中嶋基喜

「子供と保護者の意識を変えるワード「もう小学生だよ」

U12女子の強豪チーム壱岐リトルソニックス(福岡)は中嶋基喜コーチの指導の下、3月28日に開幕する『マクドナルド全国ミニバスケットボール大会』に出場する。チームは「世界一」を目標に掲げて活動し、昨年度は1年間無敗、今年度もここまで無敗で大会に臨む。後編では中嶋コーチに、優勝を決めない交歓大会となった全国ミニへの思いや、初の取り組みとなったクラウドファンディングについて聞いた。

――相手が小学生なので中高生ほど伝わらないことも少なくないと思います。

子供目線で指導をするから、相手も子供になってしまいます。子供は『私、まだ子供だから』と言います。先生や保護者の口癖って『まだ小学生』ですよね。僕は『もう小学生だよ』と問いかけます。

どう意識を変えるか、だと思っています。責任感ももちろん持ってもらわないといけません。バスケットはチームスポーツなので、練習環境からチームとして動いていると実感させます。今のミニバスの環境は個人スポーツなんです。保護者は我が子がアイドル。試合で活躍しないと面白くないし、出ていないと練習にも来ないし配車もしません。昔の素敵なところは、試合に出ていない子たちの親が配車を担当してくれるところです。

山崎修先生が指導された二島中学校や稲垣愛コーチが指導する四日市メリノール学院中学校と、片峯聡太コーチが指導する福岡大学附属大濠高校で見させていただいて、素敵だなと思うのは、出ていなくてもチームのファンなんです。僕もチーム作りでは我が子ではなく、どれだけ壱岐リトルソニックスのファンになっていただけるか、を一番大事にしています。

――3月28日から『マクドナルド全国ミニバスケットボール大会』が開幕します。1998年から4チームがブロック優勝、2018年から優勝チームを決めない方式になりました。

現行の組み合わせでは、僕たちが日本一のチームだという証明はできません。いくら点差が開いて、『見た目ではあなたたちが1番強かったよ』と言われても、歯がゆさが残ります。勝つことだけを目指してやっている訳ではないのですが、勝つことも必要です。野球の大谷翔平さんもそうですが、スポーツ選手だったら、世界一のチームで世界一の選手になりたいというモチベーションがあります。U12世代からメンタルやモチベーションを作る上で日本一、全国制覇を目指すかどうかは大事だと思います。

今年の九州大会は福岡県1位に出場権はありませんでした。2位と3位が出場して、その結果、優勝したのは鹿児島1位でした。鹿児島のチームは素晴らしいチームです。だからこそなぜ本当の1位を決めないのかと疑問に思います。全国ミニと同様に九州大会も交歓大会方式にしないのかも疑問です。やるなら何事も1位や特別な選手になるという目標を持って取り組んだ方が、その周囲にもより良い影響を与えられると思います。1位を決めないということは日本バスケ界の弱さに繋がるとも思っています。

大会で日本一は決められなくなったので、世界一のチームを目指すようにしました。世界でどの国が強いかを考えると、アメリカになります。今、アメリカの選手に勝てるかと考えると12歳でも平均身長で10cm以上違う。その子たちに勝つために、何をしないといけないのかを考えています。スクリーンアウトや、ディフェンスとオフェンスの切り替えが大事になります。コートだけでなく私生活がバスケットに繋がっていると伝えて指導しています。

中嶋基喜

世界一を目指し『1年間無敗』がモチベーションに

――前回大会は3戦全勝で終えました。

昨年のチームは1年間無敗で終えました。今年もまだ負けていませんし、公式には3年ぐらいです。だから全国大会3連勝より、1年間負けないことがモチベーションになっています。世界一を掲げて取り組む中で、目的に対してどれだけ徹底できるかが、他チームとの違いだと感じています。徹底することを習慣化し、それが結果を生むという方程式みたいなことをチームで共有しています。一方で、全国ミニでは一緒に出場する強豪チームを注意深く見て学ばせてもらっています。控え室にいる空気、コートに入る姿勢、練習のアップが違います。普段の体育館での雰囲気が伝わってきますね。

――今回は参加費用を募るクラウドファンディングに乗り出しました。

クラウンドファンディングの存在は今まで知りませんでした。子供たちのためになるなら、と始めました。いろんなことにチャレンジする中で、目指すのは強いチームより応援されるチームです。どれぐらいの方が壱岐リトルソニックスを見てくれて、応援してくれるのか知りたいので、やってみようかと。いろんな温かいコメントをいただきました。

大会では3戦全勝が最低限の目標ですが、一番大事なのは日本のバスケットを盛り上げ、日本を明るくすることです。頑張っている子供を見ると、大人も元気や勇気をもらえます。代々木第2体育館という素敵な舞台で子供たちが一つのボールを一生懸命追いかけて、シュートを入れたり、守ったりという姿を全国の皆さんにどれだけ見せられるですね。

チームとしてこだわっているのが連動性です。コート上の5人、出場する10人でやります。ベンチ外の子たちも応援席で応援してくれる。ハリーバックしたり、ヘルプダウンをしたり、プレッシャーをかけたり。チームのために一つになって動き、頑張るチームは素敵だな、応援したいなと思ってもらえたらうれしいですね。

――6年生と過ごせる時間もあとわずかとなりました。

1年365日のうち、364日は苦しいこともあれば、キツイ練習もあります。乗り越えて最後に代々木第二体育館で迎える365日目に、勝っても負けても本物の笑顔で終わろうねと伝えています。今もまだまだ成長段階で、大会に向けて、ファンダメンタルも厳しいことも取り組んでいます。6年生に限っては本当に残り少ないので、しっかりと子供たちと向き合いたいですね。