「復帰戦にしては上出来だったと思います」
12月8日、琉球ゴールデンキングスはホームで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦した。エースの岸本隆一が試合早々に負傷離脱するアクシデントに見舞われる中、持ち味のインサイドでアドバンテージをしっかり取り92-82で勝利した。これで同一カード連勝を達成した琉球は今シーズン13勝目(5敗)を挙げている。
この試合、名古屋Dはインサイドの要であるスコット・エサトンがコンディション不良で欠場。だが、琉球は立ち上がりからルーク・メイとザイラン・チータムの両ビッグマンを含む機動力を生かした名古屋Dのオフェンスに苦戦し、4-14と出遅れてしまう。そのまま名古屋Dのペースで試合は進んでいくが、第2クォーター中盤メイがファウル3つとなり、外国籍1人となったことで琉球がゴール下を支配し、アレックス・カーク、ジャック・クーリーのツインタワーを軸に加点。残り5分で10点ビハインドだったのを43-41と逆転してハーフタイムを迎える。
第3クォーター、琉球はゴール下を起点に内と外からバランスよく得点。しかし、このクォーターだけで名古屋Dに7つのオフェンスリバウンドを取られ、チームの根幹であるリバウンド争いで劣勢となった。第4クォーター、琉球はディフェンスリバウンドをしっかり取り切ることで流れを引き寄せると、ビッグマンに加え小野寺祥太の3ポイントシュート、脇真大のアタックなどバランスの取れたオフェンスで名古屋Dを振り切った。
今節、琉球は中心選手の1人ケヴェ・アルマを故障で欠く中、初戦の途中に控えガードの平良彰吾が脳震盪で途中退場。さらに今回の岸本の負傷とアクシデント続きだった。それでも勝ちきれたのは司令塔、伊藤達哉の存在が大きい。
今オフ、名古屋Dから加入した伊藤だが、開幕戦でいきなり右肘の靱帯を痛めて戦線離脱。それが7日の試合で待望の復帰を果たすと8分3秒の出場で7得点1アシスト、この試合では岸本の負傷もあって17分30秒のプレーで6得点5アシストを記録する活躍だった。
「今日は、昨日勝利しての2日目ということで名古屋Dが出だしからプレッシャーをかけてくるのは分かってましたが、やられてしまいました。そこから隆一さんが怪我をするハプニングもありましたけど、しっかりカムバックして本当にチーム全員でつかんだ勝利だと思います」
こう試合を総括する伊藤は、自身のプレーについて収穫と課題を語る。「復帰戦にしては上出来だったと思います。まだ、コンディションは良くないので試合をやりながらもっと状態を上げていきたいです。ただ、体が動かなさすぎて、自分的には手だけでディフェンスしているつもりでした。そこは反省する点でもありました」
3年間、切磋琢磨した元チームメイトとの対戦「本当に楽しかったの一言です」
今節、伊藤が復帰することはチームとして予定されていたが、プレータイムについては想定外だった。ただ、平良、岸本とポイントガードが相次いで離脱したことで、特に2試合目は伊藤を約半分の時間で起用せざるを得ない状況に陥った。
伊藤はこう語る。「怪我して2ヶ月間チームから離れていて、(過密日程の影響で)最近はチーム練習ができていない、対人練習にほんのちょっと入っただけでした。最初は1試合2、3分出るところから始めてコンディションを整えていくつもりでしたが、まさかのタイミングで出番が来ました」
「肘の状態は怖さもあったので無理をしないようにしていました。ただ、これだけ怪我人が出てしまったら、自分もしっかりチームの勝利のためにできることはやりたいなと思ってプレーしました。相手が名古屋ということでチームとしても個人としても負けられない試合でした。(コンディションの不安は)気持ちで乗り越えました」
本人はまだまだと感じているが、伊藤はブランクを感じさせないプレーを披露。持ち前のスピードを生かしたドライブを効果的に繰り出すことによる緩急をつけたゲームコントロールで、名古屋Dのディフェンスを翻弄した。
開幕戦での負傷については、「怪我した瞬間は自分でもやばいと思ったので、自分に腹が立ちました。キングスのために戦う気持ちで加入したのに初戦で怪我をしてしまって情けなかったです」と落ち込んだことを明かす。だが、自身の故障によってB3の横浜エクセレンスから期限付き移籍で獲得した平良の奮闘で、復帰に向けたモチベーションをより高めることができたと感謝する。「彰吾がチームに入ってきてくれて彼の頑張りで、ここまで良い成績を残せていると思っています。自分もしっかりやらないといけないと、彼の頑張りを見て改めて思っていました」
対戦相手の名古屋Dは、伊藤にとって昨シーズンまで在籍した古巣だ。今シーズン、名古屋Dが西地区から中地区に移ったことで、レギュラーシーズンで対戦するのは今節のみ。だからこそ、伊藤にとって「名古屋戦は出たい気持ちはもちろんありました」と特別な思いを持っていた。
そして、同じ司令塔としてチームを支えた齋藤拓実とのマッチアップについて聞くと「本当に楽しかったの一言です。昨シーズンまで3年間一緒に切磋琢磨して、地区優勝も達成した仲間だったので、いろいろな感情が込み上げてきました」と笑顔を見せた。
想定外のプレータイムの中、大きなインパクトを与えた伊藤だけに今後、周囲の期待はさらに高まっていくだろう。そんな中でも伊藤は「コンディションはまだ良くないので試合をやりながらもっと状態を上げていきたいです」と冷静だが、これは今節よりもプレーの質がもっと良くなるというポシティブな要素でもある。無理は禁物とはいえ、ここから琉球が週3日での試合が続く過密日程で勝ち星を重ねていくためには伊藤の存在が大きな鍵となっていくる。