クリス・ミドルトン

「プレーに集中できなくなるのは嫌だったからね」

現地2月21日のバックスvsウィザーズで、クリス・ミドルトンはウィザーズでのデビューを果たした。トレードデッドラインに11シーズン半を過ごしたバックスから放出されたばかり。その最初の相手がバックスだった。

試合前日には「奇妙な偶然だけど、楽しい機会になるだろうね」と語ったミドルトンだが、いよいよ試合が始まるとなれば、そんな楽な心境ではいられなかった。「この何週間かは本当にいろんなことが起きたから、試合に集中するのが大変だった。みんなとの挨拶は試合が終わってからでいいから、すべてをシャットアウトして集中しようとした」

先発出場して25分プレーし、12得点5リバウンド2アシスト2スティール。バックスでの最後はケガの影響で控えに回っており、移籍とオールスターブレイクを挟んだため試合勘を取り戻す必要もあった。その中でミドルトンはできる限りのプレーをしたが、3点ビハインドで迎えたラスト30秒に、トレード相手のカイル・クーズマをかわして狙ったシュートはヘルプに飛んできたブルック・ロペスにブロックされ、残り3秒で同点を狙って放った3ポイントシュートは外れた。

「古巣相手に試合を決めるような場面を任せてもらったのはありがたい。もっと良いシュートが打てたと思うけど、上手くいかなかった。でもああいう場面では思い切って打つべきだし、結果は受け入れるしかない」とミドルトンは語る。

試合終了のブザーが鳴ると、バックスの選手が次々とやってきてはハグをかわした。「特別な感情があったね。でもハグはできるけど、あの短い時間に大勢の人がいる中で本当の自分の気持ちを伝えるのは難しい。それはまた別の機会にするけど、みんなに会えて良かった」

試合が始まってしまえば、「僕はいつも冷静にプレーするタイプだから、集中するのは難しくなかった」とミドルトンは言う。「ヤニスがこっちを見ていたのに気付いたけど、目を合わせなかった。プレーに集中できなくなるのは嫌だったからね」

アデトクンボ「彼がいないと寂しくてたまらない」

ヤニス・アデトクンボはミドルトンほど冷静ではいられなかった。激しく戦うプレースタイルだけに時にファウルがかさむことはあるが、この試合のように18分の出場で個人ファウル6つで退場するのは珍しい。ターンオーバーも7回を記録した。ミドルトンよりずっと感情的にプレーする彼は、その影響がプレーに出てしまった。

「クリスがウィザーズのユニフォームを着ているのは変だよね? 全然似合っていなかった」とアデトクンボは笑う。「でも、彼が元気にプレーしている姿を見ることができて良かった。彼がいないと寂しくてたまらない。寂しくて奇妙で、試合中なのに何度か笑ってしまったよ」

そんなアデトクンボも、残り3秒でミドルトンにボールが渡った時は肝を冷やした。バックスベンチの目の前でパスを受けたミドルトンは、ショットクロックがない中で流れるようなフォームで3ポイントシュートを放った。「僕らはみんな『ヤバい』と思った。彼らしい鋭い動きだった。いつもなら『決めろ、クリス!』と言うところだけど、今日ばかりは『外せ、クリス!』と言ったよ」

この新天地デビュー戦を前に、『The Athletic』のインタビューに応じたミドルトンは、トレードについてより率直に語っている。「トレードを伝えられた時には困惑したし、怒りもあった。プレータイムの制限はあったけど、プレーオフには間に合う予定だった。でもバックスは僕をもう頼りにしないという判断を下した」

「ただ、そこに個人的な感情はない。僕はバックスでたくさんのチャンスをもらい、最後はそれを生かせなかったということだ。ジョン・ホーストGMは12年間毎日僕を見てきて、チームにとってベストは判断を下した。それが彼の仕事なんだ。僕としては、悔しいし最悪の気分だけど、それが新しいモチベーションになる。悪い感情を持ったままでいるのが正しいことだとは思わない。ポジティブなエネルギーに変えて、ここで頑張っていくよ。僕はまだかつてのパフォーマンスを取り戻せると信じている。そこに向かって進んでいくだけだ」

「新しいチームのプレーはそれなりに頭に入れたつもりだけど、もっと理解を深めなきゃいけない。ただ、みんな僕にたくさん話しかけてくれて、良いコミュニケーションが取れているおかげで素晴らしいスタートが切れたと思う」