ドラフト前のワークアウトが運命の分かれ道か

NCAAバスケットボール男子は現地8日、コネチカット大の連覇で今シーズンが終了した。これからは、誰がNBAドラフトにエントリーするのか、またトランスファーポータルへの加入(転校のための申請手続き)を行うのか、選手の去就面が話題の中心となる。

最も大きな注目を集めているのがレブロン・ジェームズの息子ブロニーの決断だ。昨秋に南カリフォルニア大(USC)に入学したブロニーは、オフシーズンのトレーニング中に突然倒れて心肺停止に。幸いにも命に別状はなく、奇跡的な回復を見せてシーズン途中に復帰したが、様々な面で十分な準備ができないままのシーズンインとなった影響もあって、1年目の成績は25試合出場で平均19.6分出場、4.8得点、2.8リバウンド、2.1アシストに留まった。チームも過去3年連続出場していたNCAAトーナメントを逃す期待外れの結果に終わった。

そして先週、ブロニーは自身のSNSNBAドラフトへのアーリーエントリー、NCAAトランファーポータルの両方の手続きを行うことを明らかにした。この表明が意味することは、これから行われるドラフト前のワークアウトでNBAチーム関係者から本人が望むような評価が得られなかった場合、エントリーを撤回してNCAAに戻る。そして、転校先を探すということだ。

元々、ブロニーは引退間近となっているレブロンと一刻も早く一緒にプレーするため、大学1年生のシーズンを終えたらドラフトエントリーすると予想されていた。しかし、冒頭で紹介した心肺停止の一件もあって思うようなパフォーマンスを見せられなかったこともあり、もう1年大学でプレーするのではと予想する声も少なくなかった。例えば『ESPN』は、2月に発表したドラフト予想においてブロニーを2025年ドラフト2巡全体39位としていた。

ディフェンス力はNBAレベル、懸念はオフェンス

ちなみに現状、ブロニーがNBA関係者からどのように見られているのか。『The Athletic』のシャムス・カラニアは、次のように語る。「NBAチームの関係者と話していると、彼の守備はNBAレベルという共通認識がある。また、バスケットボールIQは、素晴らしい遺伝子を受け継いでいる。シューティング、ボールハンドリングなど、オフェンス面に関してはドラフト前にスカウトなど担当者が注目している点だと思う」

レブロンの息子という大きな影響力を抜かした場合、ディフェンスが優れていたとしてもサイズの希少性のないガードかつ、NCAAレベルにおいて得点面で数字を残していない選手が、ドラフトで指名されるのは稀なケースとなる。ワークアウトでブロニーは周囲の懸念材料を払拭できるのか注目だ。

また、NCAAでの転校に関しては十分に予想できた。今シーズンまでUSCの指揮を執っていたアンディ・アンフィールドがサザンメゾジスト大に移り、後任としてアーカンソー大の指揮官で、ウォリアーズ、キングスのヘッドコーチ経験もあるエリック・マッセルマンが就任したからだ。NCAAの世界において、選手はコーチとの相性や戦術を学校選びの大きな決断理由とし、ヘッドコーチの変更に伴って選手が転校するのは珍しくない。

もし、ブロニーがNCAAに戻った場合、高校時代にUSCと並んで最終候補に残っていたオハイオ州立大、オレゴン大、もしくはアンフィールドがいるサザンメゾンジスト大らが有力な転校先と見られている。他にもレブロンの高校時代のチームメートだったドリュ・ジョイス三世が新ヘッドコーチとなるデュケイン大も候補に入ってくるかもしれない。ここからの数カ月、ブロニーの動向は今まで以上の注目トピックとなる。