ベネディクト・マサリン

攻守にエネルギーを出すシックスマンを欠くことに

ペイサーズはタイリース・ハリバートンを中心に再建を果たし、ここまで35勝29敗で東カンファレンスの8位をキープしており、プレーオフのストレートインとなる6位まで0.5ゲーム差と好位置につけている。しかし、ここで主力の一人であるベネディクト・マサリンを欠くことになった。

マサリンは現地3月5日のマーベリックス戦で肩を脱臼。当初は1週間ほどで復帰できると見られていたが、脱臼だけでなく肩の関節唇に損傷があったために手術が必要となり、今シーズン終了となる。

マサリンは2022年のNBAドラフト1巡目6位でペイサーズが指名した選手で、ここまで59試合に出場して26.1分のプレータイムで14.5得点、4.0リバウンド、2.0アシストを記録。オールルーキー・ファーストチームに選ばれた昨シーズンからスタッツは大きく変わっていないが、それでもペイサーズの高速バスケをよく理解し、攻守にエネルギーを発揮できる欠かせない戦力となっていた。

彼の役割はセカンドユニットの得点源。ベンチスタートでありながらハリバートン、パスカル・シアカム、マイルズ・ターナーに続く得点を記録していた。また、ペイサーズのスタイルである高速パスワークをチームの一員としてこなしつつ、自らドライブで切り込んで得点を奪う力もあり、チームオフェンスに変化をもたらす貴重な存在だった。

ペイサーズは選手層の厚さが武器のチームだったが、バディ・ヒールドをトレードで放出した後にマサリンが長期戦線離脱となり、ウイングの得点力はかなり落ちることになる。ペリメーターでの身体能力を生かした激しいディフェンスも、他の選手で補うのは簡単ではない。2月にトレードで加入した後にケガで戦列を離れているベテランのダグ・マクダーモット、ルーキーのベン・シェパードとジェレス・ウォーカーを試しながら、プレーオフでマサリンの穴を埋められるようアジャストしていくことになる。

NBAはレギュラーシーズン終盤戦を迎え、プレーオフに向けた順位争いが過熱するとともに、ここからは『健康勝負』の様相を強くしていく。ティンバーウルブズでは先発パワーフォワードでチームリーダーのカール・アンソニー・タウンズが膝の手術をすることになり約1か月の離脱となった。順調に行けばポストシーズン序盤で復帰となる見込みだが、今の順位をキープできるかどうかも含め、チームは大きな課題を抱えることになった。

他にもレイカーズではエースのレブロン・ジェームズが左足首の痛みで欠場している。彼のケガは慢性的なもので、付き合いながらプレーしていくしかないもの。レブロンは「これまでも対処してきたことだ。試合ごとに状態が異なるんだけど、ベストな方法で向き合っていきたい」と語る。またウォリアーズでは現地7日のブルズ戦でステフィン・カリーが右足首を捻挫。恐れていた長期離脱は避けられ、数試合の欠場で戻って来れそうだが、無理をすればポストシーズンの状態に差し障りが出る。ただウォリアーズは西カンファレンス10位と苦戦が続くだけに、彼の復帰を急がせなければいけない状況だ。

どんなに強いチームであっても、健康でなければ真価は発揮できない。だがそれと同時に長いレギュラーシーズンを戦い抜いて100%のコンディションを保つのは現実的に不可能で、どの選手も大なり小なりトラブルを抱えながら最善のパフォーマンスを発揮することが求められる。ここからはどのチームも、ケガという厄介な課題と向き合いながらの戦いを強いられる。