「彼にとってスタッツを巡る議論は雑音なんだ」
現地7月31日に行われたセルビアvsプエルトリコ、ニコラ・ヨキッチは相手ディフェンスを意にも介さなかった、試合開始から1分とたたないうちにリバウンドをアシストを記録し、次の1本でもリバウンドとアシストを記録。その15秒後にはそれぞれ3つ目のリバウンドとアシストを記録した。
その後も自分のシュートが外れれば自らリバウンドを取り、相手のシュートが外れればボールの落下点が最初から分かっているかのように腕を伸ばしてボールをつかむ。第1クォーターだけで8リバウンド4アシスト。シュートタッチは必ずしも良くなかったが、それでも誰が試合を支配しているのかは明らかだった。
プエルトリコはヨキッチをファウルで止めるが、期待していたほどリズムが崩せたわけではなかった。フリースローで得点を重ねるうちにシュートタッチが良くなると、ヨキッチは攻守両面でいよいよ手が付けられなくなった。
第3クォーター残り2分、ディフェンスリバウンドを易々と押さえたヨキッチは、すぐさまコートを縦断するタッチダウンパスを送る。受け取ったニコラ・ヨビッチはスピンムーブでディフェンスをかわしてレイアップに持ち込んだが、わずかに精度が狂ってボールはリムに弾かれた。
この時点で28点差と勝敗はほぼ決していたが、それでもプエルトリコはプライドを懸けて攻守に強度の高いプレーを続けていた。その当たりを受けるヨキッチは次第に消耗していたし、不測のアクシデントも考えられたため、第3クォーター残り30秒で彼はベンチに下がることに。最後のプレーはボグダン・ボグダノビッチとの息の合ったピック&ロールから決めたレイアップで、彼にとって14点目の得点だった。
大量リードをキープする試合展開で第4クォーターにヨキッチの出番はなく、セルビアがそのまま107-66で勝利。ヨキッチは17得点15リバウンド9アシストを記録している。
タッチダウンパスを受けたヨビッチがレイアップを決めていればトリプル・ダブル達成となっていた。それを聞いたヨキッチは「パスを受けた後にドリブルしたからアシストは付かないんじゃないかな」とショックを受けた様子は微塵もなく、「なるようになっただけさ」と答えた。
ボグダノビッチは「ニコラを戻せとファンが叫ぶ声は聞こえていたよ。でも、彼にとってトリプル・ダブルは珍しいことじゃないし、ここで記録を作ることで何かを証明する必要があるわけじゃない。彼にとってスタッツを巡る議論は雑音なんだ」と語り、ヨキッチの控えセンターを務めるニコラ・ミルティノフは「いまさらヨキッチがトリプル・ダブルを記録しても、別に何も目新しいことじゃない」と笑い飛ばした。
大会初戦ではアメリカに完敗を喫したものの、セルビアは昨年のワールドカップ準優勝チームにヨキッチという絶対的なタレントを加え、チームは非常に良い雰囲気にある。ボグダノビッチもミルティノフも「ヨキッチが来てくれてうれしい」と口を揃える。彼らは試合ごとに連携を高め、ヨキッチの強みをさらに引き出していくだろう。決勝トーナメントでアメリカと再び対戦することがあれば、初戦とは違うバスケを展開できるはずだ。