ジェフ・ギブス

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

強みを消されてもなお輝いた、オフェンスリバウンド

栃木ブレックスは、アルバルク東京との東地区上位対決第1戦に87-83で勝利した。ディフェンスを持ち味とする両チームだが、互いにフィールドゴール成功率が50%を超える点の取り合いとなったのは予想外だった。

その中でゲームハイの23得点を挙げたジェフ・ギブスも「アルバルクとは毎回接戦になる」と古巣とのタフな試合に苦笑いを浮かべたが、「第4クォーターに入って、ディフェンスの激しさを取り戻せた結果、勝つことができた」と、ディフェンスでの勝利を強調した。

実力伯仲同士の場合、どちらが相手の強みを消せるかで勝敗が決することが多い。そういった意味では、勝利した栃木は一つの強みを消された。それはオフェンスリバウンドだ。

栃木はリーグトップとなる1試合平均13.1本のオフェンスリバウンドを獲得しているが、昨日の試合では、A東京の徹底したスクリーンアウトの前にリングに近づくことができず、平均を大きく下回る6本に抑えられた。

ギブスも「ポジティブなことではないので、そのトピックには触れたくない」と言葉を濁す。実際、6本という数字は、2月9日のサンロッカーズ渋谷戦と並ぶシーズンワースト。それでも、その試合は今日を超えるフィールドゴール成功率が55%と高く、それだけオフェンスリバウンドに行く機会が少なかった。

数字だけを見ればネガティブな要素だが、前半終了間際にオフェンスリバウンドからゴール下を決め、リバウンド争いでティップしたことでポゼッションを渡さない場面が何度もあるなど、ギブスが要所のオフェンスリバウンドで奮闘したことが勝利を手繰り寄せたとも言える。

それでも、「自分たちはオフェンスリバウンドで知られていて、アドバンテージだと思っている」と、ギブスはリバウンドにプライドを持っているからこそ、この数字には納得がいかなかった。「1本でも2本でも多く取れれば、勝敗に大きくかかわってくる。明日はいつもと同じ2桁くらい取れるように、よりアグレッシブにゴールに飛び込んで、オフェンスリバウンドを取れる機会を増やしたい」と、リベンジを誓った。

ジェフ・ギブス

ギブスの「的が大きい」安心感が試合を締める

残り45秒で比江島慎が決めた、4点差に広げるレイアップが試合の趨勢を決めたのかもしれない。だが、その後のファウルゲームを仕掛けてくる相手に対し、ギブスが4本すべてのフリースローを決めたことは、より直接的な勝因と言える。

安齋竜三ヘッドコーチは、「ジェフは経験もあるし、フリースローの確率も例年高く維持している。昨シーズンはジェフと(田臥)勇太を絡め、今年はナベ(渡邉裕規)がいいのでナベとジェフを絡めている。あとは、的が大きいのが一番」と、ギブスにボールを集めた理由を語った。

パスの出し手にとって「的が大きい」ことは非常に重要な要素である。腕が長く、横幅もありフィジカルが強いギブスにパスを出すことは、安全にボールを受けられる確率が最も高い。

逆に、A東京は比江島に決められた直後のタイムアウト明けのスローインの場面で、リスタートのボールをライアン・ロシターに奪われる重大なミスを犯した。このプレーも勝敗を分けた大きな要因だと考えれば、ギブスが安全にボールを受ける価値の大きさも分かるはずだ。

2点差に迫られたラスト10秒からのファウルゲーム、ギブスはボールを失うことなく4個ものファウルを受け、絶対にやってはいけないターンオーバーを0に抑えた。

ジェフ・ギブス

「メンタル的に緊張することはない」と豪語

さらにギブスは、ファウルゲームになってからの4本すべてのフリースローを沈めている。勝敗を左右しかねない終盤でのフリースローはどんな選手でも緊張するものだし、リードしているからこそ『落とせない』というプレッシャーで平常心を保つのは難しい。それでもギブスは「自分はどんな場面でも緊張しない」と平然と言う。

「ライアンもああいう状況になると、ボールをもらいに来いと言ってくる。チームが自分を信頼してくれるのはうれしいよ」と、ギブスは言う。

『決めて当然』というメンタルで臨むことがフリースローを成功させる秘訣だという。「ボールを受けてファウルをもらえれば、自動的に2点だと思っている。長い間こういう世界で生きているので、メンタル的に緊張することはないんだ」

そんなギブスに「どんな場面でも緊張しないのか」と問えば、プレーヤーから父親へと立場が変われば緊張するのだと、茶目っ気のある答えが返ってきた。「自分のことで緊張することはないけど、息子や娘がソフトボールやバスケの試合で、フリースローを打ったり、打席に立つ時は緊張するよ(笑)」

今日の第2戦も、1ポゼッション差を争う、激闘が繰り広げられることだろう。強靭なメンタルを持つギブスの存在は、接戦になればなるほど際立つに違いない。