長でもスキルでも、そしてメンタルの面でも大きな差があるものだが、フラッグはそれを乗り越えてフィジカルなディフェンダー、リバウンダーとして存在感を見せた。
デューク大でのこの1年を待たずして、昨年のパリ・オリンピック前のアメリカ代表合宿に招待され、セレクトチームとしてプレーした時点で、『2025年の1位指名選手』という評価は完全に定まった。NBAのスター選手にも臆することなく挑む姿勢は『次世代のスター』を予感させた。一部には『白人のスター選手』への潜在的願望があったかもしれないが、それを差し引いてもフラッグはやはり1位指名に値するポテンシャルを備えている。
身長206cm体重92kg、ウイングスパンは213cm。下半身が強くてボディバランスが良く、肩幅の広さから見るに筋肉量を増やす『NBA仕様』の身体改造も難しくないだろう。守備意識は天性のもので、守備で相手を止める、攻撃ではパスを出すための試合展開を読むセンスも高い。ハンドリングとシュートには改善の余地を残し、ジャンプシュートはかなり練習を積む必要があるし、ゴール下での得点もフィジカル任せなアタックでは確率が下がる。ここもスキルを高め、バリエーションを増やす練習が必要だ。
次世代のカワイかテイタムか、それともピッペン?
しかし、これらの課題は練習で克服できる。生まれ持った身体のポテンシャルと日々の練習に取り組む姿勢が、フラッグをドラフトの目玉に押し上げている。適切なチームにドラフトされて適切なワークアウトを重ね、実戦で経験を積むことで、フラッグはこれらの弱点を解消し、1番から4番まで守れるタフなディフェンダーとなり、さらにレベルを上げることでエースの役割もこなせるだろう。
攻守に高いレベルでプレーできるフォワードとして比較されるのは、カワイ・レナードであり、ジェイソン・テイタムだ。高いレベルでディフェンスをこなし、オフェンスでは様々な武器を適切に使うことでどこからでも得点できる最高の2ウェイプレーヤーだ。ディフェンス面に注目するのであればスコッティ・ピッペンだろう。得点面で他のスター選手を必要とするが、最強のNo.2としてチームを支えられる。
デューク大ではスモールフォワードでありながらボールを持って攻撃の起点となることが多く、トランジションで1対1を仕掛け、ピック&ロールのユーザーとしてもプレーした。ディフェンスでは何をやらせても最高レベルのフラッグは、この1年の経験でオフェンスでも大きく成長し、何をやらせても最高レベルとまではいかなくても、どんなプレーも苦手意識なくこなせるようになった。
デューク大は準決勝でヒューストン大に敗れ、NCAAトーナメント制覇は果たせなかった。フラッグは敗退後の会見で「望んでいた終わり方ではなかったけど、かけがえのない1年だった」と語る。「最高の仲間たちとの出会いがあった。僕らは結束が強く、僕も他のみんなも助け合い、お互いのために努力していた。この1年を通して築き上げた繋がりは素晴らしいものだ」
現地6月25日と26日に行われるNBAドラフトで、フラッグが主役となるのは間違いない。そしてかなりの確率で、彼はその後もNBAのスターとしてスポットライトを浴び続けるはずだ。