「チームメートが信じて、パスを出してくれたおかげです」
5月19日、琉球ゴールデンキングスはチャンピオンシップ(CS)セミファイナルの第2戦で千葉ジェッツと対戦。初戦を62-95とショッキングな大敗を喫した中、見事な立て直しによって81-63と快勝し、21日に行われる第3戦へと持ち込んだ。
立ち上がりから琉球は初戦になかったインテンシティの高い守備に加え、リバウンドにも積極的に絡んでいった結果、千葉Jにタフショットを打たせ、トランジションも抑える。そして、CSクォーターファイナル第3戦で右足を負傷した中でも先発出場する、今村佳太の連続3ポイントシュートで16-7と先制パンチに成功する。
こうして主導権をつかんだ琉球だが、ヴィック・ローがベンチから出場直後に負傷交代し、今村も第2クォーター途中にロッカーへと下がったことで、3番ポジションのやりくりが苦しくなった。そして千葉Jのスコアラーであるクリストファー・スミスに、このクォーターだけで11得点を挙げられ、点差を詰められていく。だが、この悪い流れを小野寺祥太の3本連続3ポイントシュート成功で断ち切り、43-33とリードして前半を終えた。
後半に入っても琉球は、各選手が集中力を切らさずにタフなディフェンスを続け、ルーズボールや球際の争いを制することで、千葉Jに連続得点を許さない。こうして最後までディフェンスが崩れなかった琉球がリベンジを果たした。
琉球の勝利の立役者となったのは小野寺だった。エースストッパーとして信頼されている小野寺は、千葉Jの得点源である富樫勇樹への密着マークに加え、第2クォーターでの3本連続3ポイントシュート成功を含む12得点2アシストと攻守で大きなインパクトを与えた。小野寺は「出だしでディフェンスの土台を作れ、ターンオーバーも昨日から10個以上減らせることができました」と、昨日の敗因であったディフェンスの緩さ、不用意なターンオーバーの多さを改善できたことを勝因に挙げる。
そして、試合の流れを琉球に大きく引き寄せた自身の3ポイントシュートについては、故障を押してコートに立つ仲間の覚悟に応えたい気持ちがあったと振り返る。「今村選手がコンディションも悪い中、桶さん(桶谷大ヘッドコーチ)も『誰かがステップアップしないといけない』と言っていました。僕自身もそうしないといけないと感じていて、オフェンスにもう少し絡みたいとアグレッシブに打てた結果が得点に繋がったと思います。1本目でタフショットが入った時点で、『今日はシュートタッチが良いかもと』となり、次からも空いたら打とうとリズム良くできました。チームメートが信じてパスを出してくれたおかげです」
「誰にどういうシュートを打たせるのかが本当に大切になっていきます」
2019-20シーズンから琉球に在籍する小野寺は、加入当初からディフェンスに定評があったが、オフェンス面では存在感をあまり発揮できなかった。特に長距離砲を打つことは皆無で、琉球1年目の3ポイントシュートは1試合平均1.8本の試投数で成功率22.2%だった。しかし、そこからシュート力を確実に向上させていき、今シーズンは平均2.8本で成功率37.3%をマークし、チームにとって重要な武器の一つとなった。特にこのチャンピオンシップでは、ここまでの5試合で平均3.4本を放ち、成功率41.2%と見事な数字を残している。
もともと小野寺は盛岡南高校から練習生を経て、bjリーグ時代に地元の岩手ビッグブルズに入団した高卒プロ選手。そして当時に岩手で指揮を執っていたのが、現在琉球を率いる桶谷ヘッドコーチだ。小野寺をイチから鍛え上げた指揮官は、大舞台で大きな仕事をやってのけた愛弟子の活躍に「岩手から知っている自分としては、大人として成長してくれたなという気持ちでいっぱいです」と笑顔を見せる。
「祥太に関しては岩手で高校生の頃から知っています。当時は『プロになれるかな?大丈夫かな?』という選手でした。まずは練習生でしたが、その時に外国人選手が『コーチ、絶対にあの選手にユニフォームをあげたほうがいいよ。常にハッスルを続けるし、オフェンスリバウンドもずっとボールを触りにくる』と言っていました。そこから彼は契約を勝ち取って先発に定着しました。当時、3ポイントは皆無に近く、ディフェンスとドライブの選手だったのが、今は3&Dの代名詞になっています。3本連続成功を見たことはなかったですが、この大一番で決めてくる。キングスの中でこういう大舞台を経験してきたことが彼の自信に繋がっていると思います」
そして小野寺本人は、3ポイントシュートの成績向上はチームメートのおかげと強調する。「本当に素晴らしいパサー、リバウンダーがいる中で打てています。ノーマークで打つことができていて、シュートが外れてもリバウンダーがいて、周りとの信頼関係ができているからだと思います」
着実に3ポイントシュートの精度を高めてきた小野寺だが、4月27日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの西地区首位決戦では、シュートを打つように仕向けられ3ポイントシュートを8本中1本成功と決められなかった。だが、こういう辛い状況を経験しても「名古屋D戦でノンシューター扱いされて、そこは本当に悔しかったです。ただ、出ている以上、消極的になったら意味がない。チームがパスを回して来た良いシュートは打っていかないといけないです」と言うように、積極性を失わなかったことが大一番での爆発をもたらした。
また、普段は控えめな性格の小野寺だが、3本目の長距離砲を決めた後には両手を挙げて観客にアピールをした。そこには次の思いがある。「僕が知っている限り、キングスファンは僕らのガッツポーズだったりとかに応えてくれます。そこで一体感を出せればもっと雰囲気が良くなると、恥ずかしいですけどやりました」
火曜日には3年連続のファイナル進出をかけた運命の一戦が行われる。小野寺は「誰にどういうシュートを打たせるのかが本当に大切になってきます。スタッフ陣がスカウティングで準備してくれたものを僕らが体現できれば自ずと結果はついてきます」と意気込みを語る。富樫への密着マーク、ここ一番での3ポイントシュートと、第3戦でも引き続き小野寺のパフォーマンスは琉球の運命を左右する大きな鍵となってくる。
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