篠山竜青

構成=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

「前の人たちの頑張り、代表を強くしたい思い」

篠山竜青は、日本代表のメンバーの中でも特に『Bリーグ組』への意識が強い。カタール戦に勝ってワールドカップ出場権を獲得した直後のテレビ向けインタビューでも迷うことなく「もう一回、Bリーグを盛り上げたい」と熱い気持ちを語っている。

この長いワールドカップ予選を戦う上でカギとなったのが、日本国籍を取得したニック・ファジーカスの、そして八村塁や渡邊雄太の『アメリカ組』の参戦であることは間違いない。彼らが不在の時には4連敗だったチームが、それから8連勝でアジアを勝ち抜いた。

それを理解していながらなお、篠山は自分たち『Bリーグ組』の意義を語る。「僕は20代後半になって代表に選出される、他の選手とは違う歴史をたどっています。ずっと学生の頃から代表を見てきて、なかなか結果が出ずに批判されてきたんですけど、実際に僕が代表に入って結果が出ない時、外からの声はこんなにすごいのかと感じました。その中で10年以上支えてきた竹内世代であったり、それよりも前の人たちの頑張り、代表を強くしたいという思いがあったからこそ、今こうやって一つきっかけをつかめたのだと思います」

「もちろん、ニックの帰化は大きいですし、渡邊や八村が出て来たことはすごく大きいんですけど、僕個人としてはそれだけじゃないところを見てほしいというか、そういうところを多くの人に感じてほしいと今思っています」

篠山竜青

「個人としてもチームとしても自信がついた」

日本代表に参加して国際大会を戦うことは、選手として大きな経験となるが、リスクも決して小さくはない。夏のオフを代表に捧げることで休みはなくなり、選手として本来やっておきたい身体のメンテナンスはどうしても後回しになる。今の強化スタイルになってからはシーズン中にも代表合宿が頻繁に行われ、疲労が蓄積するのはもちろん、自分のチームでの地位が揺らぐリスクもある。どの選手もキャリアと生活をリスクにさらして代表活動を行っている。

そんな戦いの中で「個人としてもチームとしても自信がついたと思います」と篠山は言う。「負け癖というのは実際あったと思います。それはニック、八村や渡邊の加入があって勝つことを覚えて、自分たちでもやれると思えるようになって、こうやって『Bリーグ組』だけでイランとカタールに勝ってワールドカップの出場権を得られました。それは本当に、技術的なことはもちろんですけど、精神的な面、Bリーグができたことによるプロ意識とか、そういうメンタルの成長があったんだと思います」

代表でなかなかチャンスを得られなかった篠山は、リオ五輪の世界最終予選でも最後の最後で落選。そこから動き出した新チームに定着し、ここに至った。その成功の裏にどれだけの自己犠牲や葛藤があったのかは、篠山本人にしか分からない。