琉球ゴールデンキングスは東アジアスーパーリーグ(EASL)がまだ構想段階だった時、日本で最初に参加を申し出たクラブであり、2017年夏の「The Super8」から今に至るまでEASLの大会の盛り上げに貢献してきた。そしてBリーグ初優勝を果たした直後の昨年夏には『沖縄を世界へ』というスローガンを掲げてもいる。琉球がなぜ『世界』を意識するのか、安永淳一GMに話を聞いた。

「参加する意義を発信しながら戦っていく必要がある」

──バスケはグローバルスポーツですが、Bリーグでは国内で勝つことを目指し、国内の市場に目を向けるクラブが大多数の中で、『沖縄を世界へ』と掲げる琉球だけは見ているところが違うと感じます。それはどこから来ていますか?

プロ野球は今でこそ大谷翔平選手のように日本人メジャーリーガーが活躍していますが、私が子供の頃は同じ野球のプロリーグでも日本とアメリカでは全く別物のイメージでした。野茂英雄投手の大活躍で日本人選手のレベルは世界で認められましたが。日本の野球が劇的に変わったわけではなく、それまでにもレベルの高い選手はいて、メジャーリーグでも通用したかもしれないと思っています。ただ日本のリーグの中だけで戦っていたことで、世界と比べることができませんでした。

バスケもBリーグが誕生するまで、その状態がずっと続いていたと思います。八村塁選手がNBAドラフトで指名され、彼のような選手の活躍のおかげで、日本のバスケも世界で少しずつ認められてきました。ファンが「もしかしたら世界と戦えるんじゃないか」と感じた瞬間から、大衆に向けてすごく受け入れられたと思います。日本のバスケのレベルは急速に上がっていますが、やはり選手が世界に出て活躍することは一つの指標になります。そこに自分たちも加わりたかった、という気持ちがまずはありました。

──それがEASLへの意欲的な取り組み方に繋がるわけですね。

EASLも年々、運営と競技の両方でレベルが上がっていますし、参加するクラブの意気込みもどんどん強くなっています。台湾のニュータイペイキングスは元NBAスターのジェレミー・リンを連れてきて本気で勝とうとする勢いを感じます。フィリピンのチームはEASLのためのロスターを組んでいます。日本はまだそこまでできていませんが、我々も参加する意義を発信しながら戦っていく必要があると思っています。

今はBリーグの国内の人気だけが走っていますが、それだけでは井の中の蛙になってしまう。Bリーグがこれだけ素晴らしいものになったのだから、世界に伝えることが必要で、それを琉球ゴールデンキングスが担うのは名誉なことです。

「国際大会でしっかりと戦えるチームでありたい」

──安永GMの中では、EASLがBリーグと同じぐらい重要なものだと位置付けられているようですね。

B.LEAGUE FINALSに出ないとEASLには行けませんから、昨シーズンもファイナルに進出した時には、その喜びとともに「EASLの権利を手に入れた!」という喜びがありました。その喜びをファンの皆さんにも分かっていただける時代がだんだん近づいていると思います。

──100万ドル(約1億5000万円)というEASLの優勝賞金は魅力的ですか?

日本のクラブが得られる賞金として一番大きいのは間違いありませんが、賞金のためにやっているわけではありません。あくまでも私たちは他国のリーグを代表するクラブに勝つために戦い、自分たちがどこにいるかをしっかり示したいです。

思い出すのはキングスの1年目ですね。18年前にチームができて、『しっかり戦えばお客様が喜んでくれる』と思っていたら全然勝てませんでした。『明確にNo.1になる』と意識して動かなければ絶対に勝てないんだとそこで学んでから、今までやってきました。アジアのNo.1も『なれたらいいな』では絶対に届きません。私たちはアジアで一番になりたい。それは強いから一番なのか、お客様が多いから一番なのか、良いアリーナがあるから一番なのか、いろんな見方がありますが、そのすべてでNo.1になりたいです。アジアのバスケファンが日本のバスケを語る際に必ずキングスの名前が出てくるためにも、No.1になることは大切だと思っています。

──キングスの選手たちのEASLへの意識はどう見ていますか?

選手との契約は基本的にBリーグのリーグ戦とチャンピオンシップを戦うためのもので、EASLを戦う前提ではありませんでした。でもヨーロッパでは選手契約にユーロリーグの報酬が盛り込まれていて、賞金が出た時の配分も決まっています。私たちもこれだけ海外で試合をするようになって、そこにプレーする意義を持たせられるように選手と話をして、契約書を交わすようになりました。日程が詰まっているのは体力的には大変ですが、じゃあ暇でいいのか、稼げなくていいのか、と言えば忙しく稼ぐ方が良いですよね。これまで国際大会について後手に回っていたところはありましたが、今では選手はみんな「やってみたい」と思ってくれていますし、今はボランティアではなくしっかり仕事として戦えるようにしています。

──選手にとってもEASLで世界に挑戦できるのはモチベーションになっているようですね。

昔も今も日本人の選手は海外がすごいと思っていて、海外挑戦したいと言います。ですが、私は選手たちに「日本も実はすごいんだ」と感じてもらいたい。海外に出て苦労を乗り越えて大成功する選手もいますが、その逆で海外でどことも契約できずに日本に戻って来る選手もいます。選手のためを思うと、日本のクラブにいながら海外のチームと戦って世界を肌で感じることがすごく大切ですから、そのためにもキングスは国際大会でしっかりと戦えるチームでありたいと思っています。