カール・アンソニー・タウンズ

敵地で20点ビハインドを巻き返す、クラブ史に残る勝利

ナゲッツとの『GAME7』でティンバーウルブズの若きエース、アンソニー・エドワーズは16得点に終わった。フィールドゴール24本中6本成功で成功率は25%しかなく、エースの仕事を全うできたとは言えないが、それでも彼は98-90で前年王者を撃破した試合後に、誇らしく胸を張った。

「厳しかった。今日は僕らしいリズムに乗ることができなくて、チームメートを信じるしかなかった。全く調子が上がらないのに常にトラップされていたから、試合を通じて正しいプレーを選択し続けた。それでみんなが点を取ってくれたんだ。バスケで勝つには点を取ればいいわけじゃない。むしろ、得点を取る選手じゃないほうが勝つためにできる仕事は多い。僕はそれができる選手だと思っている」

前半はジャマール・マレーが24得点を挙げ、ニコラ・ヨキッチは13得点15リバウンド5アシストとお馴染みのトリプル・ダブルへと突き進んでいた。点を取るだけでなくリバウンドでも29-18とウルブズを圧倒しており、王者がホームでの『GAME7』で着々と勝利に近付いているように見えた。後半開始1分の時点で38-58、プレーオフらしいロースコアの展開で20点ビハインドは致命傷になり得る。しかし、ウルブズの選手たちは慌てなかった。ナゲッツのシュートが当たり続けるはずはないと思っていたし、締めるべきところは分かっていた。

ハーフタイムに、ウルブズを率いるクリス・フィンチはディフェンスの共有事項を確認するための映像を選手たちに見せたという。エドワーズは「彼は『勝ち方は分かっている。これをやれば勝てるけど、そうしなければ負ける』という感じだった。そして僕らはそれを実行した」と説明する。

後半、ヨキッチの得点は21へと伸びたが、アシストは2つだけ。ヨキッチが生み出すイージーバスケットでナゲッツはリズムに乗る。そこを抑えれば、シュートの確率はそこまで上がらない。ナゲッツのフィールドゴール成功率は前半の45.5%から35.9%へ、3ポイントシュート成功率は33.3%から19.0%へ落ちた。ナゲッツのシュートがリングに弾かれることがウルブズの得点のようなもので、そのたびにエドワーズと仲間たちは自分たちのプレーが正しいことを確信し、その遂行力を高めていった。

正しいプレーをしていれば得点はついてくる。カール・アンソニー・タウンズのファウルトラブルはウルブズの災厄かと思えたが、実際はナズ・リードが疲れ果てたヨキッチとアーロン・ゴードンを蹂躙し始める合図となった。そして2点差の残り7分43秒、NBA屈指の不器用なビッグマンであるルディ・ゴベアが、NBAで最も器用なビッグマンであるヨキッチを相手にターンアラウンドジャンパーを沈める。

試合後の会見で、「ルディがターンアラウンドをヒットさせた瞬間、『ついに来た』と思ったよ。めちゃくちゃデカい」とエドワーズは笑い、タウンズは「神は我々とともにあった」と目を閉じた。

第4クォーターに8得点3リバウンド、そしていずれもヨキッチのシュートを叩き落す2ブロックを固めたリードは「努力、努力、努力だよ」と語る。「おかしな話だと思われるだろうけど、僕らは誰一人として不安を感じてなかった。ナゲッツが素晴らしいチームなのは分かっていて、ただあきらめずに努力し続けるだけだと考えていた」

タウンズと並ぶチームハイの23得点を挙げ、他にもありとあらゆる仕事をこなしたジェイデン・マクダニエルズは「残り3分ぐらいで勝利を確信した」と話す。「ただ、その前もその後も、粘り強く正しいプレーをすることだけに集中していた」

実際に勝敗が決したのは残り1分を切ってから、ファウルトラブルの呪縛が解けたタウンズがヨキッチの上からプットバックダンクを叩き込んだ瞬間だ。エースはエドワーズだが、このチームのフランチャイズプレーヤーはタウンズ以外にあり得ない。「僕はここで9年間、このチームのために特別なことをするとずっと話してきた。すべての失敗とそれに伴う失望が、この瞬間に繋がった」とタウンズは言う。

ウルブズにとってカンファレンスファイナル進出は2004年以来20年ぶり、クラブ史上2度目の快挙だ。それを成し遂げた夜、タウンズは長く背負ってきたプレッシャーからひととき解放され、仲間たちとただただ勝利を祝った。