「オリンピックに出たチームとして恥じないプレーをしていきたい」
バスケットボール男子日本代表はアジアカップ2025予選Window2のモンゴル戦に93-75で勝利した。
新キャプテンの比江島慎が序盤からオフェンスを牽引し、緊急招集された西田優大が7本の3ポイントシュートを沈めるなど、トム・ホーバスヘッドコーチのスタイルを熟知している選手たちは安定したパフォーマンスを見せた。だが一方で代表経験の乏しいメンバーにとっては厳しい結果に。先発以外のプレータイムは伸びず、ベンチメンバーでは山口颯斗の14分29秒が最長で5人が10分未満に留まった。また、佐々木隆成を除くベンチメンバー全員が出場時の得失点でマイナスとなった。この数字は出ているメンバー構成によっても左右されるためすべてが個人の責任ではないが、それを差し引いても先発とそれ以外のパフォーマンスには差が見られた。
ホーバスヘッドコーチも「新しい選手たちにとって今日はベストゲームではなかった」と言い、彼らの奮起を促した。「これまでの経験だと2度目の合宿は最初の合宿に比べてとても良くなります。選手たちはいろいろなことに慣れていく、そういうものです。今回、多くの選手が初めての合宿でした。FIBAとBリーグではレフリー、フィジカルなどが違い、代表と所属チームのスタイルも違います。代表ではみんながファーストオプションです。練習では素晴らしかったので、グアム戦での彼らの巻き返しを楽しみにしていますし、そうなることに自信を持っています」
富樫勇樹も「初めての選手も良いところが出たシーンはあると思いますが、まだシステムに慣れていない部分は大きく見られたところがあると思う」と振り返る。富樫はゲームメークに徹しつつ要所でプルアップスリーを射抜き、6得点4アシストを記録するなど、日本が目指すスタイルを体現した。
ホーバスバスケを最も知る富樫はこの結果を決してポジティブに受け止めていない。それは現在の日本の立ち位置が以前とは違い、アジアでは追われるべき存在になったからだ。「試合前にトムさんが『自分たちは今アジアNo.1のランクだから自信を持って戦おう』という話もしていました。ランクとしてはそうですけど、最近のアジアの大会で結果を残していけるわけではないので、日本の力を見せる大きな機会になると思います。僕らも仙台での最初の中国戦はまさにあんな感じでした。アジアの代表として、オリンピックに出ているチームとして、恥じないプレーを今後もしていきたいと思います」
富樫が言及した最初の中国戦とは、ホーバスヘッドコーチの初陣となったワールドカップ予選のWindow1を指す。新しいコンセプトを浸透させるには準備期間が足りず、代表経験が乏しい選手も多く、さらに海外組が不在でタレント力も劣っていた日本は63-79、73-106と大敗を喫した。その経験があるからこそ、富樫は今回の低調に終わった選手たちのステップアップを信じている。
「(短い時間で)結果を出すのは難しいですし、もちろん使われ方とか運もありますが、それが実力でもあります。本当に数少ないチャンスをどう勝ち取れるかがすごく大きいので、思いっきり自分の持ち味を出してやってほしいです。これから若い選手の成長していく姿が見れると思うので、大きな一歩だったと」
富樫は「必要とされるなら楽しみたい」という価値観で代表引退を思いとどまり、早速自身が必要であることを証明した。そして、「どうしても次の大会に出たいというより、ちょっと一つ下がって、若い選手に負けないように4年後までプレーできればいいな」と、良い意味で肩の力が抜けた状態でプレーしている。以前から、下からの突き上げを歓迎している富樫だけに、今後も自然体で若手を引き上げていってほしい。