ミケル・ブリッジズ

「シボドーにまつわる笑い話は全部知っている(笑)」

ミケル・ブリッジズは2018年6月にニックスの一員となる予定だった。ニックスは1巡目9位で彼を指名する方針で、ブリッジズもMSG(マディソン・スクエア・ガーデン)でのプレーを夢見ていた。しかし、ニックスはドラフト直前のワークアウトで素晴らしいプレーを見せたケビン・ノックスに心変わりをする。ノックスはルーキーシーズンこそ活躍したが、その後は失速していった。それとは対照的に、1巡目10位でセブンティシクサーズに指名されてすぐサンズに移ったブリッジズは、サンズの貴重なロールプレーヤーとして年々成長していった。

「ようやくニックスの一員になることができた。やっとMSGでプレーできる。気分は最高だよ」と、ブリッジズは入団会見で晴れやかな笑顔を見せた。「まだ夏が始まったばかりで、プレーするまでまだ長く待たなきゃいけないのが嫌だよ」

トレードの知らせを聞いたのは、デズモンド・ベインが所有するテキサスの別荘だった。ネッツのショーン・マークスGMからはニックス移籍が「あと一歩で決まる」と聞いていたから気持ちの準備はできていた。SNSで速報が出ているのに気付いたベインが「おい、見たか?」と叫んだ時点で、ブリッジズは何が起きたか理解したという。次の瞬間から彼のスマホは鳴りっぱなし。ほどなくしてニックスのビラノバ大トリオからも連絡があったという。

ニックスはジェイレン・ブランソン、ジョシュ・ハート、ドンテ・ディビンチェンゾのビラノバ大トリオを軸に50勝を挙げ、プレーオフでも健闘した。チームはいまだ伸びしろを残しており、ニックスのファンは長い低迷を抜け出した高揚感でいっぱいだ。ブリッジズが加わって『ビラノバ大カルテット』が誕生したニックスは、王者セルティックスの対抗馬の一番手となる。

サンズでの彼はリーグで最も優れた『3&D』としての評価を勝ち取った。ケビン・デュラントとのトレードに巻き込まれる形でネッツに移籍し、勝てないチームで1年半を過ごしたが、ロールプレーヤーからエースへと役割を変える重責を経験したことで大きく成長できた。「多くを学ぶことができたよ。物事が上手く進まない時でも、動揺したり自信を失ったりするんじゃなく、失敗から学ぶんだ」

ネッツでエースの役割を経験したことで、ニックスでの彼はブランソンと並び立つことも、ブランソンが休んでいる間にエースの役割を肩代わりすることもできる。OG・アヌノビーと彼のディフェンス力は強烈なものとなるだろう。

「王者セルティックスにどう対抗する?」との質問に「まだ早いよ」とブリッジズは答えた。「まだ僕がここに来てから40分ぐらいで、知らないことだらけだ(笑)。チームとして何をすべきか、それは日々積み重ねていくものだ」

ニックスへの順応には何一つ心配していない。「僕は環境に適応するのが得意なんだ。自分らしくプレーするだけで大丈夫。それにシボドーにまつわる笑い話は全部知っているよ。多分、僕は上手くやれる」とブリッジズは楽しそうに笑う。

ニックスの指揮官トム・シボドーは主力と決めた選手を絶対的に信頼し、プレータイムが過剰に長くなっても気にしない。ジョシュ・ハートは昨シーズンのプレーオフで48分フル出場を3度経験し、他の選手も酷使され続けたが、それに耐える気力と体力がニックスのタフなバスケのベースとなっている。

ブリッジズもリーグ屈指の『鉄人』だ。キャリアを通じて欠場がほとんどなく、直近の3シーズンで総プレー時間はリーグ1位、1位、4位。一昨シーズンに至っては、シーズン途中の移籍を経験しても休みなく試合に出続けた結果、サンズで56試合、ネッツで27試合に出場し、レギュラーシーズン82試合を上回る83試合に出場する『珍記録』を打ち立てている。

「これは僕に限らずみんな同じ考えだろうけど、選手であれば可能な限りコートに立ってプレーしていたいと思うものだ。シボドーがどういうコーチで、どういうバスケをするか。それは僕が経験してきたバスケに近しいと思っている」

晴れてニックスの一員となったブリッジズは、意気揚々と新たな挑戦をスタートさせる。