「勝ち方を学ぶ前に負けることを防ぐことを習得しなければならない」
昨オフ、シーホース三河のヘッドコーチ人事には多くの人が驚いた。これまで全くクラブに関わりのなかったライアン・リッチマンが新たにヘッドコーチに就任したからだ。前年まで2シーズン続けて僅差でチャンピオンシップ(以下、CS)進出を逃していたチームを、どのように立て直すか注目が集まったが、36勝24敗で中地区2位となり見事CSへの出場を果たした。CSクォーターファイナルで敗退となったものの、古豪復活のイメージを植え付けた。初めて日本で指揮を執ったリッチマンヘッドコーチに昨シーズンとこれからへの思いを聞いた。
——結果には満足していないと思いますが、初めて日本で指揮を執った昨シーズンは手応えを感じたと想像します。リッチマンヘッドコーチにとって、どのようなシーズンでしたか?
チームが生まれ変わり、1年目という意味では本当に素晴らしいシーズンになりました。私にとっては本当にすべてが新しいものでした。例えば、スケジュールやプログラムをどのように組み立てていくのか、日々チームをどうやって動かしていくのか。試行錯誤はありましたが、選手たちが信じてくれて、美しいシーズンを過ごせました。
——成長やカイゼンをテーマに掲げていましたが、その評価も聞かせてください。
バスケットボールの観点ですと、ターンオーバーとファウルの数が大きく減っていきました。シーズンを通じて勝っていくためには、勝ち方を学ぶ前に負けることを防ぐことを習得しなければなりません。自分たちで自分たちを敗戦に追い込んでしまうようなことは可能な限り防ぐ必要があります。やはりベストなチーム、強いチームはそういったことがありません。もし相手に負かされて負けたのであればいいのですが、自滅をしてはいけません。そこが大きな成長とカイゼンになりました。
——CSクォーターファイナルで敗退しました。あと何が必要だった考えますか。
競争力の高い規律性がもう少し必要だと思いました。自分たちは毎試合ハードにプレーをしましたが、チャンピオンまであと6試合足りませんでした。競争力を持たせることで、私たちはチームとしてさらに大きな力を得ることができます。
——リッチマンヘッドコーチ自身は、日本で初めてコーチをしてみて新しい気づきはありましたか?
多くのことがありましたが、1つ挙げるとしたら、FIBAルールとNBAルールは本当に大きく違うというところです。ルールブックを読んで理解をすることはもちろんできますが、実際に試合をいくつかやっていく中で理解が深まっていくのが大きな気づきでした。今シーズンは、その経験を経て新しくいろんなことを導入できると考えています。それが選手の特性と融合しますので、どのような成果を挙げるか非常にワクワクしています。
「今シーズンのロスターは、とてもハッピーに感じている」
——Bリーグ2シーズン目を迎えます。昨シーズンの始まる前と気持ちの違いがあると思いますが、いかがですか?
まず1つは自分の家族を含めて国を渡る大きな引っ越しがないので落ち着いており、精神面での違いがあります。もう1つは、昨シーズンを経験したことで、よりベターにヘッドコーチとしてやっていく準備ができることです。継続選手が多くいますので、積み上げて一貫性を持てる部分がたくさんあり、1年前とは大きな違いを感じています。
——継続路線で昨シーズンやってきたことへの自信の現れが感じられます。今シーズンのロスター編成は、どの程度ヘッドコーチの意見が反映されましたか?
フロントスタッフは自分の意見を聞いてくれて、とても良い仕事をしてくれました。特に須田侑太郎選手は大きな加入メンバーとなりました。素晴らしいリーダーシップを持っていて、私たちのスタイルにフィットしています。そしてモッチ ラミン選手もビッグマンの帰化選手として、とても大きな新規加入選手です。非常に身体が強く、背も高いのでハードワークしてくれています。また、元澤誠選手や平寿哉選手のように成長過程にいる若い選手が加入してきてくれたことも非常に良い効果になっています。チームとして彼らが成長できるように助けていけたらと思っています。今回の編成に対して、自分はとてもハッピーに感じています。
——継続路線の中でも、シーズン序盤からシェーファー アヴィ幸樹選手がいることや、モッチ選手の加入により、ジェイク・レイマン選手が3番起用される時間が増えるなど、さらに戦術の幅が広がるのではないでしょうか。
良い意味で大きく変わる部分もあります。まず私が1年間でこのリーグを非常に学びました。その中でもジェイクを3番として使えることは本当に価値が高いです。アヴィも昨シーズン後半から復帰してくれて本当に良かったですが、やはり彼にとってもチームにとっても難しいシチュエーションでした。ただ、今オフは彼が最初からいるので、どんどん積み上げていけて大きな違いが生み出せます。コーチとしてどのように違いを加えられるか、さらに生かしていけるかは楽しみなポイントです。それでも、自分たちはチームのすべてを変える訳ではありません。やるべきことをやって、昨シーズンよりも強化をしていきたいという考えです。
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