ドンチッチ獲得がレブロンに事後通告だった『変事』
マーベリックスがルカ・ドンチッチをレイカーズに送る『世紀のトレード』から2日、今なおその衝撃は収まらず、トレードの背景や妥当性について議論が続いている。トレードデッドラインが迫る中、このトレードが生み出すであろう次のビッグディールへの関心も果てしなく大きなものとなっている。
その一つがレブロン・ジェームズの去就だ。40歳になったとはいえ、『史上最高の選手』であるレブロンをレイカーズが放出することは、普通に考えればあり得ない。ただ、今のNBAではアンタッチャブルがアンタッチャブルではなくなっており、レブロン移籍のシナリオも様々に議論されている。その大きな理由は、レブロンとドンチッチはいずれもボールを手にしてプレーすることを好み、周囲がディフェンス面をサポートしてオフェンスに注力することで本領を発揮するタイプで、相性が必ずしも良くないと予想されることだ。
しかし、それ以上に疑問なのはレイカーズにおけるレブロンの地位だ。ポッドキャスト仲間のJJ・レディックがヘッドコーチに就任し、息子のブロニーがドラフトで指名されるまでの動きは、レブロンがレイカーズのチーム編成に大きな影響力を持っていたことを裏付ける。しかし、今回のドンチッチ獲得、アンソニー・デイビスの放出についてレブロンは影響力を行使せず、それどころかニックス戦を終えて家族との夕食の際に初めて知って衝撃を受けたとされる。一方でレブロンとデイビスのエージェントであるリッチ・ポールは数日前からこの交渉を知っていたという。
レイカーズやリッチ・ポールが、これほど重要なトレード交渉をレブロンに相談せずに進めることなど、果たしてあり得るのだろうか? もしこれが事実だとしたら、この数カ月でレイカーズ内のパワーバランスが変わり、レブロンの影響力は過去のものになったということだ。
かつてマーク・キューバンは「ドンチッチを手放すぐらいなら妻と別れた方がマシ」と冗談混じりで語ったが、その彼が筆頭オーナーではなくなったことでマブスにおけるドンチッチの時代は終わった。それと同じことがレイカーズでも起きているのかもしれない。そうでなければレブロンの取り巻きが、レブロンが盟友デイビスを切り捨てたというイメージダウンを嫌い、「レブロンは知らなかった」という情報を流しているかだろう。
もしレブロンがかつての影響力を失っているのであれば、新たな『チームの顔』となるドンチッチを獲得したレイカーズが、このタイミングでレブロンをトレードに出しても不思議ではない。40歳になったレブロンは今もなおトップレベルを維持しているが、その爆発力を発揮する機会は次第に減っており、それでいて年俸は4870万ドル(約73億円)と高額で、今オフには新たな大型契約を望むだろう。
もしレイカーズがレブロンの放出を決断すれば、今のロスターの課題であるセンターも、層を厚くするオールラウンダーも獲得できる。しかもそれらの新戦力は、今月26歳になるドンチッチのタイムラインに合う選手となる。
トレードデッドラインを前に大胆な補強の可能性を探るウォリアーズは、レブロンの移籍先として有力な候補となる。昨年のトレードデッドライン直前にも、このトレードはウォリアーズのジョー・ラコブとレイカーズのジーニー・バスというオーナー同士のトップ会談で話し合われたと『ESPN』が当時報じている。ラコブからこの話を持ち掛けられたバスは、乗り気でないながらもレブロン本人の意向を確認。そこでレブロンが「ノー」と答えたことで交渉は破談となった。
しかし今、レイカーズ内でのレブロンの影響力がなくなっているとしたら──。レブロンは今度こそ「イエス」と言うかもしれない。あるいは食事中にトレードが決まったことを伝えられるかもしれない。