カイリー・アービング

文=神高尚 写真=Getty Images

セルティックスの不安要素はスマートの不在

セルティックスとペイサーズの共通点はベンチメンバーまで含めた層の厚さと、一人ひとりの総合力が高く弱点が少ないこと。その一方でビクター・オラディポをケガで欠いているペイサーズには「強引でも得点するエース」がおらず、カイリー・アービングがいる分だけセルティックスに優位に働きそうです。

実際に11月3日の対戦ではオラディポが残り4秒でジャンプシュートを決めてペイサーズが1点差で勝利し、3月29日の対戦ではアービングが残り1秒でレイアップを決めてセルティックスが2点差で勝利しています。ディフェンスの穴になる選手が少ない両チームの対戦だけに接戦が続き、最後はエースの差が響くことになりそうです。

エースの部分で劣るのであれば、他の部分で上回ればいい。ペイサーズはマイルズ・ターナー、サディアス・ヤング、ドマンタス・サボニスのインサイド陣が、シーズンを通してビッグマンに悩んだセルティックスのインサイドを大きく上回る可能性があります。特にアル・ホーフォードと似たようなタイプのターナーが、高いブロック力とシュート力で攻守に継続した活躍をし、次のスター候補としてステップアップできるかどうかは、今回のプレーオフだけでなく将来にわたってペイサーズの屋台骨を支えられるか試されます。

ここで上手くホーフォードをターナーに集中させることができれば、フィジカルな攻防を厭わないペイサーズの強みが出て、セルティックスの不安要素が目立つことになります。その不安要素とは、ポイントガードながらセンターが相手でも守れてしまうマーカス・スマートがセカンドラウンドまで欠場すること。スイッチでミスマッチを作ることで個人の戦いが増えるのがプレーオフの特徴ですが、苦しそうなマッチアップができた瞬間に、すかさずマークを交代していくスマートの判断力はセルティックスの隠れた強さです。細かい攻防が続くほどにスマートの欠場は効いてくるはずで、タフな戦いを続けることがペイサーズには求められます。

ベンチメンバーの強みを生かしたいペイサーズ

スマートの代役には同じくディフェンスを得意とするエースキラータイプのジェイレン・ブラウンが据えられるでしょうが、最近のブラウンはシックスマンとしてベンチスコアの中心となっており、スターターになることでベンチメンバーのバランスが崩れる危険もあります。ゴードン・ヘイワードやテリー・ロジアーもいるため、策士であるブラッド・スティーブンスがどのようなペイサーズ対策を講じ、選手起用をしてくるのかは楽しみなところです。

一方でペイサーズのネイト・マクミランは選手たちを信じる戦い方を好み、シーズンそのままのバランスを重視してきそうです。オラディポが離脱した際も、シーズン途中に補強したウィスリー・マシューズを代役に据えて、ベンチメンバーの強さを維持しました。サボニスを中心とした絶妙なタイミングの連携プレーがあるベンチメンバーの戦いではセルティックスを大きく上回りそうです。

ただし、プレーオフでは調子の悪い選手に「シュートを打たせる」という作戦も頻繁に登場します。ポイントガードのコーリー・ジョセフは素晴らしいゲームコントロールが持ち味ですが、ここ15試合のフィールドゴール成功率が27%と落ち込んでおり、他の選手へのパスを封じることで連携を遮断し、フリーにしたジョセフに敢えて打たせる戦略を採ってくるかもしれません。層の厚さが売りの両チームだけに、ヘッドコーチの起用法で試合の流れが大きく変わるため、シリーズの中でどのような決断をしてくるかにも注目です。

エースの差でセルティックスが上回りそうなシリーズですが、不安要素が大きいのもセルティックスです。難しい試合が続きそうですが、ペイサーズの悩みはアウェーで勝てないこと。最後はホームコートアドバンテージの差でセルティックスが勝利を手にするのではないでしょうか。