ベネディクト・マサリン

ネッツの勢いに苦しむも、勝負どころの試合運びに差

タイリース・ハリバートンを腰の痛みで欠いているペイサーズは、現地3月20日にネッツと対戦した。ホームゲームではあっても前日のマーベリックス戦に続く連戦であり、7日で5試合を戦う過密日程の最終日。ベテランの多いチームというわけではないが、ディアンジェロ・ラッセルを除いて20台前半の選手が揃うネッツの勢いに押され、持ち前のスピーディーな展開を出すことができずにロースコアゲームに持ち込まれた。

苦しい状況で奮闘したのはマイルズ・ターナーだった。臀部のケガでプレータイムを制限しており、さらに3日前のティンバーウルブズ戦で休養を取ったことで他の選手ほど消耗していなかったターナーが、ネッツが勢いに乗る時間帯も攻守にペイントエリアで一歩も引かずにチームを支え続けた。

それでもネッツがリードを保っていたのだが、若さは勢いにもなる一方で脇の甘さにもつながる。第4クォーター残り5分を切ったところでネッツのトレンドン・ワトフォードがアンドリュー・ネムハードにつかみかかり、止めに入ったターナーと揉み合いになって退場となった。そこから荒れた展開になってもネッツは奮闘を続けていたのだが、やはり最後にツメの甘さが出た。

熱くなりすぎている気配を濃厚に出していたキーオン・ジョンソンをディアンジェロが落ち着かせようとするのだが、直後のプレーで3ポイントシュートを狙うベネディクト・マサリンへのクローズアウトで飛び込みすぎ、フリースロー3本を与えてしまう。残り23秒で3点リード、3ポイントシュートだけは許してはいけない状況だったが、それ以上にファウルを与えてはいけなかった。

インディアナのファンが総立ちで見守る中、マサリンはフリースロー3本を確実に決めて同点に。オーバータイムに入った時には、試合の流れはペイサーズに傾いていた。延長の残り30秒を切って、キーオン・ジョンソンが決まれば同点のダンクを狙うも、これをターナーが完璧なタイミングでのブロックショットで阻み、ペイサーズが105-99で勝利した。

ネッツが勝負どころでの未熟さを露呈した一方で、ペイサーズはベテラン司令塔のTJ・マッコネルが終盤を引き締めた。両チームともエネルギー過剰でバタバタした時間帯にマッコネルは落ち着いてペースを整え、チームメートに冷静さを取り戻させる。延長に入ってネムハードが退場した時もマッコネルが司令塔の役割を引き継いだ。

こうしてペイサーズはハリバートン不在の過密日程で3連勝を挙げ、バックスとピストンズが相手となる東地区4位争いで優位を守っている。

「これを乗り越えた経験がこの先に生きてくる」

ヘッドコーチのリック・カーライルは「審判への文句が多すぎる」とプレーではなくジャッジに意識が向いた選手たちを叱りつつも、「マサリンもターナーもマッコネルも素晴らしかった。総立ちで盛り上げてくれた観客のおかげでもあるし、乱闘も原動力となった。それらすべて込みで勝つことができた」と語る。

その中でも、マサリンの働きは際立っていた。39分の出場で28得点16リバウンド3アシスト2スティールを記録。今シーズンの平均得点は16.1だが、ハリバートン不在でオフェンスが苦しい直近の3試合で22得点、23得点、28得点とステップアップしている。

そのマサリンはこう語る。「2日連続の試合でこれだけ激しくプレーするのはキツいけど、僕はこれが好きだ。第4クォーターにヒリヒリする、プレーオフみたいな展開も大好きだよ。厳しい要素はいっぱいあったけど、これを乗り越えた経験がこの先に生きてくる。プレーオフで劣勢に立たされても、どんなアプローチをすればいいのか分かっていれば落ち着いていられる。そういう経験を積むのは素晴らしいことだ」

マサリンは昨シーズン後半戦をケガでプレーできなかったが、それでもブランクをあっという間に埋め、攻守に不可欠な存在として今まで以上の輝きを放っている。プレーオフについての言及が多いのは、昨シーズンのプレーオフは眺めるだけだった悔しさがあるからだろう。

彼は自分の成長ぶりについて「自信過剰だと思われたくないから言葉を選びたいんだけど……」と言い、こう続けた。

「僕は自分を信じている。どんな困難でも、それを目の前にしたらベストを尽くし、乗り越えられるものだと思っている。そういう状況に自分を置くのが普通だと思っているし、プレッシャーも感じない。ただ自分らしくやるだけでいいと思っているよ」