文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

足を使ったディフェンスでトヨタの攻め手を封じる

Wリーグのプレーオフ・ファイナル第3戦。ここまでトヨタ自動車アンテロープスの粘りに遭いながらも、第1戦を84-53、第2戦を74-63で勝利したJX-ENEOSサンフラワーズが、この試合では相手の時間帯を作らせず75-51と大勝。レギュラーシーズンからファイナルまで全試合に勝利する『完全優勝』を果たした。

立ち上がり、吉田亜沙美、岡本彩也花、間宮佑圭と立て続けにJX-ENEOSが得点。開始3分足らずで7-0とし、トヨタに最初のタイムアウトを使わせた。この第1クォーターは17-5というスコア以上にJX-ENEOSが圧倒。足を使ったディフェンスでどんな揺さぶりにも対応してズレを作らせず、トヨタ得意の3ポイントシュートを決してフリーで打たせない。そしてリバウンドを確保しては速攻に転じた。

トヨタは6本の3ポイントシュートがすべて外れ、フィールドゴール率13.3%と散々。逆にJX-ENEOSは47.1%とイージーシュートのチャンスを作り出し得点を重ねていった。

第2クォーターは馬伊娜と森ムチャのインサイドが踏ん張ったことにより、JX-ENEOSのリバウンドでの優位性は薄れたものの、足を使った激しいディフェンスは継続。宮澤夕貴のシュートが当たり始め、ベンチスタートの宮崎早織も2本の3ポイントシュートを決めて38-19とダブルスコアで前半を折り返した。

修正力でトヨタを上回り、試合を重ねるごとに盤石に

ここまで順調すぎるほど順調だったJX-ENEOSだが、ここでアクシデントに見舞われる。第3クォーター残り8分半のところで、栗原三佳とスクリーンプレーの際に衝突した渡嘉敷来夢が側頭部を強打。脳震盪で動けなくなってしまい、結局この後はコートに戻ることができなかった。

高さと強さでゴール下の『番人』としての役割を果たしていた渡嘉敷は、後半開始早々に早くも10リバウンドを記録しており、その離脱は大きな穴になるかと思われた。ところが代わって入った石原愛子がリバウンドに得点にと大活躍。さらには3番にコンバートされた宮澤が4番に戻ってプレーしたこともあって渡嘉敷の穴を埋め、トヨタに付け入る隙を与えなかった。

第1戦と第2戦では、敗れはしたものの果敢な戦いぶりで自分たちの時間帯を作ったトヨタだったが、試合のたびにアジャストしてくるJX-ENEOSを相手に持ち味を発揮できない。第3クォーター終盤には56-23と33点もの大差が付いた。

それでもトヨタはあきらめない。第4クォーターに入り、大神雄子がギャンブル的に放つ3ポイントシュートを次々と沈め、11-0のランで差を詰める。だが、第4クォーター開始時点で28点という差は大きすぎた。JX-ENEOSは司令塔の吉田が、体力的な限界を強靭なメンタルで抑え込みつつゲームをコントロール。残り2分半、69-44と25点差として勝利を決定付けた。

MVPの吉田「『もっともっと』の気持ちを忘れずに」

『女王』JX-ENEOSをさらに一段階強いチームへと引き上げたヘッドコーチのトム・ホーバスは「選手たちは本当に良くやってくれました」と感謝を述べた。そのホーバスは女子日本代表監督への転身が決まっており、今日がJX-ENEOSを率いる最後となった。

ファイナルMVPに輝いたのは吉田亜沙美。「今日は熱い気持ちで、出だしからJX-ENEOSのバスケットができました」と語る。「ディフェンスもしっかり我慢して、ローテーションだったりリバウンドから走るというバスケットをファイナルの舞台でやれたことをうれしく思います。結果的に9連覇となりましたが、トムのバスケットを全員でコートで表現できたことがうれしいです」と、シーズン最後のパフォーマンスを振り返った。

『完全優勝』のシーズンを締めくくった試合を吉田はこう語る。「今日はすごく良いゲームができましたが、トムのことなので『もっともっとできる』と言うはずです。なので、この『もっともっと』の気持ちを忘れずに、これからも成長していきたいと思います」