「緊張とは特になかったです。今日のほうが逆に燃えていました」
Wリーグプレーオフファイナルは、15日に行われた第3戦で富士通レッドウェーブがデンソーアイリスを89-79で撃破し、16年ぶり2度目のリーグ制覇を果たした。
第3戦、富士通の大きな勝因となったのはベンチメンバーの活躍だった。初戦を64-57で制して迎えた第2戦、富士通は62-73で敗れたが、大きな反省材料としてベンチメンバーの得点が0に終わるなど、攻め手が偏っていた部分があった。しかし、第3戦では赤木里帆、中村優花の2人で21得点をマーク。ベンチのステップアップによって、試合の流れを引き寄せたことが勝敗の分かれ目となった。
特に第3戦で大きなインパクトを与えたのがガードの赤木だった。第1戦、第2戦で合計2得点だった赤木は、第3戦はドライブからのプルアップを確率良く沈め、16分54秒の出場で12得点を記録。特に第2クォーターで7得点を挙げ、リードを広げる立役者となった。
ゲームチェンジャーとして見事な活躍を見せた赤木は、「最高です」と優勝の喜びを語り、試合前から自ら積極的に仕掛けていくつもりだったと明かす。「第1戦で(町田)瑠唯さんが結構、ジャンパーを打っていてチャンスになるのはわかっていました。相手がディフェンスで密着してくるので、しっかりはがして開いたスペースを見つけシュートを打とうと思っていました」
今回のプレーオフ、富士通はセミファイナル、ファイナルともに第2戦で敗れているが、ともにベンチメンバーがブレーキになっていた。それだけにファイナル第3戦でも、ベンチがしっかり繋ぎの役割を果たせるかは、富士通にとって懸念事項と見られていた。
だが、赤木はこのプレッシャーのかかる状況でも、動揺は全くなかったと話す。「昨日の試合、ベンチメンバーの得点がゼロで自分たちが流れを渡してしまったという反省はありました。でも、試合に出る時は毎回、自信を持ってやるべきことをやるだけで、緊張とは特になかったです。逆に今日のほうが燃えていました。昨日の反省を踏まえ、今日は絶対にやってやろうと、良いメンタルで臨めていました」
「やるべきことをやれば、結果は自ずとついてきます」
ちなみに赤木は、セミファイナルの第3戦でも8得点5リバウンド4アシスト2スティールと攻守に渡って活躍。崖っぷちでプレーの質を上げられる強靭なメンタルの持ち主だが、オフコートでは全く違う様子だ。「(表彰式で隣の町田にメダルをかける時)緊張でメダルを取る時にガタっとなってしまって、瑠唯さんに『今、音鳴ったでしょ』と言われてしまいました(笑)。また、最初はメダルを逆向きにかけてしまいました」。コート上での物おじしないプレーとは真逆だった。
これで赤木は、高校(桜花学園)、大学(東京医療保健大)に続きトップリーグでも頂点に立った。だが、名実ともに日本最強の称号であるWリーグ王者は、格別な思いとなった。そこには、次の目標があるからだ。
「今まで高校、大学と優勝を経験させてもらいましたが、トップリーグで優勝することにはすごく意味があり、今までにないグッとくるものがありました。もちろん優勝する瞬間は高校、大学もうれしいです。でも自分には一流の選手になる夢があります。だからこそ、簡単じゃないとわかっていたトップステージで優勝できたのはうれしいです」
また、故障もあって消化不良に終わった昨シーズンからのこれ以上ないカムバックという意味でも、赤木にとって今回の優勝は特別なものとなった。
「去年は腰の怪我でシーズン後半に出られない悔しい経験をしました。ただ、試合に出られない状況でも自分にできるベストを尽くしてきました。完璧ではないですけど、その積み重ねの成果を今日は出せたと思います。まだまだ、もっと突き詰めていかないといけないですが、そこは良かったと思います」
そして優勝はうれしいが、「現状に満足はしていないです」とさらなる進化に貪欲だ。「やるべきことをやれば、結果は自ずとついてきます」と大きな手応えを得た赤木が、ここからどんな成長を見せてくれるのか、来シーズンが楽しみだ。