神奈川大

神奈川県平塚市のミニバスチームと交流

6月15日、神奈川大学男子バスケットボール部OB有志が主催する『Happiness Ball 』が平塚市立旭小学校で開催された。能登半島地震復興支援のチャリティクリニックとして催されたこのイベントには、アルバルク東京の小酒部泰暉、長崎ヴェルカの小針幸也、金沢武士団の東野恒紀ら、プロとなった神奈川県出身のOBも参加。平塚旭ミニバスケットボールクラブに所属する約40名の小学生とともに、3時間ほどの時間を過ごした。

イベントは神奈川大の元学生コーチで、現在は小学生年代のコーチとして活動する野崎秀平さんの主導で進行。低学年と高学年に分かれてクリニックを行い、交流タイムをはさんで紅白戦を実施。最後は小学生たちの大声援を受けながらOBたちがエキシビションゲームを行った。

小酒部泰暉

小酒部「がむしゃらさを見つめ直したいと思えた」

チャンピオンシップの激闘を終え、バスケットボールと距離を置いたオフを過ごしているという小酒部は、「1カ月ぶりくらいにバスケしました」と苦笑し、「小学生とこれだけ長く接することが今まであまりなかったので、すごく新鮮な感じです」とイベントを振り返った。

『無名の原石』として大学界を席巻し、神奈川大3年次の冬に飛び級でA東京とプロ契約。以来クラブ生え抜きプレーヤーとして着々と成長している小酒部だが、在籍5年を数え、良くも悪くも『プロ』という特異な環境に慣れる時期に差し掛かってきている。

そのような中、先輩にあたる野崎さんの依頼で参加した今回のイベントで、小酒部はいくつかの気づきを得たようだ。

「アルバルクでは在籍期間が長い部類になって(来シーズンで6季目)、中堅のような立ち位置になってきました。そういった意味でもこれからはコミュニケーション力も向上させていかないといけないな、と思っていたので、今回子どもたちと接してすごく勉強になりました。子どもたちは純粋で、吸収する力がすごく高くて、がむしゃら。そういうところを自分自身も取り戻したいというか、もっと見つめ直せていけたらいいなとも思いました」

クリニックに携わるのはほぼ初めて。多少おっかなびっくりしながら選手たちに接している様子も感じられたが、ディフェンスのスタンスを修正したり、上背の大きな選手には少し高い強度で守ったりと、持ち味を生かして指導した。自身の故郷である神奈川県山北町からもさほど遠くない平塚の子どもたちに「自分自身が魅力的なプレーヤーに見えたか正直わからないけど、プレーを見て何か吸収してもらえたらうれしい」と語った。

「バスケを楽しむってことが1番大事だって、今になってもやっぱり思います。楽しいという思いがバスケを続ける原動力にもなりますし、成長する過程にもなると思うので、エキシビションマッチではそういうところを吸収してほしいなと思いながらプレーしました。大学のメンバーとプレーするのは大学3年生以来でしたが、楽しかったですね」

東野恒紀

出色の存在感を見せた東野が能登半島地震で得た気づき

「若手にとってはすごく大事な時期なので」と、トレーニング三昧のオフを過ごしていると話した小針は、横浜の強豪ミニバスケットボールチームでプレーした小学生時代を振り返り、「自分が小学生の時はプロから教えてもらえることはなかったので、プロや引退したプロからバスケを教えてもらえる機会が増えることは、子どもたちにとってすごくいいことだ思います」と話した。

「最近はYouTubeやSNSでバスケットの情報や知識は得やすくなりましたけど、第一線で長くバスケットを続けてきた選手の言葉や、直接教えてもらう体験はすごい貴重で思い出に残るものだと思います。イベント前に秀平さんから『良い影響をしっかり与えてほしい』と言われたので、それを意識して、とりあえずポジティブな言葉をたくさんかけてます。特に僕が担当した低学年代はシンプルにリングにボールが入る感覚を味わうだけでも楽しいと思うので、その楽しさをしっかり教えようと思っていました」

ちなみに、参加した3人のプロ選手の中で最も子どもたちの心をつかんだのが、小針の同期で、現在はB3金沢でプレーする東野だ。高学年のメインコーチを担当した東野は、2022-23シーズンにベルテックス静岡でスクールコーチを兼任した経験をもとに、「フィジカルコンタクトに慣れる」というテーマで練習メニューを組み、スムーズにクリニックを進行していった。

東野は年明けに、金沢が拠点を構える石川・七尾市で能登半島地震を経験。がれきの撤去や、子どもたちのためのクリニックなどの支援活動に参加した経験を持っている。中断期間を経てチーム活動を再開した際は「本当にバスケットをしていいのだろうか」と葛藤したが、大変な日々を送っている地元の人々たちに逆に励まされたと話した。

「『君たちはバスケットで勇気を与えてほしい』と言われて、地元の愛と優しさ感じられたのはとても大きかったです。だからこそ僕は子どもたちにも、お客さんにも、ファンの方にも、誰に対しても温かく接したいし、これから自分がどういうキャリアを歩んだとしてもその気持ちだけは忘れずにいたいと思っています」

小針幸也

大学のつながりを利用し地域に貢献したい

オフ期間を利用したBリーガーたちの社会貢献活動は、同郷、同い年など、様々な繋がりで少しずつ広がりを見せている。今回のイベントを主催した野崎さんは「大学」という共通項で、これを実現したかったと話す。

「以前から社会貢献活動については関心を持っていて、自分の周辺にいる人たちが幸せな人生を送る手助けができたらいいなと思っていました。加えて、神奈川大はOB同士の繋がりがすごく強いわけではないので、大学時代の仲間に久しぶりに会えるきっかけが作れて、それが社会にとって良いものになればいいなというのが、今回のイベントを実施した簡単な経緯です」

神奈川大は平塚市内にキャンパスがあり、バスケットボール部もキャンパス内の体育館で活動していた。しかし一昨年度をもって平塚キャンパスは閉鎖され、部の練習場も横浜・みなとみらいに移った。青春時代を過ごした平塚や神奈川にOBが集まり、お世話になった地域に恩返しをしながら昔話に花を咲かせる——。野崎さんは『Happiness Ball 』が今後そんな場所になっていけたらと願っている。