「僕の役割はシーズン最初からずっと同じ」

3月12日、千葉ジェッツは水曜ゲームで佐賀バルーナーズを迎え撃った。前半は佐賀のインサイドアタックを軸としたオフェンスへの対応に苦しんだが、ディフェンスを立て直した後半を27失点に抑えて85-71で勝利した。

この堅守に大きく貢献したのが、田代直希だった。2025年に入ってから初めてとなる20分以上のプレータイムで5得点を挙げると、粘り強くタフなディフェンスで相手のエースシューターやハンドラーに仕事をさせなかった。その結果、勝負の第4クォーターでは10分のフル出場を果たした。

千葉Jのトレヴァー・グリーソンヘッドコーチは、田代を使い続けた理由をこのように語る。「原(修太)選手が前半に良いプレーをし、第3クォーターにフル出場だったので、第4クォーターは最初から田代選手を起用しました。彼のディフェンスは素晴らしく、フルコートでのピックアップも上手くいっていました。最後、再び原選手を起用しようかと思いましたが、出ているメンバーが機能していて、タシ(田代)はビッグスリーにオフェンスリバウンドと活躍したので、最後まで出しました」

そして田代本人は、「前半、僕たちの目指すバスケットがなかなか表現できなくて、自分たちで苦しい展開に持っていった試合でした。僕自身も、前半に良くないファウルをして申し訳ないなと。後半はチームとして上手く修正できた試合でした」と試合を振り返る。

今シーズン、田代はプロ入りから8年に渡って在籍した琉球ゴールデンキングスを離れ、地元である船橋市をホームタウンとする千葉Jに加入。開幕直後、渡邊雄太の離脱を受け、先発スモールフォーワードとして開幕ダッシュ成功に貢献した。故障者が復帰し、メンバーが揃っていく中で出場時間こそ減っているが、タフな守備と堅実なプレーに対する指揮官の信頼は厚く、前半は出番が少なくても後半に入って試合の要所を託されることも少なくない。

だが、田代は「淡々とやるだけです」と、どんな場面でコートに立つことになっても意識は変わらないと語る。「試合終盤、クローズのところで原ちゃん、金近(廉)選手、僕と誰が出ても強度は変わりません。その日の調子が良い選手を最後にヘッドコーチが選んでいる。僕の役割はシーズン最初からずっと同じと感じているので、一喜一憂せず続けていけたらと思います」

「ディフェンスばかりでは相手の脅威にならない」

琉球では攻撃の起点を担っていたが、千葉Jでは守備で輝きを放っている。千葉Jには、自分より一回り大きな外国籍選手にも当たり負けしないフィジカルモンスターで、リーグ随一のディフェンダーである原修太が同じウイングにいる。その中でもグリーソンヘッドコーチは、「原とタシは素晴らしいワンツーパンチです」と田代のディフェンスにも大きな信頼を寄せる。

琉球の時と求められる役割は真逆になったが、田代にはこの変化に対する違和感はない。「琉球の時はボールを持ってクリエイトする持ち場がありました。ただ、琉球とジェッツではやっているバスケットボールがまるっきり違います。その中でどうやってコーチ陣から評価され、プレータイムを伸ばしていくのが考えた時、ジェッツにはハンドラーで絶対的な選手が何人もいるので、彼らがやるべきと思いました」

それと同時に「ディフェンスばかりでは相手の脅威にならないのは課題としてあります。ここをどうすればいいのか、模索してやっていけたらと思います」と、オフェンス面での貢献も貪欲に追求している。

シーズン中盤戦における故障者続出を乗り越え、今の千葉Jは主力が揃ってコートに立てており、「少しずつ、みんなの持ち場が明確になっている感覚があります」と田代は語る。特に、6年間に及ぶNBAでの激闘を経て、今シーズンからBリーグでプレーする渡邉のアジャストに手応えを感じている。

「雄太がすごくフィットしてきているのが、チームにとって何よりも大きい収穫です。少しずつ、オフェンス、ディフェンスでどういうプレーをしなければいけないのか、みんなが同じ絵を頭の中で描けるようになってきていると感じています」

昨シーズンの田代は、琉球でベンチを温める場面が続き、チャンピオンシップでは8試合出場も平均3分半のプレータイムに留まった。それが、千葉Jでは、これまでにない守備を武器に主力の一員としての存在感を高めている。新天地で見事なカムバックを果たしたベテランは、千葉Jの豊富なタレントが持ち味を出しやすい状況を作り出す『いぶし銀』のプレーで存在感を発揮している。