株式会社ティーアンドエスは日本最大級のバスケメディア『BASKET COUNT』を立ち上げるなどバスケ界の発展に寄与し、現在もバスケ界との関わりは深い。昨年末には、福岡県を拠点にバスケットボールの技術や戦術を高いレベルで学ぶことができるプログラムを提供する『WATCH&C ACADEMY』へのスポンサードを開始した。『WATCH&C ACADEMY』はbjリーグ時代に2度のベスト5を受賞したことでも知られる青木康平を中心に、高いレベルでバスケに携わってきたコーチ陣を擁するスクールだ。今回、株式会社ティーアンドエスは『WATCH&C ACADEMY』に公式ユニフォームを提供したが、代表取締役の稲葉繁樹は子供たちが『プロフェッショナリズム』に早い時期から触れることなど様々な思いを込めてユニフォームを送った。そしてスポーツを通じた地元への協賛の意義や、クラブのチームの今後など、青木と対談を行った。
青木「練習試合のほとんどをユニフォームでやっています」
――今回、『WATCH&C ACADEMY(W&C)』に公式ユニフォームを送りましたが、その背景や狙いなどを教えてください。
稲葉 ある意味、『プロバスケっぽさ』を体験をさせているのがW&Cです。青木君と話し合って、そのプロ体験について考えた時、 ユニフォームにスポンサーがついているということを示し、プロ意識を持たせることが狙いです。
青木 練習試合も基本的にリバーシブルを使っているんですが、子供たちの方からユニフォームが着たいという声が挙がっていて、今回ユニフォームを支給してもらいました。実際に4月に大阪遠征に行った時も誰もリバーシブルを着ずにユニフォームを着ていましたね。彼らはユニフォームに袖を通すだけで、すごくモチベーションも上がりましたし、とにかく今は練習試合のほとんどをユニフォームでやっています。
稲葉 やっぱり公式ユニフォームってテンション上がるよね。ユニフォームを着て練習したいという話があって、チームのアイデンティティが一つ上がったのであればよかったです。バスケの実力が高いのであれば、トップの生徒たちにはユニフォームが与えられる。実力があれば試合に出れるだけじゃなくユニフォームが授けられるという構図はプロ感の向上に繋がるし、素敵な話じゃないかと。
青木 スポンサードをしてもらったダンサー(CONDENSE)の方たちと一緒に稲葉さんが福岡に来て、協賛する意味について子供たちに話してもらったことがありました。いろんな人たちからサポートしてもらっていることを理解するのは一種のプロ体験ですし、それが子供の段階でできているのは大きいです。
――ユニフォームのスポンサーの意味を真に理解する子供は少ないと思います。
青木 確かに感謝という意味を現在の段階で分かっている子は少ないと思います。ただ、今は自分たちを支えてくれていた人がいるという体験をしている段階です。彼らが大人になった時に、もしかしたら逆にスポンサーをするような立場になったり、誰かを応援して支える側に なる可能性もあるので、それに少し期待しています。
また双方向の感謝と言う意味では、以前に『CONDENSE』の方が現場でダンスを踊ってくれたんですが、生徒が僕のところに来て、「あの人たち本当にすごい人たちなんですね」と言ってきたので、「すごい人たちからサポートしてもらっているんだよ」と伝えました。みんな感動して、インスタでフォローするようになりましたね。
稲葉 もちろん、いきなり選手が大人になるような劇的な効果が出るとは思っていないけど、青木君が言った大人になってからの効果は正直期待しています。子供たちがプロフェッショナリズムに触れる機会を創出する、企業としてそこに協力することは社会的意義のあることだと思っています。
「やっぱり青木君のところは教育現場と一緒」
――現在は部活バスケだけでなくクラブチームも増えてきて、子供たちが様々な環境を選べる時代になりましたが、今後の展望をどのように考えていますか。
稲葉 まず、教育現場が忙しすぎる問題があって、部活動の先生を外から雇う時代になってきました。ただ、青木君曰く、元プロなど第一線の人が部活を教えるイメージは持てない状況だと。その中で小学校、中学校世代のプライベートクラブのニーズが高まり、福岡は特にそのプライベートクラブが増えて、そこで鍛えて強豪校に進学させる流れがあります。W&Cは先駆けてスクールを始めて、スキル向上だけでなく生徒たちの『心の自立』を求めている点が好印象で、バスケットボールを通じて、社会に貢献するような人材育成を続けてほしいですね。
青木 僕も子供たちの基準は変えたいと思っています。僕が現役の頃はプロのチームや選手がいなかったので、トップ選手の基準が分からなかった。だから、何をどこまで目指せばいいのか具体的なモノも見つからず、ただマイケルジョーダンに憧れたみたいな感じでした。実際に自分がプロになり、トップ選手と携わっていく中でプロとはなんぞやみたいなところを知り、僕らが喋れる環境にいるので、そういった基準を子供たちには上げてもらいたいというのはあります。
1番上を目指した方が自分の可能性を広げることになり、その中で「ここまでやらないと絶対に届かない」と僕らは言えます。プロ選手を呼んで実際に指導したり、その具体的なアプローチは他のクラブとは違う部分ですね。
――小学校の運動会では順位をつけない風潮ですが、1番上を目指すことが大事ということでしょうか。
青木 いえ、そういうことではないです。僕らは1番上が分かっているので、それを見せつつ、自分がどこまでを目指すかを生徒たちに設定してもらうということです。上を目指す子もいれば、県大会を目標にする子もいます。そのそれぞれの目標に合わせてバスケット面や私生活の面でも、やらなきゃいけないことを提示していくイメージです。なので、絶対に1番を取らなきゃいけないという意味ではないですね。
ただ、稲葉さんが言うように社会は競争という面もあり、目指したい場所には必ず競争が生まれます。その戦いに勝つための手段を教えますし、そこの苦しみやマインドセットも僕たちは伝えることができます。こうした内容はバスケットボールを通じて、社会に出た時にも絶対通じると思っています。
稲葉 Bリーグのユースチームとかではなく、W&Cにスポンサーするのは何でって聞かれたこともあるけど、そのまま上に上がっていくような前提の組織構造になっているのが気になったのと、W&Cは単純にバスケだけうまくなればいいわけじゃなく、こういう教育の観点が備わっているのが一番の理由なんだよね。そこに社会投資することに意味があると考えるし、そういう地域企業が増えていくと、結果的に地域が元気に明るくなっていくと確信を持っています。
ユースチームだったら子供たちだけで完結して問題にならないと思うけど、やっぱり青木君のところは教育現場と一緒なんだよね。スポーツであり、教育。そういう意味ではプロスポーツにスポンサーすることも素晴らしいと思っているけど、もっとこうした地元の小さいところに、いろんな企業がスポンサーしてもいいんじゃないかなって。どう感じて、どう成長するかは子供たち次第だけど、良い環境を与えてあげたいですね。
青木 環境で言うと、中学校までに勝ちだけにこだわって詰め込まれて、高校ではもうバスケしませんっていう子供たちがたくさんいます。僕はそれが1番悪だと思っているので、生徒たちがバスケットをもっと学びたいと言って高校に送り出したいです。今回ユニフォームをいただいてモチベーションが上がったように、子供たちが幸せな状態でバスケに取り組むことができ、可能性を最大限にすることが僕のミッションです。