文=鈴木健一郎 写真=古後登志夫

日本代表の馬場雄大に『格の違い』を見せ付けられ

3月31日の夕方、筑波大学のバスケットボールコートでは、福岡大学付属大濠の選手たちがインカレ王者を相手に必死になって食らい付いていた。高校生と大学生とでは体格が全く違う。ユニフォームを着なくても区別が付くぐらい、身体の『厚み』には差があった。

高校バスケのエリートが揃う大濠の選手であっても、攻守ともに圧倒される。最初の5分間は圧倒されながらも食らい付いたが、時間経過とともに点差が開いていく。

2月のイラン戦で日本代表デビューを飾った馬場雄大も途中出場で登場。軽快なボールハンドリングで翻弄され、ドライブ一発で守備をこじ開けられ、いとも簡単に得点を奪われる。『格の違い』を見せ付けられるシーンだった。

それでもタイムアウトでは片峯聡太監督が選手たちに檄を飛ばす。言い続けていたのは「違う失敗をしよう」。10分×3本の練習試合の中で、チャレンジして失敗するのはいい。だが「同じ失敗を繰り返していたのでは成長がない」と片峯監督は言い続けた。

厳しい声が挙がるのは、選手にチャレンジの姿勢が見られなかった時。あらゆる面で実力差がある大学王者を相手に、身体をぶつけ、最初の一歩を先に踏み出そうとし、ボールへの執着心を見せる。自分が行くにせよ仲間のサポートに回るにせよ、自らの意識で動く。そういうプレーで失敗しても厳しい声が飛ぶことはなかった。

試合は30-71の大敗。だが、勝敗は問題ではない。自身の出身校でもある筑波大に胸を借りた試合を終え、片峯監督は吉田健司・筑波大監督とがっちりと握手。「選手たちにとっては最高の経験になりました」と語る。

同じ高校生相手のカップ戦に参加するよりも有意義な遠征に

福岡大学付属大濠は今週、関東に遠征して強豪大学との練習試合を重ねてきた。青山学院、専修大、法政大、そして筑波大。レベルの高い相手との連戦で、選手にとってはかなりタフな遠征となった。

全国の強豪校はこの時期、カップ戦に参加して実戦経験を積む。大濠も例年はそうしてきたが、今回は新たな試みとして大学への『出稽古』を実施。「最もレベルアップできる時期をより有効に使えている」と田中國明総監督は語る。「オフェンスもディフェンスも迫力が違って、選手にとってはすごく良い経験になるし、勉強になります。それに、関東の大学の環境を見ることは選手たちにとって刺激になります」

新人戦の九州大会ではライバルの福岡第一を破って優勝した新生大濠の選手たち。その自信を今回の遠征で一度打ち砕かれ、チームはさらなるレベルアップを目指して成長を続けることになる。