コー・フリッピン

A東京に連勝、19勝7敗でチャンピオンシップ圏内に

12月29日、群馬クレインサンダーズはホームにアルバルク東京を迎え、年内最後の試合を行った。前日の第1戦は前半にリードを広げた群馬が、第3クォーターでA東京に追い上げを受けたものの勝利。第2戦も接戦となったが、後半に着実に得点を積み重ねて80-73で連勝を飾った。

第1クォーター、群馬は5つのターンオーバーを犯してシュートまで持ち込めないポゼッションが多く、A東京に0-7のランを食らって流れが良くない時間帯があったものの、フリースローで得点を繋ぎ、終盤には淺野ケニーがスティールからの速攻で得点を挙げてA東京の流れを断ち切る。第2クォーターには8本中5本の3ポイントシュートを成功させて逆転に成功。A東京はセカンドチャンスで得点を重ねるも、39-33と群馬がリードして前半を終えた。

後半はお互いにディフェンスのギアが上がり、守り合いの様相を呈する。それでも群馬はトレイ・ジョーンズのジャンプシュートを皮切りに、辻直人と藤井祐眞が立て続けに3ポイントシュートを成功させて最終クォーターへ。開始直後に小酒部泰暉の3ポイントシュートで同点に追いつかれるも、辻の連続3ポイントシュートなどで着実に得点を積み上げた群馬が勝利を手にした。

カイル・ミリングヘッドコーチは試合をこう振り返る。「A東京がカムバックすることは分かっていました。その中でも前半から良い形でプレーでき、チーム全体で勝ち取った良い試合でした」

「A東京はリーグを代表するリバウンドやディフェンスが良いチームで、自分たちも競争心を持ってできた。外国籍のビッグマンだけなく、ガードの選手も含めて5人全員でリバウンドに集中し、結果に繋げました」

群馬は11月30日のリーグ再開以降、リーグ戦と天皇杯の戦績を合わせると12勝1敗と絶好調。前半でビハインドを背負っても、カムバックして勝利に繋げる強さがある。この試合でミリングヘッドコーチは最終クォーターの残り3分12秒まで一度もタイムアウトを取らなかった。

この裏には選手たちへの自信と信頼があったと話す。「前半から第3クォーターまでは、相手のファウルでゲームが止まるシーンが多かったです。自分たちはスローペースでしっかり組み立てていけるチームなので、タイムアウトをとる必要はありませんでした。取ろうかなと思う場面もありましたけど(笑)。選手たちがやってくれるという自信もありました」

コー・フリッピン

「チームメートがダンクできる状況を作ってくれた」

この試合では藤井が21得点、辻が15得点と日本人選手の活躍が目立った。コー・フリッピンも16分49秒と出場時間は長くなかったものの、持ち味を発揮して勝利に貢献した。

今シーズンの群馬はミリングヘッドコーチが指揮をとり、昨シーズンまでと大きくチームスタイルが変わっている。ハイペースでオフェンシブだったスタイルは、ディフェンス重視かつスローペースと真逆な戦い方となった。その中で、フリッピンはシーズン序盤からなかなか実力を発揮できなかったが、12月に入ると先発起用される試合もあり、攻守に渡ってリズムを取り戻している。このフリッピンの復調が連勝にポジティブな影響を与えているのは言うまでもない。

「新しいコーチということで、シーズン序盤は個人的には難しかったです。祐眞や(細川)一輝、JT(ヨハネス・ティーマン)というチームの中で大きな役割を担う3人が入ってきたからこそ、みんながどうすればいいかを理解しなければなりませんでした。でも今はピースがハマってきた感じがあります。自分としても何をしなければいけないかが分かってきてプレーしているので、やりやすくなってきました」

思えば昨シーズンも年明けから先発起用されて、出場時間とスタッツを大きく伸ばした。フリッピンはチーム内での役割や、自分のメンタリティを客観視できている。「長いシーズンでは『自分の時間じゃない時』が必ずあります。その時はプレータイムやスタッツが出ないこともありますが、自分の時間じゃない時があるからこそ、自分の時間が回ってくると思っています。その時に自分がやるべきことをやれるようにフォーカスしています」

この試合でも、まさに『自分の時』が来たと感じさせる場面があった。フリッピンと言えば、昨シーズンにスティール王を獲得した通り、スティールからのダンクがシグニチャームーブだ。しかし、今シーズンはこれまで1本もダンクがなかった。この試合の最終クォーターでスティールを奪うと華麗に宙を舞い、ボーズハンドダンクを叩き込んだ。「コーチからは『しっかりディフェンスをして、ギャンブルはしないでほしい』と言われています。その中でできるスティールはしていきます。今日はチームメートがダンクできる状況を作ってくれたのでトライしました」

チームは東地区2位に浮上し、チャンピオンシップ進出圏内をキープしている。この好調の裏には昨シーズンからの経験が生きていると話す。「苦しい状況からカムバックできない経験が昨シーズンからいる選手の中にはあります。だから何をしてはいけないかが分かっています。分かっているから、やるべきことをやり続けなければいけないし、落ちても上がれるチャンスがあることも分かっていることです。自分たちは信頼し合って、良い形でプレーできているので、結果に繋がっています」

リーグ戦は26試合を消化し中盤戦に入っている。長いシーズンを考えれば浮き沈みは必ずあるものだ。チームスタイルの変化に戸惑いを感じながらも、フリッピンは身体能力を生かしたプレーからチームプレーヤーとして成長している。昨シーズンの悔しい経験を糧にして、さらなる高みへ登ることを期待したい。