ライアン・ロシター

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

出だしから猛攻の栃木、持ちこたえて反撃するSR渋谷

水曜ナイトゲームのサンロッカーズ渋谷vs栃木ブレックス。両チームともにチームカラーが黄色とあって、真っ黄色に染まった青山学院記念館で熱戦が繰り広げられた。

リーグ全体勝率1位を狙う栃木は、出だしから素晴らしいバスケットを展開する。ピック&ロールからのドライブでSR渋谷のディフェンスを揺さぶり、激しく仕掛けながらも逆サイドでフリーになった選手を見逃さずにパスを送る、人とボールが連動するオフェンスが機能。第1クォーターを27-13と圧倒した。フィールドゴール成功率は実に70.6%(17本中12本成功)で、さらに10アシストを記録。シュートタッチの良さよりも、決めるべきチャンスを数多く作ったという点で特筆すべき猛攻だった。

逆にSR渋谷は最初の10分間で4ターンオーバー。栃木のプレッシャーディフェンスを崩せなかったが、第2クォーターを20-10と持ち直した。伊佐勉ヘッドコーチは反撃のきっかけをこう明かす。「バスケットをシンプルにしよう、ペイントアタックを意識的にやっていこう、自信を持ってシュートを打とう、と話しました。それを選手たちが遂行してディフェンスの足が動くようになり、栃木さんのオフェンスにがっぷり四つで守れるようになりました」

こうして第2クォーター、栃木のフィールドゴール成功率は20%(15本中3本成功)まで落ち、4つのターンオーバーからSR渋谷が逆襲に転じて、33-37とほぼ互角で前半を折り返した。

ロバート・サクレ

前節の連勝で勢いに乗るSR渋谷、栃木に肉薄

後半も栃木が再びリードを得るも、SR渋谷が粘り強く点差を詰めていく展開が続く。第4クォーター残る6分40秒にロバート・サクレがダンクを決めて57-66と1桁差とした後、しばらくスコアが止まる。1分半の停滞を破ったのはSR渋谷だ。リバウンドから走ったベンドラメ礼生がそのままレイアップに持ち込むも決まらず、それでもケリーがプットバックダンクで押し込んだ。

じわじわとSR渋谷に押し返される栃木だったが、残り3分半でビッグプレーが飛び出す。比江島慎とライアン・ロシターのピック&ロールを広瀬健太に狙われて速攻を浴びた場面、ハリーバックした鵤誠司が広瀬の背後からボールを奪って逆速攻へ転じる。右コーナーで完全にフリーになった渡邉裕規が、粘るSR渋谷にトドメを刺すかのような3ポイントシュートを決めた。

ところが、ここで栃木は失速してしまう。気持ちの面で油断があったかどうかは別として、スタミナ切れを起こしていたのは事実で、ここからの2分あまりはディフェンスの激しさが影を潜め、リバウンドを1本も取れず。オフェンスも第1クォーターの連動性が消えて個人で攻めては逆襲を浴びた。安齋竜三ヘッドコーチが「自分たちのアグレッシブなディフェンスを40分間続ける、そのためのタイムマネジメントを僕がもっとしっかりやって継続できるようにすれば、そういうことは起こらない」と反省する終盤の失速だった。

74-72と追い詰められた栃木だが、タイムアウトを取った後のラスト1分では本来のプレーを取り戻していた。オフェンスリバウンドを拾ったジェフ・ギブスの得点で相手のランを止めると、直後のディフェンスではロシターがケリーのドライブに食らい付いてブロックショットを決める。ここから走った比江島がバスケット・カウントをもぎ取って、今度こそ試合を決めた。ファウルゲームを乗り切った栃木が最終スコア83-77で勝利を収めている。

遠藤祐亮

ラスト1分の勝負どころ、あらためて示した勝負強さ

40分間の中で両チームとも浮き沈みを繰り返す激戦となったが、ラスト1分で栃木が見せた勝負強さは、このチームの実力をあらためて示すものだった。ただ、安齋ヘッドコーチは「最後のああいう局面でディフェンスが崩れなかったのは、今シーズンにウチが勝っている要因ですが、そこに至るまでにちゃんとやっていれば、ちゃんと勝てたゲームです」と総括する。

「完璧な試合はないので難しいですけど、なぜそうなっているかを一人ひとりが考えないと、同じことを繰り返してしまう」と、すぐ迎えることになる週末の試合に向けて気を引き締めた。

SR渋谷の伊佐ヘッドコーチは「ゲームをクロージングする集中力は今の栃木さんとの差」と悔しい敗戦を受け入れながらも、「カムバックできたのはチームとして力がついているサイン。あとはどうやって勝ちに繋げるか」と、こちらは栃木相手に最後まで食い下がったパフォーマンスを残り試合に生かしたいと意気込んだ。

今週末、栃木はホームに戻って京都ハンナリーズと、SR渋谷は敵地で名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦する。