リバウンド争いでシアカムと接触、腹部の肉離れに悶絶
今シーズンのニックスは、数々のケガに見舞われながらもそれを乗り越え、躍進のシーズンを送ってきた。レギュラーシーズン中からジュリアス・ランドルが肩の手術で長期戦線離脱となり、ボーヤン・ボグダノビッチとミッチェル・ロビンソンもプレーオフに入ってシーズン終了のケガを負った。カンファレンスセミファイナルのペイサーズとの第6戦では、OG・アヌノビーがハムストリングを痛めてプレーできず、その試合中にニックスで最も頑丈な男、ジョシュ・ハートがついに倒れた。
ハートは第1クォーター途中、リバウンドを争った際にパスカル・シアカムと接触したことで腹部の肉離れを起こし、痛みでコートにうずくまった。テーピングをしてコートに戻り、ベンチに戻った際にはトレーナーの治療を受けてプレーを続けていたが、第4クォーターにはついに動けなくなり、プレーを断念せざるを得なかった。痛みに顔をしかめた彼が、腹部をさすりながらロッカールームに戻った時点でスコアは79-96。もはやニックスに勝機はなかった。
彼はプレーオフの12試合のうち4試合で一度も交代することなくフル出場している。泥臭いハードワークを48分間続けて戦い抜く。ハートはニックスのそのスタイルを象徴する存在だけに、チームメートはその状態を心配しているが、それと同時に彼の『鉄人』ぶりへの信頼も見える。
マイルズ・マクブライドは「彼ほどの選手が『プレーできない』と判断するんだから、状態は良くないんだろう。ウチのリーダーの一人であり、調子も良かった彼がプレー不在となると厳しいのは間違いない」と言う。アイザイア・ハーテンシュタインは「彼はプレーするためなら何でもする男だ。足が折れていなければプレーすると思うよ」と言い、ジェイレン・ブランソンはこう語った。「アクシデントが起きたのは明らかだったけど、彼は第2クォーターに自分からプレーすると言って戻って来た。そして限界まで戦った。その状況は分かっているから、僕らはただ支えるだけだ」
セブンティシクサーズとのシリーズ中、ハートは足首を捻挫したがプレーを続けてフル出場を果たした。この時、「ハートを交代させようとは思わなかったか」と問われた指揮官トム・シボドーは「思ったよ。一瞬だけね」と答えている。シボドーは主力を託すに足ると見極めた選手には平気で40分以上のプレータイムを与えるが、ハートほど『酷使』するケースは過去にない。それは指揮官からすれば『信頼』と同義だ。
そのシボドーは、ハートの状態を心配する記者たちにこう言った。「少しすれば分かる」
ここまですべてホームチームが勝利しての3勝3敗で『GAME7』を迎える。このシリーズはすべての試合が白熱し、一進一退でここまで来たが、最後の舞台はニックスの本拠地マディソン・スクエア・ガーデンだ。ドンテ・ディビンチェンゾは「シーズンが終わった時に思い出してほしい。これが第2シードを勝ち取るために戦った理由なんだ」と言い、「ガーデンは揺れるだろうね」と続けた。
そしてブランソンはこう語った。「どちらのチームも死に物狂いで戦うだろう。まあ、彼は戻って来る。『GAME7』なんだ」